【新アメリカベンチャー事情 その1】で、訪問先の優秀なベンチャーは何かが違うと感じたと述べたが、今月に入って「何か違う」アクションが起こった。
良いと判断すれば、すぐさま行動を起こす、結果、先週、日本で2回目のミーティングを行った。
ミーティングの目的は、さらなる技術の深堀と日本でのビジネス・トリガーを探し出すことである。アメリカの企業は日本でのビジネスの困難さを当然理解しているし、日本ならではのアプローチが見つかれば普及できることも知っている。
実は、この企業の販売・マーケティングのトップは20年以上前からシリコンバレーでの知り合いであり、以前から日本のマーケットの事情や日本での展開方法を経験してきた人物である。また、私は、2000年ごろから継続的にアメリカのIT人脈を我慢強く繋いできた。その結果、ビジネスの前提である信頼の構築というハードルは低い。残るは、いかに、良いマーケティング方法と普及のための技術基盤と戦略を構築するかにかかっている。
日本とシリコンバレーの間には、それぞれあるいは相互に「技術」を追求してきた歴史がある。 様々な企業が生まれては消えていく。しかし、実際にマーケットを動かしている人達は限られ、独自のネットワークを形成している。このことを知っているかどうか、必要な時に機能させられるかどうかが実は重要である。
あらためて、ビジネスはこのテンポだな!と私は思う。シリコンバレーベンチャーの行動力、スピード感、決断力、分かりやすさは、日本の企業とは違う。原則を守れば、騙されたり騙したりは起こらない。むしろ日本企業の「テンポが悪く、スロー」なところが、時々裏目に出てうまくいかないことの方が多いのではないだろうか。
グローバルな視点で言えば、ずいぶん前から言われているが、いよいよ“モノ”社会から“コト”社会への変化が大きくおこっている。例えば、流通・製造・販売・マーケティングなどのやり方が、日本人の常識を超えて大きく変わっているのだ。それにも拘わらず、日本の多くの企業では、旧態依然のやり方が当たり前にまかり通っている。そこには変化を促すドライバーが存在しない。
日本の社会システムは、スピードとマインドの変化の点で行き詰っている。マインドの課題は、理解する力、深く考える力、発信する力、議論する力、そして、決断し一人でも推し進めるリーダーシップ力である。
確かに、30年以上前の日本は、最先端の技術を持ち、優れた製品とサービスを世界中に送り出してきた。しかし、よくよくみれば、方向性、技術、勤勉さが優れていたわけで、特に、ホワイトカラーの生産性や独創性が高かったわけではない。日本人あるいは日本の社会は、もともと意思決定が遅く、慎重といわれている。それはそれである意味良いことではあるし、真面目さ、真摯さにおいては、極めて優秀だといえると思うが、当時「生産性」が全体として高かった理由は、高度成長で経済の基盤がどんどん大きくなっていく時代だから成り立ったのだと、私は考えている。ホワイトカラーの生産性の低さは以前から変わっていない。ハイテク、量産、普及の掛け算の構図があったから良い成果が得られたにすぎないのだ。実際、日本の知的労働者の生産性は、欧米の70%程度であるといわれている。私の海外経験での実感からも、この数字は当たっている。先週、日本を代表する老舗流通業の社長から社員の生産性とマインドについての半ば愚痴といえる正直な危機感の話をお聞きした。私の実感と殆ど同じであった。グループで何万人も社員がいる企業では、危機と呼ばざるを得ない状況だと私は思う。ちなみに、日本のサービス業の生産性は、米国の58%だそうだ。「おもてなし」の分を差し引いてもかなりかい離がある。
さて、これからの日本の企業に求められるものは、もともと不得意である、リーダーシップ・スピード・独創性である。いかにこれらの点を根付かせるかは、容易ではないが、米国のベンチャーの人達と一緒にビジネスを行うことで、いい点を取り入れられると私は信じている。
つまり、日本人が持っていない、あるいは不得手なところを持っている、例えば海外の優秀な人達と一緒に仕事をする機会を意図的に増やし、体験させることが、もっともよい方法だと思う。
私は、英国、アメリカをはじめとして、近年では中国、インド、シンガポール、マレーシアの国々の人とビジネスを行ってきたが、再び、アメリカ企業とのビジネスを進めることになり、以前より進化したアメリカビジネスの良さを実感している。
単に、良い技術を日本に導入し儲けがほしいわけではない。自らは変わらない、変えられない人たちに何かを感じてもらい、変化を誘導したいのだ。
今は弊社での小さな取り組みだが、いずれ日本のITを進化させていく端緒になると考えている。
そういった点からも、なんとか、このビジネスを成功させたいと願っている。
つづく