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先日、NHKで「ももクロ和楽器レボリューションZ」なる番組が放映されており、「和楽器」の要素を加えることで音楽に革命(レボリューション)を巻き起こすことを目指すとのことで、当ブログ「新感覚!プロジェクトマネジメント」のコンセプトとも重なるなあ、なんて考えながら見ていました。決してモノノフではありませんが、ももクロも好きなほうなので。。。(※1)
ということで、今回のタイトルは「PMOレボリューション」と題して、前回のレンガ職人の話の続きとなりますが、私の考えるPMOの課題と対策について考察したいと思います。
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PMOの課題と対策に入る前に、まずPMOの組織上の位置づけによる分類について確認しておきましょう。出典は、PMI日本支部から発行されている『戦略的PMO-新しいプロジェクトマネジメント経営-』です。(※2)
(1)全社PMO
経営直下に設置され、全社をスコープとしたPMOを全社PMOと呼びます。
全社PMOは、(中略)企業全体での最適化を目指すPMOです。(2)部門PMO
特定の部門内に設置されたPMOを部門PMOと呼びます。
部門PMOのスコープはその名のとおり部門レベルとなります。(中略)全社PMOの縮小版のような位置づけであり、(後略)(3)プログラム/プロジェクト内PO
特定のプログラムやプロジェクト内に設置された組織をプログラム/プロジェクト内POと呼びます。特に、企業にとっての重要施策を行うプロジェクトや大規模プログラム/プロジェクトに設置されるケースが多く、これらの推進を主目的として、組成される組織です。
全社PMOと部門PMOは、複数プロジェクトやプロジェクトを実行する組織そのものをスコープとしているのに対し、プログラム/プロジェクト内POは特定の目的を持ったプログラムやプロジェクトをスコープにしているという違いがあります。
アイ・ティ・イノベーションに入社してから、私はプログラム/プロジェクト内POの立場で、個別プロジェクトの成功のためにプロジェクトマネージャの方をご支援させていただくことが多かったと思います。ただ、個別プロジェクトのご支援をさせていただきながらも、できる限り、ご支援させていただく組織そのもののプロジェクト成功確率の向上を視野に入れてきた所存です。
したがって、ご支援をいったん終了した後に、しばらくしてから再度お客様をご訪問させていただいた際などに、私どものご提供させていただいたプロジェクトマネジメント成果物の一部でも組織標準に取り込まれていたり、プロジェクトの現場で使い続けていることを知った時にはたいへんうれしく感じます。
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前掲の『戦略的PMO』では、特定のプログラムやプロジェクト内に設置された組織はPMOとは呼ばずにPO(プロジェクト・オフィス、またはプログラム・オフィス)と呼ぶことで明確に区別しています。今回のブログでは、全社PMOや部門PMOと呼ばれる、主に組織内PMOに焦点をあてて、その課題と対策について考察します。
個別プロジェクトのご支援の機会が多かったのですが、お客様の組織そのもののマネジメント力向上も視野にいれて活動してきた経験を踏まえて、私の感じてきたPMOの課題、原因と対策を図1に示します。
少し精神論っぽいところもあるかもしれませんが、プロジェクトの現場は組織の特性やそのときどきの状況によって大きく異なり、具体的な課題や対策は千差万別であることから、ここでは抽象的な表現としています。
図1の内容を少しだけ補足します。
1.プロジェクト現場が言うことを聞いてくれない
多くの組織内PMOの方は、少なからずこのような悩みを抱えていることと思います。前回のブログでご紹介した通り、現場のプロジェクトマネージャは個別プロジェクトの成功に責任を持ち、組織内PMOは個々のプロジェクトの成功に閉じたものでなく、より広範なもの、別な言い方をすると、客観的視点を持ち合わせる必要があることから、自ずと関心事が異なるためにコンフリクトを生じる可能性が高いのです。
プロジェクト現場の人たちは、個別プロジェクトの成功のためにベストを尽くしているはずであり、それでもうまくいかないと悩んでいるのに、一般論やあるべき論を振りかざすPMOに耳を貸すはずありません。したがって、PMOとしては、まずはプロジェクト現場の事情をよく把握したうえで、その上で客観的立場で改善すべき点があるとしたら、そのことを押し付けるのではなく、プロジェクト現場の人たちが自ら気づくように仕向けることが必要だと思います。PMOはあくまでも脇役であり、主役であるプロジェクト現場の人たちが、やるべきことやその優先順位をしっかりと判断できるように情報提供することが大切です。
