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【連載:DX超入門】その2 DXの構造と広がりーSEDAモデル編


【連載:DX超入門】その1 DXとは何か」では、デジタルトランスフォーメーション(DX)の原点について語った。DXの根源的な話は、「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」ということであり、社会の視点や企業の視点で多くの意見が発表されている。

DXで成功するということは、どの領域がITの対象になるかを明らかにするという大きな課題がある。
 
今回は、DXの構成と広がりについて製品・サービスの枠組みを示すSEDA(シーダ)モデルを題材に語っていく。

まず最初に、SEDAモデルを説明することにする。SEDAモデルは、一橋大学のイノベーション研究センターで延岡健太郎教授が中心になって提唱している企業活動の製品・サービスの枠組みを示すモデルである。組織の戦略的枠組みとイノベーションを検討する上で、分かりやすく有用なモデルであると私は考えている。(2017/3/8~21まで一橋大学延岡健太郎教授が、日本経済新聞に連載した記事を参考に本ブログは構成した。)

SEDAモデルでは、製品やサービスなどをどのような視点で実装するかについて以下のS:サイエンス、E:エンジニアリング、D:デザイン、A:アートの4つの視点を使う。

一昔前の製品・サービスの価値を決める視点は、E:エンジニアリングの観点が、ほぼ中心であった。技術的な格差が大きな世界では、製品・サービスは、「できること(実現可能なこと)」が、価値の中心であった。工業製品でいえば、製品の性能、数値目標、実現した機能などが最も重要な選択基準であった。自動車、カメラやパソコンなどの工業製品などが典型例である。その後、企業はより高い価値を求めて、科学的な裏付けを前提とした製品・サービスの開発に没頭し、開発競争の結果としてさらに優れた製品・サービスを産み出すことになった。

つまり、E(エンジニアリング:できること)からS(サイエンス:科学的な裏付けに基づく)領域での発展を経て、同時に、D(デザイン:顧客ニーズの実装、利用者の感覚)に重点が置かれた。またA(アート:開発者側の哲学、暗黙知)までも取り込み更なる成長を実現しようとしている。これからの世の中で求められる製品・サービスは、形式知よりも暗黙知、問題解決よりも問題の提起がより重要になる。性能が優れていて使いやすいだけでなく、利用者の感性に訴える何かが必要になる。アップルやダイソンの製品からデザインだけではなくアートの部分を我々は感じ取ることができる。次世代の製品・サービスを開発する際には、ITの高速処理、何度でも試すことができる特徴を生かし試行実験を行う。また、製品・サービスには、ITの様々な使い勝手の良い機能を自由に組み込むことができる。ITの適用は、製品開発・サービスのあらゆる面で必要不可欠な要素になってきている。E(エンジニアリング)の専門家、D(デザイン)の専門家であるデザイナー、ITの専門家が、協力しITを駆使し新たな事業を産み出す。これからは、このようなコラボレーションが重要になる。D(デザイン)とA(アート)の調和は、今後の開発の課題であるデザインが顧客ニーズの実装であるのに対して、アートは開発側の主張であり、哲学である。この一見、相矛盾する要素のマリアージュが成立したときに、過去に無い優れた製品・サービスが生まれるのだ。

これからの社会においてDXという概念で何かを主体的に推進する役割を考えると、これまで説明してきたSEDAモデルを、IT的発想で実現することに他ならない。DX的発想では、事業や製品・サービスを俯瞰的なDXの傘の下でビジネスの様々な事象を観察・理解し新しい方法での実現の判断をしていくことが必要である。DXの対象領域をこれからの製品・サービスの広がりと同期をとり、顧客経験価値を高める方法、暗黙的付加価値の追求する方法をDX視点で検討していく。DXに不可欠なデザイン思考やAIなどの領域でPoCの実施が注目されるのは当然のことだろうと思う。暗黙知と問題探索を新たな発想で実施する必要があるからだ。形式知や数値目標を追いかけるメソッドからの多様な発想を開発し、脱却ができるかどうかが成功・不成功の鍵となる。

次の図は、SDEAモデルに、DXの関連する領域を重ね合わせたものである。

ITは、伝統的にエンジニアリングを中心にサイエンスやデザインの一部を含みビジネスの支援をしてきた。今後は、アート、デザイン、サイエンスまでを含みDX戦略のターゲットとした着想・発想が大切であり、SEDAモデルのIT化が、DX戦略といえると私は考えている。意味的価値や問題提起の領域までDXを浸透させる必要があると私は、考えている。

次の連載その3は、DXをデータの広がり、ITの機能的な進化に焦点を当てて考察する。


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林衛
IT戦略とプロジェクトマネジメントを中核にITビジネスのコンサルティングを行うアイ・ティ・イノベーションのファウンダーであり社長を務める。◆コンサルの実践を積みながら英米のIT企業とかかわる中で先端的な方法論と技術を学び、コンサルティング力に磨きをかけてきた。技術にも人間にも精通するPM界のグランドマスター的存在。◆Modusアカデミー講師。ドラッカー学会会員、名古屋工業大学・東京工業大学などの大学の講師を勤める。

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