氷山モデル(The Iceberg Model)をご存じだろうか?
氷山モデルは、コンピテンシー理論の一つで、米国の心理学者であるデビッド・マクレランドが提唱した概念だ。氷山モデルによると、外から見えている「成功」(高い成果)は、氷山の一角の水面上の部分で、見えないところには、それまでに費やした時間、努力、挑戦と挫折、我慢や涙など、数えきれないほどのものが存在する。
また、マクレランドは「マクレランドの要求理論」の提唱者としても有名である。マクレランドの要求理論とは、人の行動には動機があり、「達成動機」「権力動機」「親和動機」「回避動機」の4つに分けられるという理論だ。
人は、それぞれ異なる価値観を持っており、この動機の構成の強弱により、モチベーションの上げ方が異なる。マクレランドは、普段意識していない価値観や動機、使命感、役割などが、仕事のできる社員の「行動特性」と大きく結びついていると主張している。つまり、氷山の下で眠っている価値観をはっきりと見えるようにすることが、思考、行動に繋がり、大きな成果を生むということだ。
この理論に従って、テーマを「自分の仕事の成功」に置き換えて考えてみよう。
アウトプットとして現れる仕事の成果は、氷山の外から見えている部分に当たり、見えない部分の水面下には、スキル、行動、思考、価値観などの様々な要素があり、水面上に出ている「成果」を支えていることになる。実際の氷山の場合、水面上に出ているのは、全体の10%にも満たない部分であり、大部分は水面下である。
仮に、この氷山の構造に仕事を当てはめて、全体を考えてみると以下のような関係になる。
成果>スキル>行動>思考>価値観
(成果だけは明確に見えるが、他は水面下で見えない)
成 果:どんな成果を残してきたのか
スキル:何かができること
行 動:行動を起こし何かしらの結果、経験を積むこと
思 考:どんな行動も「ある思考」の元、行われる
価値観:自分の軸、思考の元になる価値観
物事の本質を理解することは難しいが、「働くことの本質」は、突き詰めれば「自分が思う幸せを感じるため(成果)」と心に決めておくとわかりやすいし、誰も否定はしないだろう。
ここで、もっとも大切なことは何だろうか?
私は、氷山の一番深いところにある価値観であると考える。
価値観は、自分が生きていて、仕事をする上での軸になるもので、成果につながる「大元」だと考える。軸がない状況では、思考することも困難であるし、継続的に行動を起こすこともできない。価値観を分かりやすい言葉で言えば、関心のあること興味の湧くことであり、好きなことである。人は、仕事をする際に好きなことに対し努力して、成果に繋げて、喜びや幸せを感じるのだ。
まとめれば、仕事で成果を上げるためには、まず「自分自身の価値観を見える化」することが始まりであり、大元であるということだ。
皆さんも今一度、立ち止まって、他人に説明できる自分の価値観を見える化し、思考と行動を変えてみよう。