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【第79回】ガラパゴス・マネジメント


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ここ数回のブログでは、プロジェクトの標準化について考察しています。標準化の議論の中で避けて通れないのは「ガラパゴス化」というキーワードです。

あまり聞きなれない言葉かもしれませんが、今回は「ガラパゴス・マネジメント」について考察します。

 

【 「ガラパゴス化」とは? 】

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「ガラパゴス化」というキーワードをご存じでしょうか?

「ガラパゴス化」した携帯電話、すなわち「ガラパゴス携帯」、略して「ガラケー」というのは誰しもご存じだと思います。

ウィキペディアには、「ガラパゴス化」について、次のように記載されています。(※1)

ガラパゴス化(ガラパゴスか、Galapagosization)とは日本で生まれたビジネス用語のひとつで、孤立した環境(日本市場)で「最適化」が著しく進行すると、エリア外との互換性を失い孤立して取り残されるだけでなく、外部(外国)から適応性(汎用性)と生存能力(低価格)の高い種(製品・技術)が導入されると最終的に淘汰される危険に陥るという、進化論におけるガラパゴス諸島の生態系になぞらえた警句である。ガラパゴス現象(Galápagos Syndrome)とも言う。

プロジェクトマネジメントの世界でいえば、図1で示すようにグローバル標準や業界標準などから取り残された組織標準が「ガラパゴス・マネジメント」、略して「ガラマネ」ということになります。

長い間プロジェクトマネジメントのご支援をしている中で、私が当たり前に使ってきたプロジェクトマネジメントの用語について、少し違ったとらえ方をしている人たちと話をしていると、「これが『ガラパゴス化』か!」と妙に納得することがあります。

当ブログの 【第77回】テーラリングという言葉に隠れた『不都合な真実』 でご紹介したテーラリングというものがあるので、必ずしも業界標準やグローバル標準の通りにプロジェクトマネジメントを行うのが正解というわけではなく、少しぐらいの方言についてはプロジェクトがそれでうまく回っていれば特に問題無いと考えます。

そもそも業界標準やグローバル標準は、概念が抽象的に示されているだけのものもあり、それを具体化、実用化する際に自組織内で統一された定義にさえなっていれば構わないのです。もし、私がプロジェクトの現場でそういった方言に出会った場合には、スポーツなど身の回りのわかりやすいメタファーを用いて、その意味しているものをアジャストしながら方言によるコミュニケーション齟齬の可能性を排除していくことになります。

 

【 「ガラパゴス・マネジメント」は是か非か? 】

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グローバル化の時代において「ガラパゴス・マネジメント」はできれば解消しておきたいものという印象を受けると思います。しかし、孤立した環境において「最適化」が著しく進展していくことでエリア外との互換性を失うということは、孤立した環境とはいえ、「継続的改善」がうまく回っていることを示しているはずです。

つまり、CMMIでいえば、レベル5=「最適化している状態 (プロセスを改善する状態)、継続的に自らのプロセスを最適化し改善しているレベル」を実現できている場合でも「ガラパゴス化」する可能性はあるということであり、自組織内におけるプロジェクトマネジメントに着目する限り、うまく回っている状態であるととらえることができるのではないでしょうか?(※2)

また、グローバル標準や業界標準が一般的であったり実用性に欠けるものだとすると、それをテーラリングして具体的実用的な組織標準を構築した「ガラパゴス・マネジメント」は、むしろあるべき姿を示しているというとらえ方もできるのです。

このことは、今でも「ガラパゴス携帯」(ガラケー)を使っている人がいることを思えば不思議では無いと思います。利用者にとって必要な機能が最適な形で提供されてさえいれば、余計な機能が満載のスマートフォンよりも使い勝手の良いものであることは間違いありません。「ガラパゴス発のイノベーション」の可能性などを考えても、「ガラパゴス化」は決して悪いものでは無いと、私は考えています。

本当の問題は、孤立した環境の中で独自に「最適化」が進んだためにエリア外との互換性が無くなったものではなく、孤立した環境の中で「進化せず」にエリア外の発展から取り残されてしまったケースです。「進化せず」に取り残されてしまったということは、継続的改善がされていないということであり、プロジェクトの失敗をただ繰り返している組織です。

「進化せず」に取り残されてしまったものは、本来の「ガラパゴス化」の定義には含まれないのかもしれませんが、システム開発のプロジェクトを担う組織への警句としては、そのような組織こそ、できれば解消したい「ガラパゴス・マネジメント」と名付けるのが相応しいように思います。

