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《14》インド鉄道システムのスマート化に日本企業は参入できるか?


◆インドITへのトランプインパクト

2017年が慌ただしく過ぎていきます。米国では1月20日、新大統領の就任式が行われ、トランプ政権の時代が始まりました。米国民の雇用を守るトランプインパクトは即座にインドを直撃し、IT大手のインフォシスは2月初旬、今年度の新規採用数をこれまでの年2万5000人規模から6000人に縮小することを発表しました。同社がこれほど採用数を減らすのは創業以来、初の出来事です。対米アウトソーシングビジネスの縮小を見込んでのこうした動きは今後インドのIT各社で進みそうです。同時に新たなアウトソーシング先の模索も始めており、今年はインドのIT企業にとって、日本、中国などアジア重視の姿勢が高まる気配を見せています。

◆モディ政権の今後を占う5州議会選挙

慌ただしさでいえばインドでは2月1日に新年度の予算案発表され、その直後から州議会選挙が5州(パンジャブ、ゴア、ウッタルプラデシュ、ウッタラカンド、マニプール)で動き出しました。中でも最も注目されるのは2月11日から投票が始まったウッタルプラデシュ(UP)州の動向です。UP州の人口は日本の人口を越える2億人。その上、貧困層が多いだけに2019年総選挙の「前哨戦」と呼ばれています。任期5年の折り返し年を迎えた2017年のモディ政権は今後も盤石か? それとも激動か? それを占う5州議選の開票結果はいずれも3月11日に判明します。

◆G7を凌駕するE7──2050年まで成長の雄はインド

このように世界もインドも今年は年初から動きが急ですが、長期スパンで見たインドの成長力が揺るぎないのも確かです。例えば、英プライスウォーターハウスクーパース(PwC)が2月初旬に発表した主要32か国に関する成長予測レポート「2050年の世界(World in 2050)-BRICsを超えて:その展望・課題・機会」によれば、インドのGDP(購買力平価=PPP換算)は2050年までに米国を越え、中国に次ぐ世界第2位の経済大国になる見込みです。同レポートでは、中国、インド、ブラジル、メキシコ、ロシア、インドネシア、トルコの新興7か国を「E7」と称し、これらの国々が既存の先進諸国であるG7(米国、日本、ドイツ、英国、フランス、カナダ、イタリア)の経済規模を凌駕していくシナリオを提示しています。その要点は下記の通りです。

○世界のGDPは2042年までに2016年時から倍増する。
○2050年までに世界のGDPの50%はE7によって占められ、G7が世界のGDPに占める割合は20%ほどになる。
○インドは2050年までに米国を越え、中国に次ぐ世界第2位の経済大国になる。同時にインドネシアが日本、ドイツを抜き、世界第4の経済大国に成長する。
○2050年までに経済大国上位7か国のうち、6カ国をE7の国が占めるようになる。つまり、上位7か国中、米国以外はすべてE7になる。
○2016年時、米国の一人当たりGDPは中国の約4倍でインドの約9倍。これが2050年までに中国の2倍、インドの3倍にまで差が縮まる。○インド、ヴェトナム、バングラデシュは今後30年間にわたって年率5%のGDP成長を維持する。
○E7の成長力の源泉は、人口増に伴う労働力と内需の拡大にある。ただし、この成長を後押しするためには教育への投資と雇用機会の拡大が不可欠。

つまり、英のEU脱退で欧州が揺れ、トランプ政権の誕生で米国が揺れても、世界経済成長の源泉は中国、インドを両雄とした新興国の成長力にかかっていて、この流れはそうそう変わることがないということです。◎PwCレポート「2050年の世界(World in 2050)」より転載

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◆今年はインド鉄道システムのスマート化に注目

では、成長力が盤石なインド市場の中で日本企業がITを駆使して参入すべき分野はどこなのか? やはり、本稿《12》で述べたように「インフラ×IT」が最も有望な分野だと思われます。

とりわけ、今年注目されるインフラ分野は鉄道システムです。例えば、インド鉄道省はこの3月、内外IT企業と共同でビッグデータ等を活用する“One-ICT”プログラム策定のための会議を初めて開催します。(『Hindustan Times』2017年2月8日付け記事)

“One-ICT”プログラムで、インド鉄道省は鉄道システムのスマート化を多岐にわたって推進していく考えです。そこに目下、参入を図っている日系企業が日立グループで、同社は英国等での実績を活かし、インドの鉄道システムのスマート化に果敢に挑戦しようとしています。

もちろん、GEなど欧米勢も競合するものの、インド鉄道は一日18000車両を運行し、毎日2300万人の利用人口を誇る世界最大規模の鉄道網を有しています。その巨大なICTシステムを全面的に刷新するITプロジェクトのすそ野は広い。だから日立グループのみならず、日本企業がこの分野にITを武器に参入するチャンスが必ずあるはずです。

[執筆:田中 静]

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