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『プロマネが惑わされるプロジェクトの落とし穴 第2回』なかなかプロジェクト全体の品質が上がらないのはなぜ?


プロジェクト品質管理の落とし穴

『プロマネが惑わされるプロジェクトの落とし穴』第1回目では、プロジェクト計画時における「目的」の重要さをお話ししました

第2回目としては「品質」について考えていきたいと思います。
まず、プロジェクトの目的の要素としてQCDがあります。皆さんもご存じのとおり、Qはクオリティー(品質)、Cはコスト、Dはデリバリーですね。プロジェクトの成功を考える中で、このQCDすべてを当初の目標値に到達させることがマネジメントしていく立場としてはとても重要なことです。
しかしながら、先回もお話したとおり、
「プロジェクトマネジメントというものが、独自性、有期性の中で行われており、プロジェクトの背景や進行途中の外的/内的要因でこれだけやれば上手く進むという保証がない。」
という中でQCDの3要素全ての達成が難しくなってくるということが、皆さんの実際の現場では起こっているのではと思います。そうなるとQCDの中で優先順位が発生してくることになりますが、その優先順位の判断がその後のプロジェクト推進と成功に向けて大きな影響を及ぼすことになります。QCDの中で何に「拘る」のか。プロジェクトマネージャとして判断することが重要です。
当然ながら、プロジェクトの目的、そして置かれている状況の変化等でそれぞれ異なってくるとは思いますが、私がこれまで経験してきたプロジェクトの現場では、特に「品質に拘る」ことを最優先に考えていました。
どうしてもコスト最優先にしてしまうと、本来やるべきこと(タスク)を省いてしまったり、デリバリー優先にしてしまうと、お客様の要求事項を全て満たした状態で製品を提供できなかったりといったことが起きやすくなります。それらの結果としてデリバリー前後で本来、やらなくても良い作業等が発生し、コストもデリバリー時期も満足のいく目標に達しないリスクを多く含んでしまうことになります。
では「品質に拘る」ということはどのようなことなのかを考えていきたいと思います。

Q品質管理に取り組んでいるけれど、なかなかプロジェクト全体の品質が上がらないのはなぜ?

皆さんもプロジェクトの中でその規模により異なるものの、品質管理ということに取り組んでいらっしゃると思います。
その品質管理とは何をすることでしょうか?
昨年、大学生向けにプロジェクトマネジメントのワークショップを約半年の間、実施しました。プロジェクトマネジメントの知識の習得から始まり、その得た知識を、大学生たちが自ら伝える側に立って、別の大学生や高校生たちにプロジェクトマネジメントをどう伝えていくか、ワークショップ形式および実際のセミナー開催を通して実践してもらいました。
その活動の中で大学生たちが品質管理について、どのような言葉で伝えようとしたか。それは、「できあがったものの状態を見て良し悪しを見極めて直す」ということでした。正しいように思えますが、少し足らないようにも思えますね。
品質管理とは、成果物の状態を見極めて正しく直すことは当然のことながら、その良し悪しの状態になったのはなぜなのか、そうならないようにするにはどうしたら良かったのか、さらには同様のことが他の成果物等でも起きていないのかまで捉えて、対策を打つことが品質管理の活動にも大切なことではないかと思います。

ここで、今回のお題の問いに対する答えをお伝えしようと思います。

A表面的な事象や品質分析ツールから出力される数字だけで対策を決めていることが多い。真因はより深いところに存在し、分析結果の視点を変えれば気付けることがある。

品質は氷山のようなものです。海上から見えているものは氷山全体の一部分にすぎません。
プロジェクトの成果物の品質を考えた場合、発生した事象だけを捉え、その問題の解決だけをして安心してしまっていませんか?氷山と同じように発生した品質問題の真因はもっと深いところにある場合が多いです。「なぜなぜ5回しろ!」と言われたことがありませんか?回数は置いておいて、なぜそうなった、そしてさらになぜそうなったのかを追求しなければ正しい対処ができないということです。組織やプロジェクトの中で「なぜなぜミーティング!」や「なぜなぜコンテスト!」などのイベントを企画しても良いですし、プロジェクトの管理ドキュメントにもなぜなぜを複数回、書き込める枠を設けても良いですね。日ごろから掘り下げる習慣をつけることが大切だと思います。

また、昨今は品質管理のツールもプロジェクト内で定着してきており、比較的容易に品質状況を数値化したり、グラフ化したりすることができます。ただ気を付けなければならないことは、容易に数字が見えてしまうために、その数字の裏付けを怠ってしまうケースも散見されます。数字はあくまでも「この部分は品質が悪いかもしれない」といった狼煙をあげるだけです。実際の現場に行ってみない限り、本当の状態は把握できません。新型コロナウイルス感染防止の状況下なのでなかかなか難しいとは思いますが、プロジェクトマネージャとしても「3現主義」と言われる現地・現物・現認を頭に入れて、品質管理に拘りを持って取り組んでほしいと思います。

最後に今回のメッセージです。
「プロジェクトマネージャの武器は、品質の数字ではなく、どれだけ現場の裏付けを持っているかである!」

次回は「パートナー管理の落とし穴」についてお話したいと思います!
お楽しみに!

 
■執筆者:ITI 奥田 智洋(シニアコンサルタント)■
大手SIerのシステムエンジニアとして、自動車業界のプロジェクトマネジメントを徹底的に学ぶ。そこで蓄えてきたノウハウを広く発信する立場となり、プロジェクト支援の専門集団であるアイ・ティ・イノベーションにて、お客様と共にプロジェクトの成功に奔走している。


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