株式会社フェリシモ様
導入の背景
フェリシモ様は1965年の創業以来、実店舗を持たずに通信販売でオリジナル商品を顧客に届けています。通信販売にはシステムが欠かせないため、長年にわたって業務システムの開発・更新・統合を行ってきました。その結果として大規模化・密結合化したシステムは、市場の変化への対応スピードが遅いことが課題でした。
市場の変化に追従できる柔軟なシステムを目指して、フェリシモ様は2017年から次期システムアーキテクチャの検討に入りました。同時期に、ビジネスプラットフォーム本部IT推進部の山下様が、アイ・ティ・イノベーション(以下ITI)の中山嘉之のセミナーに参加。データHUBを利用して段階的にシステムを移行するアプローチがあることを知り、実現するための検討を始めました。しかし、具体的指針がないために社内での判断基準を統一できず、検討が進まなかったといいます。超上流工程でのシステム計画の整備が必要だと感じて、セミナーから約2年後、ITIにコンサルティングをご依頼いただきました。
フェリシモ様には、全てをコンサルタントに任せるのではなく、できる限り社内のリソースで実行したいという企業風土があります。山下様はITIを選んだ理由について、「ITIなら企業風土にフィットした対応をしてくれそうだと思いました。また、セミナーやブログを通して『テクノロジーだけではなく実際の事業のことをよく理解している』と感じられたので、現場で役立つアドバイスをもらえると期待しました」と語ります。
株式会社フェリシモ
ビジネスプラットフォーム本部
IT推進部部長
山下 直也 様
ECサイトの開発・運用、基幹システムを含めた社内業務システムの開発・運用を行うIT推進部の部門長。IT部門における戦略の立案・実行や、全社の業務システムの課題解決に取り組んでいる。
株式会社フェリシモ
ビジネスプラットフォーム本部 IT推進部
基幹システムグループ係長
中田 亮二 様
販売管理・顧客管理・販促管理システムを主に担当。データHUB構築、DWH移行など、データ基盤刷新に関わるプロジェクトにも携わっている。
※2022年4月取材時
システム疎結合化の実現に向けたコンサルティング
データHUBを利用したシステム再構築のプロジェクトでは、3つのフェーズにおいてITIがコンサルティングを行いました。
1) 計画フェーズ
システム再構築の計画を作成するミーティングにITIが参加し、気掛かりな点や疑問をぶつけられる「壁打ち相手」として意見交換しました。業務やデータの概念整理から、具体的な実装技術などの選定まで、バランスよくアドバイスを行いました。
2) モデル作成フェーズ
計画に沿って、システム再構築に必要なモデルをフェリシモ様ご自身が手を動かすことで作成しました。作成にあたって活用されたのが、ITIが蓄積したノウハウを体系立てて実用的にまとめたオリジナルの方法論「Modus MDM/TDM(Master Data Management/Transaction Data Management)」です。作成された成果物(全体のシステムマップ、アプリケーション鳥瞰図、データフローなど)のレビューをITIが担当しました。
現状(As-Is)のアプリケーション鳥瞰図
あるべき姿(To-Be)のアプリケーション鳥瞰図
3) 戦略立案フェーズ
フェリシモ様は、計画フェーズ・モデル作成フェーズでエンタープライズアーキテクチャ(EA)の考え方を取り入れ、事業全体に応用していくフェーズへと進みました。EAの考え方をIT部門だけでなく経営層にも広げていくため、経営指標の見直しを提案するなどの取り組みを積極的に行っています。ITIは、システムの疎結合化と事業のKPIの関連について認識合わせをするワークショップを実施。ワークショップには役員の方も参加していただきました。現場に根差したITIの知見を活用し、フェリシモ様は一丸となってさらに高度な戦略立案を進めようとしています。
的確なアドバイスにより、抽象化と具体化のバランスがとれたモデルが完成
ITIのコンサルティングのメリットについて伺うと、中田様は「課題に対して、ユーザー視点での具体的なアドバイスをもらえたのがとても良かったです。例えば、『兼務が多い』という組織の特徴をデータで表現できていないという課題がありましたが、ITIのアドバイスによって、最適なデータモデルを発見することができました」と評価いただきました。
山下様は、「社内メンバーだけでモデルを作成すると、具体化しすぎて全体像が見えにくくなるデメリットがあります。外部コンサルタントは全体像を見てくれますが、現場を知らないコンサルタントだと抽象化しすぎるのが懸念事項でした。その点、ITIは全体を見通して、バランスよく抽象化してくれました。反対に、社内の知見が不足していた部分については、もっと具体的に調査・検討すべきだと細かく指摘してもらえたので助かりました」と話してくださいました。
コンサルティングを通して、課題解決に向けた知見と実行力を習得
ITIが入念にレビューしたモデルは、フェリシモ様にとって質の高い情報資産となりました。データHUB構築における標準として、ModusMDM/TDMも含めて引き続き活用しているそうです。
山下様は、「モデル作成の全てをコンサルタントに依頼していたら、完成したモデルを基に次の段階に進む力は得られず、システム再構築の最後まで外部に委託せざるを得なかったと思います」と振り返ります。ITIのコンサルティングの効果について、「社内メンバーが主体となってモデルを作成したことで、知見や実行力が身に付いて、データHUBの構築を内製で行うことができました。そこに価値があると考えています。全て任せるのではなく、必要なときにアドバイスしてほしいという要望をITIがくみ取ってくれたので、良い協業体制を作れました」と語ります。
EAの考え方に基づいて、ITと組織の課題を解決する取り組みを継続
構築したデータHUBを活用しながら、システムの移行を進めているフェリシモ様。ITIが推奨する段階的アプローチに沿って、まずはマスタの移行に取り組んできました。今後は、トランザクションを集約し、データHUBを介して既存システム同士を接続することで、システムの疎結合化を進める予定です。この先の段階をトラブルなく確実に進めていくために、ITIにはまた「壁打ち相手」になってほしいと期待してくださっています。
「今回のプロジェクトを通じてEAを学んだことで、組織の課題とITの課題はつながっていることを理解できました」と語る山下様。「アーキテクチャを維持管理するためには、組織も変更していく必要があるかもしれません。一方で、組織の課題を解決するためにシステムやデータを変更する可能性もあると考えています。ITIはEAの考え方を軸にしているので、これからもいろいろな面で相談したいと思っています」と、より広い視野での協業体制に言及してくださいました。
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