さて、IT哲学のススメは、今回で最終章を迎えることになった。
IT企業を起業して、24年目に入った。振り返ってみると、自ら経営してみてわかったことは、はっきりと先が見えていて、経営上の重要な決断を下したことは無いに等しい。なぜならば、経営者の仕事は、先が見えないうちに「会社や事業の方向や目標を決めること」が役割だと実践を通してわかったのだ。
ここ数年私が感じていることであるが、ITが、様々な形で世界中に拡大し、浸透し、ビジネス変革のスピードが増している。数年前まで、クラウド上でのビジネスモデルに目新しさを感じていたが、現在では当たり前になっているのだ。いや、ITビジネスの前提条件になっているだろう。このITの浸透を感じ取り活用する集団と、感じない集団との差がどんどん開きつつある。世界は明らかにITによって、二極化が進んでいる。ITは、自社のビジネスのために活用するだけではない、個人や集団が、情報を入手したり、共有したり、発信する役割も果たす。両立させて、いわゆるDX推進といえるのだ。
10年前に業界で一つのまとまった世界に居て活動していた人々が、二つの大きな塊に分裂し始めている。ITによる業界の変化点から2~3年で、一つのまとまった秩序あるビジネス領域が、徐々に分離を始めて、人々がその境界を渡れなくなってきている。さらに進めば、もとは一つであったビジネスの塊は、互いに行き来が難しい独立した収益や活気が違う二つの領域へ変化してしまうことになる。元には戻れない変化である。
これは、ITの浸透度がもたらす影響によって、真っ二つの別のものになってしまうことを意味する。次々と異なる業界の変異が始まりつつある。
テレワークを例にとると理解しやすいと思う。コロナ禍になって、今年で3年目になっているが、もとは、仕事はアナログが中心で、対面のコミュニケーション無しでは成り立たないと誰もが思っていた。テレワークを認めていないわけではなかったが、補助的な役割であると誰もが考えていただろう。ところが、この2年の間に、テレワークを徹底活用する側とできない側の異なった領域に分断されてしまったのである。
外食産業も同様だ。対面にこだわるビジネスと、Uber Eatsなどのフードデリバリーサービスを活用して、同様の料理を配達するビジネスにはっきりと分離してきた。
もとは、どうであったか考えてみよう。一つではないか!?
すべてのビジネスが、同様な変化をする可能性を持っている。
さらには、分裂は、勝ち組と負け組のように捉えてはならない。分裂した同士が、合体や変化を繰り返すだろう。また、小さくなった部分を横断的につなぎ、新たなビジネスが生まれる可能性もある。時間とともに変化するために、次のチャンスが現れると考えるべきだろう。
我々は、未知なる将来に向けての旅に出ようとしているのだ。コロナが、そうさせたわけではなく、ITが社会に浸透すること(DX化の意味)は大きな流れとしてあり、2020年の初頭に、世界中にコロナが広がったことがトリガーとなり、ITの浸透が、加速したということは、間違いのないことである。恐らく、10年以上の変化を加速させたと私は考えている。
やがて、コロナも本年中には収束するだろう(そう心から願っている)。
私たちは、そのような環境の中で、事業をどのように経営して行けばよいのだろう。
DXの本質やここ数年注力されているSDGsの考え方は、コロナとは関係なく、機能する枠組みであり続けると私は考えている。コロナの役割があったとすれば、DX、SDGsを加速させたに過ぎない。同時に私たちは、コロナ禍での仕事の進め方を学んだ。
コロナにより科学や政治や国際協調が、一時的に無力に感じられたかもしれない。人類は、謙虚になることを、このウイルスに教えられただろうか。私は、人類は学習する動物であると信じたい。将来が見えにくくなり、不確実性が高まったように誰もが感じている。今までのように、今月の次に同じような来月が来るとは、限らない。
ウイルスに学んだことは、人が人である所以は、「自ら考え、決断し、実行すること」。ここに立ち返るチャンスだと私思う。
これから、改めて人としての思考の力を使おう、意志の力をもっと使おう。過去の参考になるものは、少なくなった。私たちは、前を向いて、意識を集中させ、想像力をふんだんに働かせて、勇気をもって決断しよう。
自分の、ビジネスに対しての感覚を信じて、勇気をもって実行に移そう。決断を下すだけでは足りない。本当に重要なことは、決断を実行に移すことである。
もし、予想に反していても、修正すればよい。自分で、決めて、実行することこそが、今後は、より重要になる。
歴史は、語る「いつも、危機が去った後は、世の中の方向付けが、難しいものである。自分たちの感覚を信じて、前に進もう。そうすれば、そのほうが、先が見えるし、修正することも易しい」。
人類は、危機の後は、必ずそうしてきた。輝かしい世界が来ると信じよう。
最後に、私が考えている2022年度以降のアイ・ティ・イノベーションが目指すべきポイントをお伝えする。
2022年も皆さんと共に、明るく、楽しく、元気よくやっていこうと思います。
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