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【連載その4】アイ・ティ・イノベーション18年の軌跡、未来に向けて


【成長期(2002年7月から2008年ごろ)47歳~53歳】 事業の推進と成長
 今回は、成長期のビジネスについて述べることにする。会社創業後5-6年が経過した。このころの大きな課題は、第一に、コンサルタントの能力アップをどのようにすれば実現できるのか?という課題であり、第二の課題は、日本社会のグローバル化の進展に伴いグローバルな仕事をどのように取り込んでいくのかという課題である。これらの課題に対応すべく、今取組みを開始しないと、将来会社の成長発展は厳しくなることは明らかであると思っていた。

どうすればよいのだろう?

悩みは、尽きないが、この分野の仕事はどんどん増える。

不安と忙しさとのハザマでの悩みが続く。

 ちょうどこの時期に、日本ヒューレット・パッカードの役員であったOさんが、第二の職場として弊社に参加してくれた。OさんはITコンサルタントとして私が言うまでもなく素晴らしい。しかし、私が最もありがたいと思っているのは、その豊かな経験を活かし、困っていたり相談に来るコンサルタントに的確な助言をしたり、社員がOさんの人柄や行動に触れることで、結果としてコンサルタントとして大いに育っていく、まさにロールモデルであり、素晴らしい大先輩なのである。会社の第一の課題という点からも本当にありがたい上に、いまだに現役のプロマネとして難しいプロジェクトの提案やコンサルティングの現状打破にも貢献してくれている。

 コンサルティングの事業が、一先ず立ち上がった2003年ごろから顧客のグローバル化に貢献できる仕事を模索していた。CBOP(ビジネスオブジェクト推進協議会)などを通して、欧米の企業、ITのスペシャリストとの付き合いが始まっていた。また、同時に中国や韓国とのIT分野での現地企業との交流がはじまり、ますます、私のグローバル事業への関心が高まって行った。

 2005年に、当時のソフトブリッジ・ソリューションズ・ジャパン社長のプラシャント・ジェイン氏から、日本企業向けにインドの通信産業省の機関であるCDAC(インドで初めて1980年代にスーパーコンピュータを開発した機関、インド人向けのIT専門教育も行っている)と提携しインドでのIT教育を始めたという話を聞いた。私は、直感的にこれはビジネスになると考えた。日本企業向けに若手社員のグローバル実践研修を提供する。その内容は、IT専門分野、クロスカルチャ教育、語学教育を2-4ヶ月の合宿研修である。すでに、第1期メンバーとして日本を代表する大手企業の若手社員が、インドに派遣されている。ITIが、コースの設計に関わり、さらに、顧客を紹介すれば、シナジー効果があり、ビジネスが、成り立つだろうと考えた。早速、インドのプネに出向き、講師、施設を見学し、グローバル研修事業を開始することにした。弊社が開拓したお客様は、コンサルティング大手、製造業大手、SI企業など10数社、ビジネスは順調に成長しはじめたように見えたが、そうは、問屋が卸さなかった。2007年ごろからムンバイ、デリーなどでイスラム系過激派によるテロが頻発するようになり、ビジネスに不安定要素が増えた。このときの対応から、安全管理を徹底し的確な判断決断が重要で、ビジネスは我慢強く行わなければならないことを学んだ。2006年以来、インドでのビジネスはかれこれ10年近く継続的な改善を行っている。今現在、中国の大連(2011年から)、マレーシアのクアラルンプール(2013年から)で実施しているグローバル研修事業は主に顧客からのご要望にお応えしてスタート、発展してきたもので、お客様の事業の多角化に貢献していると考えている。

 グローバルビジネスは、我慢と的確な判断力が成功の鍵である。今後は、どのようにこれらの変化に対応し継続的な改革を図るかが一層重要である。(現在インド事業は子会社であるIT innovation Indiaにて継承し、新たな方向を目指している。)

 時は、数年遡るが、2008年にリーマンショックがやはり来た。ついに来るものが来たかという感じである。

 会社を存続させるために、とにかく、すばやい決断が重要であった。売り上げが瞬間的に30-40%落ちている状況の中で、何を実行するかが本当に大切であった。今決断して実行できることは何か、オフィスの縮小、役員報酬の削減、無駄な経費の削減、これらを速攻で行った。また、残念だが数名の社員が結果として辞めることになった。それで何とか黒字を確保できる目処がついた。このときは、非常事態の際には、最善の選択肢を時間をかけて探すことより、できる限り速い決断をすることが大切であることを学んだ。

 リーマンショックのような大きな経済危機は経営者として初めての体験であるし、これこそが経営者として勝負だったと思う。

 このとき、これから先はどのような事態になっても対応できるもっと強い会社していかなければならない、二度とこんな目に遭いたくないないし、二度と社員につらい思いをさせてはならないと心に誓ったのである。

つづく

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林衛
IT戦略とプロジェクトマネジメントを中核にITビジネスのコンサルティングを行うアイ・ティ・イノベーションのファウンダーであり社長を務める。◆コンサルの実践を積みながら英米のIT企業とかかわる中で先端的な方法論と技術を学び、コンサルティング力に磨きをかけてきた。技術にも人間にも精通するPM界のグランドマスター的存在。◆Modusアカデミー講師。ドラッカー学会会員、名古屋工業大学・東京工業大学などの大学の講師を勤める。

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