 

【 「ガラパゴス・マネジメント」の3つのパターン 】

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どんな原因であってもグローバル標準や業界標準から取り残されてしまった組織標準を、仮に「ガラパゴス・マネジメント」と定義すると、業界標準から取り残された原因によって大きく3つのパターンに分けることができると考えます。

<パターン1>
業界標準を取り込んだのち独自の発展をとげたパターン

たとえば、PMBOKガイド第4版をもとに組織標準を作り上げ、その後、個別プロジェクトへの適用結果をもとに組織標準を継続的改善していったものの、PMBOKガイド第5版がリリースされてもその内容をまだ取り込めていない状態の組織です。

PMBOKガイド第5版の日本語版は2013年に発行されているので、現時点でこのような組織は結構多いのではないでしょうか?PMBOKガイド第5版の改訂の目玉はステークフォルダーマネジメントの知識エリアが独立したことです。ステークフォルダーマネジメントの重要性は確かに高まっていますが、それを具体的、実用的な組織標準としてテーラリングするのは、難しいことかもしれません。その辺の事情も「ガラパゴス・マネジメント」を生む要因になっているとも考えられます。

<パターン2>
業界標準を取り込んだものの継続的改善を行っていないパターン

たとえば、PMBOKガイド第4版をもとに組織標準を作ったものの、その後、組織標準の継続的改善が進まずに停滞してしまった組織です。

継続的改善が進まない原因としては、最初に作った組織標準が個別プロジェクトで効果的に活用できるほど具体化されず、実用的なものになっていないことなどが考えられます。

<パターン3>
プロジェクトごと、または属人的なマネジメントを行っているパターン

組織標準を持たない、CMMIでいうレベル2またはレベル1の組織です。

プロジェクトごと、または、個人によっては、業界標準を取り込んだマネジメントを実施している可能性もあるかもしれませんが、組織的に標準化の取り組みを行っていない場合には、断片的にしか業界標準に追随できていないはずなので、これも「ガラパゴス・マネジメント」だと考えられます。

前章で本当の問題としたのは、パターン2とパターン3の「ガラパゴス・マネジメント」です。パターン1の場合は、独自の発展をとげているために、確かにグローバル標準の改訂から一時的に取り残されてはいますが、継続的改善のプロセスは機能しています。もしグローバル標準の改訂内容がその組織のマネジメント改善に結びつくような内容であれば、自ずと継続的改善のネタとして検討されることになることが想定されるため、あまりネガティブに考えることはありません。

グローバル化の時代に後れをとらないためには、自組織が「ガラパゴス化」していないかをチェックするべきです。チェックの結果、もし自組織が「ガラパゴス・マネジメント」であると自覚した場合には、どのパターンなのかをしっかりと確認したうえで、効果的な対応策を実施していく必要があります。

「グローバル標準から取り残されて『ガラパゴス化』していないかチェックしよう!」

それでは次回もお楽しみに!          < 前回 | 目次 | 次回 >

工藤武久

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※1 「ガラパゴス化」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』
2016年6月24日 (金) 01:49 UTC https://ja.wikipedia.org/wiki/ガラパゴス化

※2 CMMI「能力成熟度モデル統合」については、当ブログの以下の回も参照してください。
【第9回】マルクス社会発展段階とCMMI成熟度レベル
【第10回】落合「オレ流野球」はCMMIレベル5か?

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工藤 武久
■株式会社アイ・ティ・イノベーション  ■コンサルティング本部 - 東日本担当 ■学歴:早稲田大学 - 第一文学部卒業 ■メーカー系のシステム子会社にて、主に官公庁向け大規模システム開発プロジェクトに、SE、PMとして携わる。立ち上げから運用保守フェーズに至るまで、システム開発プロジェクトの幅広い実務経験を重ねた。 ■2007年より株式会社アイ・ティ・イノベーションにおいて、大規模プロジェクトにおけるプロジェクトマネジメント支援や品質管理支援等のコンサルティングを手がける。 ■PMP、情報処理技術者試験(プロジェクトマネージャ、システム監査技術者他)など。 ■Twitter:https://twitter.com/iti_kudot  ~・~・~・~・~・~・~・~・~・~ ■ ブログランキングに参加しています! ◆人気ブログランキングにほんブログ村 ↑是非応援(クリック)お願い致します↑ ~・~・~・~・~・~・~・~・~・~ ■主なタグ:統合, スコープ, タイム, コスト, 品質, 人的資源, コミュニケーション, リスク, 調達, ステークフォルダ

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