2021年7月1日で、ITIは、設立23年を迎えることができました。
ここで改めて、企業の使命について考えてみたい。
私は、経営や方針に悩んだとき、常にピーター・ドラッカーの言葉を参考にして20年以上経営を行ってきた。
ドラッカーは、常に、私が迷っているときに“私だけ”に語りかけてくる。
ドラッカーは、経営に関する経験の度合いに関わりなく、何かを切望しているリーダーのために語りかけてくるのだ。
私の場合は、1990年頃、前職の管理職になったばかりの時期に、様々なマネジメント実務書を読みあさっていた。その中で『マネジメント 課題、責任、実践』に出会った。今思い返せば、どう実践するか経験が薄いために、肝心なことは理解できず、ただ読んでいただけであった。
その後、1994年にバブル崩壊が起こり、所属している会社の経営が困難になった。この時、自分が担当していたITコンサルティング部門の経営について、真剣に考えるようになった。すでに、持っていた『マネジメント』を読み返すと、ドラッカーは、悩んでいた私に語りかけてくるではないか!最初に読んだ際には関心が薄く、“ふぅ~ん”と思っていた言葉が、生きた言葉として理解できるようになる。この時、私のIT事業のリーダーとしての当事者の意識が、ドラッカーにより強い刺激を受けて、高揚しているのをはっきりと感じた。苦しいので、とにかく、前進できる手掛かりになる何かを切望していたのだ。1998年にITIを設立し社長になった際は、IT活用による改革(イノベーション)で世の中に貢献する企業になりたいという一途な思い以外には、ほとんど頼るものが無く、ノウハウや経験も無かったため、ことあるごとに「ドラッカー先生」の書いていることを頼りに、もがいてきたと言える。ドラッカーは、“マネジメント”という概念の発明者であり、これを社会に最初に導入した人と世界では認知されており、ドラッカー先生の売りは、「マネジメント」であることは、間違いないことである。
その後、いろいろな著作を読み進んでいくうちに、私の中での傑作は、『明日と支配するもの』になった。この本は、知識労働者が中心となる社会での成功哲学だと、私は考えている。
特に、私の仕事場であるIT業界では、企業経営を考える上での原則、必須条件、経営の在り方、人材開発、意思決定などを行う上で、非常に参考になる。
私はこの本が好き過ぎて、自社の経営にも生かしている。さらに「知識労働者の成功のために原則を学ぶ」ためのワークショップを開発し、数十回の講義や講演を行ってきた。
しかし、ドラッカーの著書が、自社の経営課題の直接の解決策や答えを教えてくれるわけではない。あくまで磁石と部分的な地図としての役割でしかない。私は、それでいいと思う。
あくまでも責任あるリーダーに対しての拠り所、助言、指針に過ぎない。
ドラッカーが、私の為だけに語りかけてくるかのように感じるのは、私だけでなく、ドラッカーの信奉者である経営者の多くが感じていることを、のちに知った。経営者としての成熟度や状況によって、悩める当事者は、拾う言葉が異なるし、追い込まれて何かを求めている経営者にとって、その時に特別響く言葉が多くある。
私が好きなドラッカーの言葉を紹介しよう。
「企業の目的と使命を定義するとき、出発点は、一つしかない。顧客である」(ドラッカー)
これは、ドラッカーの語った有名な言葉であり、私は、企業全般に共通に言えることだと考えている。迷ったら、このことをもう一度、ここに立ち戻って考えるのが良い。
それでは、情報に関わる産業について、特に重要なことはなんであるかを、改めて、ドラッカーの言葉から探してみよう。
これらは、IT企業を経営するときに大変役立つ。私は、企業経営の的を射た原則・哲学を示すものだと信じている。