前回のブログでは、「とにかく、今年は、行動あるのみだ!セレンディピティ(偶然の幸運)を信じ、迷わずどんどん行動しよう」という話を書いた。
今回のテーマは、「自律」である。
私たちは、自律型の人材を必要とする。ではどのように育成したらよいのだろうか?
いろいろ考えを巡らせているうちに、一冊の本を思い出した。外山滋比古さんが書かれてベストセラーになった「思考の整理学」という本である。1983年に上梓、1986年に文庫化されて以来、累計発行部数263万部を記録している(2022年2月28日現在)。
その本の中で、学校教育に関する問題提起と、世の中が求めている人材の比喩に用いられているのが「グライダー」と「飛行機」である。グライダーと飛行機は、形は似ているが、自力で飛べるかどうかという大きな違いがある。人も自分で考え、行きたいところを決めて、自律飛行を行うのが、本来の人間らしい姿である。
学校教育で「記憶と再生」をひたすら訓練されてきたグライダー型人間を企業は登用し、さらには高性能なグライダー型人間を量産してきてしまった。しかし、コンピュータが出現し、「記憶と再生」を得意とする人材は、コンピュータには及ばなくなってしまった。
かつて、産業革命時代に肉体労働が機械に取って代わられ、企業に関わる人材は、ホワイトカラーとして頭を使うようになったのであるが、ホワイトカラーの仕事は「記憶と再生」と、ちょっぴりの工夫改善があれば、長い間成り立ってきた。それが、コンピュータの登場によって、「思考と創造性」が人間のする仕事の中心になりつつある。しかし、学校や企業では、古いモデルの「記憶と再生」の能力の養成が、いまだに主流である。考え方や創造性を画一的な方法で養成できるはずがない。
いわゆる「製造する機械にもできない」「コンピュータにもできない」人間の仕事とは何か?「思考と創造」が、これからの社会に必要とされるのではないだろうか。
DXの時代になって、企業人が、トップから創造しろと言われて困っている姿をよく見かける。かつて、私の学生時代にも優秀な学生と思われていた人が、卒業論文のテーマを決められないで迷っている状況とよく似ている。改めて「考える」とか「自分で決める」ということの重要性を考えさせられる。
残念ながら学校、企業のトップ層は、「記憶と再生」で成功してきた人が多い筈であるが、今一度、自分は「グライダー」であるか「飛行機」であるか自分に問うてみてはどうだろうか。そうすることによって、自分たちに欠けている面を持った人材を登用するのだ。世の中に適合するために敢えて登用する責任者が、自分としては違和感のある人材を登用しなければならない。経営層、人事の責任者に少しの勇気を出して欲しい。
そのように、私は、望んでいる。
来る2月14日の「ITI Forum 2023」の主テーマは、『自律』である。自律した人とは、飛行機型の自分で飛べる人材を指す。
【ITI Forum 2023】
■テーマ:DXを成功に導く、自律し共感する人と組織作り
■日 時:2023年2月14日(火)14:30~17:05
■形 式:オンライン(Live配信)
■参加費:無料(事前登録制)
■詳細・お申し込み:https://www.it-innovation.co.jp/forum2023/
(参考文献)
書籍: 外山 滋比古、思考の整理学、ちくま文庫、1983年
WEB:筑摩書房 思考の整理学 / 外山 滋比古 著
https://www.chikumashobo.co.jp/special/shikounoseirigaku/