今回の話題は「人生の転換点」である。しかもこれは、私自身の課題にもなっている。
人の一生において、多くの人が経験することには、入学、就職、結婚、子供を持つ、転職、祖父母との別れ、さらに熟年になると両親や時には友人・知人との別れ、退職や引退などがある。人生の大きな切り替えポイントは、数年から10年ぐらいの間に一度は訪れるだろう。転換点は人によって異なる。毎年来るわけではないが、必ず誰にでも一生のうち数回の転換点がやってくる。
この転換点をうまく切り抜けられるかどうかが、人生を上手に送れるかどうかを左右する。そして人は転換点で、何かを切り替えない限り、今の生活がそのまま続いて行くのだ。生き方、考え方を切り替えられるかどうかは、当人が気付くかどうかに依存している。転換点は、予測できることもあるし、突然現れることもあるが、予兆を感じ、起こった時に素早く気付けば、早く対処することができる。人生において、若者の時期、そして中年に入った成熟期、さらには老年期と、様々な変換点に差し掛かることになる。
これらの転換期の変化を乗り越え、最高の結果が得られるようにふるまえれば、人生を楽しく生き生きと過ごすことができるだろう。実際、人それぞれの人生があり、同じタイミングで転換点が来るわけではない。自分自身で対処しなければならないのが人生なのだ。固有の人生があるから、面白いのだ。
私は、熟年から老年に差し掛かっている。世の中のお決まりの流れに任せるのではなく、自分で今後の生き方を決断したいと思っている。どのようにしたら最良の結果が得られるのだろうか考えている。
このように悩んでいたらアラン・B・チネン(ユング派の精神分析医)の著書に出会った。チネンは、世界中からおとぎ話・童話を収集し、それらの物語の教訓をもとに、成熟期、老年期になる人々に対して、人生の歩み方を教えてくれている。同じ事象に対して、若者、中年、老年では、対処の方法が異なることを解いている。人は、年齢と経験に基づいた生き方の役割がある。
例えば、若いヒーローは、問題に対して剣や前向きな判断力により対処するが、熟年者は、媒介やコミュニケーションにより問題解決を行う。熟年者は、剣よりも橋を架ける役割なのだと示唆している。そして社会は、ヒーローの存在と年長者の両方を必要としていると言っている。まさに、人生の時期により役割と対処の方法が変化するのだ。
私は、IT事業の創業者であり、今のところ、経営主体であり経営責任を担っているわけであるが、事業の主体を若手に委ねていく時期に入っている。まずは、魅力的な未来を描くことから始めなくてはならない。
ここで、重要なことは、
- 事業を近い将来担っていく人材を見出し、育成すること
- 経営主体を新しい人材に移行し、私は良きアドバイザーになること
- 私自身は、社会全体の視点から仕事の方向性を考える役割を目指すこと
アラン・B・チネンの「老年童話」の教訓を生かすことで、さらには、以下の味付けを加えることができる。いくつかの老年期にふさわしい役割を紹介しよう。老年期ならではの利点でもある。
①若いころ耐え難かった心理的課題に再び取り組むことができる(今は、平気になっているかもしれない)
②熟年期までは、自己のやりたいことを我慢し、義務を果たす対決のようなやり方であったのが、怖いものもなくなり自己改革が可能になる
③若い頃より深い洞察と説得が可能になる
④手に入れたものを捨て去ることで、より進化した自我が生まれる
⑤再び失うものの無い、子供のような無垢の姿に戻るので、素直に歓喜・驚嘆を味わえる
⑥次世代の支援を、超越したインスピレーションで行えるようになる可能性がある
⑦ただの老人ではなく、より成熟した年長者になり、無垢な心と実践を融合した存在になる
私は、ポジティブに楽しい老年の時期を受け入れようとしている。
【参考文献】
◆老年童話に見る社長退任後の課題 | 日本ファミリービジネスアドバイザー協会(FBAA)
https://fbaa.jp/archives/414
◆アラン・B. チネン, 熟年のための童話セラピー「末永く幸せに」暮らすヒント, 早川書房, 2008年7月.