2.プロジェクトの問題をタイムリーに検知できず、対応が後手に回る
プロジェクトにおける問題が顕在化してから、PMOがその問題へのアクションをプロジェクト現場にヒアリングするなど、常に後手後手になってしまうという悩みです。特別な状況を除き、PMOはプロジェクト現場に常駐しているということはありません。ということは、どう考えてもプロジェクト現場にいる人たちと比べて、プロジェクトの問題を検知するための情報が不足するのは避けられないことです。そんな状況の中で、プロジェクト現場の人たちが気づく前に、プロジェクトの問題を早期発見することなど、よっぽど先見の明のあるPMOでないと不可能です。
PMOはプロジェクトマネージャとは役割が異なるということをしっかりと認識して、目先のことに気を取られずに、常にプロジェクトの先行きを見通せるように、目線を高くする必要があります。
3.事務的な作業に追われ、改善に寄与するような活動ができない
前回も触れたように、PMOは「プロジェクトにおける何でも屋さん」という役割を担うことも多く、一見雑用的な作業ばかりを行っているように受け止めてしまうこともあります。雑用ばかりやっていて、プロジェクトや組織の改善なんて高尚なことには無縁だなんて考えてしまう人もたまに見かけます。
しかし、一見雑用に見えるような作業でも、プロジェクトを円滑に進めるという目的のために必要な作業も多いはずです。その事務的な作業を行うことで、プロジェクトメンバーの作業効率やモチベーションに少しでも良い影響を与える可能性があるなら、胸を張って事務的な作業をしっかりと行い、目的達成のために少しでも効率化を図ることで、プロジェクトや組織の改善に確実に寄与できるはずです。(※3)
4.優秀な人材は現場にとられるなど、PMOのリソースは常に不足
どのプロジェクトでも、どの組織でも、優秀な人材がいないという課題を聞かないことはありません。そりゃそうですよね。資本主義社会なので基本的に原価を低く抑えることで利益の最大化を図るという構造の中では、優秀な人材が十分に確保される状況などあり得ないのです。
つまり、コスト、スケジュール、人的リソースなどの制約条件は厳然たる事実として受け入れたうえで、その制約の中で最大限のパフォーマンスを発揮するためにどうすべきかを考えるのが、プロジェクトマネージャやPMOの仕事であり、そこを避けていてはいつまでも進歩は見込めません。
5.チェックリストや手順がどんどん増えて、形骸化が進んでいく
これも良くあることですが、継続的改善というと、チェックリスト追加や手順追加を安易に考えることが多いと思います。先ほど制約条件の中で最大限のパフォーマンスを発揮するにはどうしたらいいかを考えるのがプロジェクトマネージャやPMOの仕事だとしましたが、チェックリスト追加や手順追加は、制約条件の中にさらにタスクを追加することになるので、逆方向を向いているのです。
以前のブログで、デスマーチプロジェクトにおけるトリアージやチェックリスト地獄からの脱出についてとりあげましたが、プロジェクトマネージャやPMOはスコープマネジメントの一環として、タスク増加の可能性に対して敏感に反応する必要があるのです。できればこれもやった方が良いというタスクを追加するのではなく、できるかぎりやらずに済むタスクをそぎ落とすというのが、プロジェクトマネジメントの勘所だと私は考えているのです!(※4)
「さあ、これらPMOの課題を乗り越えて、
PMOレボリューションを引き起こそう!」
それでは次回もお楽しみに! < 前回 | 目次 | 次回 >
工藤武久
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※1 「ももクロ」「モノノフ(ももクロファン)」「ももクロ和楽器レボリューションZ」については、以下参照。
・「ももいろクローバーZ」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』
2016年10月29日 (土) 10:08 UTC https://ja.wikipedia.org/wiki/ももいろクローバーZ
・NHKオンライン「ももクロ和楽器レボリューションZ」http://www4.nhk.or.jp/P4191/3/
※2 PMI日本支部編(2009)『戦略的PMO-新しいプロジェクトマネジメント経営-』オーム社
※3 たとえば、当ブログの以下の回なども参考に。
・【第66回】プロジェクトを動かす「攻めの議事録」
※4 当ブログの以下の回参照。
・【第39回】トリアージでデスマーチを脱却せよ!
・【第61回】レビューチェックリスト地獄からの脱出大作戦!