これまでお伝えしてきました、「プロマネが惑わされるプロジェクトの落とし穴シリーズ」も最終回になりました。第1回から第4回にかけて、私のプロジェクトマネージャとしての経験や、プロジェクト支援のコンサルティングでの現場からの声から、プロジェクトマネジメントに隠れている危険個所について、お伝えをしてきました。
このシリーズの中で、このブログを読んでいただいている方々はどのように感じられたでしょうか。
「あるある~」であったり、「いやいや・・・」であったりと、感じ方は様々だと思います。読者の方々の経験などから感じ方が異なることは当然ですが、ブログで触れてきたような落とし穴が、自分たちのプロジェクトにも同じように起こっているのか?または、既に意識はしてあることで、対策済みなのか?を一度、プロジェクト内のメンバー全員で話し合ってみてほしいと思います。きっと、読者の一人ひとりが受けとった感じ方とは違う意見が出てくるのではと思っています。そして、そのプロジェクトの中での考え方の違いが、さらにプロジェクトマネジメントを強固なものにすることにつながっていきます。ぜひ、ディスカッションの場を設けてみてください。
では、シリーズ最後のQuestionです。
結構、このような質問をされる方もいらっしゃるのではないでしょうか。自分たちのプロジェクトを是が非でも成功させたいと思うのはプロジェクトマネージャとして、もっともなことだと思います。PMBOK®で定義されているとおり、プロジェクトとは、「独自のプロダクト、サービス、所産を創造するために実施される有期的な業務」です。やったことのない(独自性)ことを、決められた期日(有期性)までにやり遂げるのがプロジェクトですから、それをコントロールするためのマネジメントは難しく、プロジェクトマネージャ自身も成功に導くための努力・苦労は計り知れないところです。
プロジェクトの計画段階での様々なステークホルダーからの要求事項を受け止め、成功への「道しるべ」としてプロジェクト計画を作ったにも関わらず、プロジェクトが進む中で、コスト計画の変更や要員の交代、品質悪化への対応策など・・・・
私も現場のプロジェクトマネージャ時代には、様々な苦労をしながらプロジェクトを進めてきました。これといってプロジェクトマネジメントの経験が無い中で、突然、プロジェクトマネージャに任命された私は、会社やお客様先にプロジェクトマネジメントのガイドラインがあるにも関わらず、何から始めたらよいのか、何をどうしたら良いのかもわからず、悪戦苦闘していたことを思い出します。今になって、その時の自分を振り返ってみると、せっかくガイドラインが用意されているのに、その原理・原則を理解していないまま、書かれていたことを「やっていた」だけで、社内のガイドラインや先輩方が伝えたかったことが実行できていなかったと反省しています。
読者の皆さんの中にも同じような経験、思いをしたことがある方がいるのではないでしょうか。プロジェクトを成功させるために、プロジェクトマネージャとしてどうしたら良いのか?(以前の自分がどうしていたら良かったのか?)
ここで今回のお題の問いに対する答えを考えていきたいと思います。
A成功させるやり方はいくつも存在しているが、そのままやっただけでは成功にはつながらない!
今では、かなりの企業や組織の中で、プロジェクトマネジメントの経験を基にした、ガイドラインが整備されてきています。また、PMBOK®や一般書籍にも技術的な解説をしたものが出回っています。まさに成功させるためのやり方がそこにあります。まず「はじめの一歩」は、そのガイドラインの内容や技術的なことをしっかりと理解することです。技術無しでは実践はできません。
そして「次の2歩目」は、その一つ一つの作業が何のために実施するのかといった原理・原則を考えてみてほしいということです。PMBOK®でも第7版からは、プリンシプル(原理・原則)を前面に打ち出しています。
PMBOK®第7版でのプリンシプル(原理・原則)の抜粋
・勤勉で、敬意を払い、面倒見の良いスチュワードである
・協働的なプロジェクト・チーム環境を構築する
・ステークホルダーと効果的に関わる
・価値に焦点を当てる
・システムの相互作用を認識し、評価し対応する
・リーダーシップを示す
・状況に基づいてテーラリングする
・プロセスと成果物に品質を組み込む
・複雑さに対応する
・リスク対応を最適化する
・適応性と回復力を持つ
・想定した将来の状態を達成するために変革できるようにする
この原理・原則を意識できるようになると、自分が成功に導きたいと思っているプロジェクトに対して、ガイドラインで書かれていることや書籍にある技術的なことを、具体的にどのように適用したら成功につながるのかといった気づきにつながるはずです。その場合、ガイドラインの記述や書籍の技術をそのまま使うのではなく、それらを使いながらも自分のプロジェクトに対して、より効果の高いやり方に変えて、適合していくことにつながっていきます。まさにそれがPMBOK®第7版の原理・原則にも登場する「テーラリング」であり、テーラリングの中での議論や判断がプロジェクトマネジメントを成功に近づけます。
さらには、プロジェクトマネージャの行動にも変化が出てきます。お客様に対してどのような行動をとれば、スムーズに意思統一でき、こちらの協力者になって動いてもらえるのか。チームのメンバーに対しても、どのような行動をとれば、チーム内に自立性が生まれ、モチベーションを上げることができるのか。まさに、プロジェクトの推進力が向上していくはずです。
第4回のブログでもご紹介しましたが、アイ・ティ・イノベーションでは研修コースとして「プロジェクト推進力向上」というカリキュラムをご用意しております。プロジェクトマネジメントの原理・原則を踏まえながら、プロジェクトマネージャとして推進力を高めていくためのポイントを演習も交えながら「気づき」を持っていただけるコースです。その「気づき」はきっと自分たちのプロジェクトでも十分に活用できるものになると思っています。ぜひ、プロジェクトの推進力を高めたい方は受講してみてください!
最後に今回のシリーズ全体を通した私からのメッセージです。
「プロジェクトマネジメントもWhy、What、Howが重要。Howだけ頑張っていても成功には導けない!プロジェクトを成功させたいという強い思いと、強い推進力がプロジェクトを成功に導く!」
■執筆者:ITI 奥田 智洋(シニアコンサルタント)■
大手SIerのシステムエンジニアとして、自動車業界のプロジェクトマネジメントを徹底的に学ぶ。そこで蓄えてきたノウハウを広く発信する立場となり、プロジェクト支援の専門集団であるアイ・ティ・イノベーションにて、お客様と共にプロジェクトの成功に奔走している。