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前回は「問題とは、目標(あるべき姿)と現状とのギャップである」という定義に基づき、「見方や立場が変われば目標(あるべき姿)は違うので、問題が問題では無くなってしまう」という気づきについてご紹介しました。(私はそれを「問題認識の相対性理論」と呼んでいます)
今回は「プロジェクトにおける問題」に焦点を当てて行きます。
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本ブログの【第2回】では、「プロジェクトマネジメントは問題解決だ!」と言い切りました。
確かに「プロジェクトにおける問題」が全て無くなれば、プロジェクトは成功することでしょう。しかし、それはそんなに簡単なことではありません。考えても見てください。「プロジェクトにおける問題」を全部発見して、全部解決しなければならないんですよ!あなたのプロジェクトの問題の数はどれだけありますか?100件ですか?1,000件ですか?10,000件ですか?「問題・課題一覧」にあがっていない問題は無いですか?
それにプロジェクトメンバたちは、ただでさえプロジェクト計画書に規定された膨大な量の成果物を「ぎちぎちのスケジュール」に従って作り上げ、お客様とレビューを行い、承認して頂かなければなりません。
そんなに忙しい中で、さらにプロジェクトで発生する問題に対してアンテナを張って、何か問題が起きたら原因を追究して、対策方針を検討して、上司やお客様にその内容を納得してもらって・・・
そんなことしていたら、スケジュール通りに成果物を作り上げることができないじゃないですか!
――― ここで、プロジェクトマネジメント研修を受けてきたばかりの新人P子さんが何か気づいたようです。
<新人P子さん> : 「そうか!だから、『PMO』という組織があって、開発担当者から問題解決という余計な作業を引き取ってくれて、成果物作成に集中できるようにするんですね!そうだわ!そのためのプロジェクトマネジメントなんだわ!」
――― 一方、長年現場でプロジェクトと戦い続けてきたベテランPMのM男氏は優しい口調で次のように諭します。
<ベテランPMのM男氏> : 「現実はそんなに簡単じゃないんだよ。PMO要員を何人増やしたって問題の対策は進まないんだよ。なぜなら問題の原因を実際に調査したり、対策を実施できるのは、当の開発担当者たちだけなんだよ。それに、そもそもそんなにたくさんのPMO要員の追加など、誰も認めてくれないし。。。」
<新人P子さん> : 「そうか!だから、先々のことまでよく考えながらしっかり段取りを組んで、それを『プロジェクト計画書』に落とすことが必要なんですね!それに、もし問題が起きてしまったときのこともあらかじめ想定して『リスク一覧表』に整理して、リスク状況を管理していくことが大事なんですね!そうだわ!そのためのプロジェクトマネジメントなんだわ!」
<ベテランPMのM男氏> : 「現実はそんなに簡単じゃないんだよ。どんなに段取りを考えてプロジェクト計画やリスクマネジメントをがんばったって、それに過去の成功プロジェクトの計画書を流用したって、プロジェクトを進めて行くと必ずと言っていいほど『これまでに経験したことの無い問題』に出くわして、段取り通りに行くとは限らないんだよ。。。」
・・・ と、「理論」と「現場」の水掛け論は、際限なく続くのでした。。。
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そうなんです。ベテランPMのM男氏が言っていることの全てが正しいわけではないのですが、確かに過去のベストプラクティスに基づくプロジェクト計画を立てたとしても、プロジェクトを進めて行くと、「これまでに経験したことの無い問題」が必ず発生するんです。
それは何故か?答えは明快です。「プロジェクトの定義」を思い出してください。PMBOKガイド第4版(※1)では、「プロジェクトとは、独自のプロダクト、サービス、所産を創造するために実施する有機性のある業務である。」と定義しています。また「プロジェクトの要素成果物のなかに反復的なものがあったとしても、それによってプロジェクト業務がもつ本来の独自性は変わらない。」としています。
すなわち、「プロジェクトには全く同じものは存在しない」ため、過去のベストプラクティスに基づくプロジェクトマネジメントを行っていても、プロジェクトの成功が保障されているわけではないのです。もっと言うと、決められた形通りにプロジェクトマネジメントを行っているだけでは、プロジェクトが必ずしも成功するとは言い切れないということです。
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どんなプロジェクトにおいても必ず新たな問題が発生すると考えると、先輩方からの教えの通り、問題の早期発見がどれだけ大切かがわかります。今までに経験したことのない新しい問題は、対策に時間がかかることが多いので、できるだけ早く手を打たないといけません。そのためにプロジェクトメンバ全員が問題意識を持ち、アンテナを張り巡らして問題の兆候をつかみ取ることがいかに大事なことかが理解できると思います。
しかし、そのアンテナはどうやって張ればいいのでしょうか?問題意識を持つということはどういうことでしょうか?やたらにいろいろなことに不安がってしまって、本来の開発作業に身が入らなくなってしまっては本末転倒です。問題の早期発見と対策は、開発作業を落ち着いて行うための予防策なのだから。。。
ここで問題の定義を再び思い出してください。「問題とは、目標(あるべき姿)と現状とのギャップ」です。プロジェクトにおける「目標(あるべき姿)」が何であるかが明確になれば、プロジェクトにおける問題とは何かも自ずと明確になるはずです。
ここまで言えば、誰しも次の答えにたどり着くのではないでしょうか?プロジェクトにおける「目標(あるべき姿)」は、『プロジェクト計画書』に書かれている。
つまり、
「プロジェクトにおける問題とは、プロジェクト計画と現状とのギャップである!」
このように定義することで、問題意識を持ってアンテナを張るということは、すなわち「プロジェクト計画通りに進んでいないこと」だけを探せば良いことになるので、アンテナの張り方が明確になるはずです。ご納得頂けたでしょうか?
このことをもう少しわかりやすくするために、次回は「プロジェクトにおける問題」の具体例についてご紹介します。
それでは、次回もお楽しみに! < 前回 | 目次 | 次回 >
工藤武久
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※1 Project Management Institute, Inc.(2008)『プロジェクトマネジメント知識体系ガイド(PMBOK®ガイド)』(第4版)Project Management Institute, Inc.