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Beyondエンタープライズ


年明け最初のブログは、足元の課題から少し離れて、これからの企業システムがいったいどこに向かおうとしているのか?について私なりの妄想も交えてお話したい。言い忘れましたが、いつもこのブログを読んでいただいている皆さん、新ためて「あけましておめでとうございます」。(余談ですが、数年前、娘にアケオメと言われ、???でした。)

さて本ブログシリーズは、2013年10月の第1回以来、一貫して企業情報システムのアーキテクチャについて言及してきた。それはいわゆる“Enterprise Architecture”の事と受け取っていただいて構わないが、「正直、EAって昔からあったけど、ちょっと古くない?」という感覚が否めないのではなかろうか。最近この理由が何となく分かってきた気がする。企業の情報システムがどうありたいか?を扱うのはよしとして、エンタープライズ(日本語で企業と解釈)をスコープにする事がどうも古いのである。

地球考えてみればザックマンがEAフレームワークを考案した1987年、企業情報システムはERPすら登場していない黎明期にあり、子会社との連結決算も義務付けられていない時代であった。つまり、当時は一企業のシステムをくまなく完成させることがゴールであった。では、近年のビジネス環境はどうであろうか。内向きに考えると、相変わらず個人の報酬は会社から支給され、その額は企業の損益に左右され、。。。となるが、ひとたび外を向けば、M&Aの日常化、サプライチェーンのグローバル化、研究開発での企業連携など、明らかに一企業の枠を越えてパートナーとコラボする機会が格段に増えている。このように時代は移り変わっているのだ。

以前のブログでも触れたが、システム(ソフトウエア)は、一つ外側の世界をスコープに取り込み汎化する事で、単位面積当たりの効化が倍増するという特徴を備えている。言い換えれば、スコープを小さくまとめたシステムはシンプルであるが拡張時に莫大なコストと時間を要する。よって今後の企業情報システムのアーキテクチャを考えるに、一企業の狭い世界をスコープとしていたのではダメで、一歩外へ踏み出し、企業を、国を、文化を越え、地球規模でのシステム化を視野に入れる必要がある(少なくともアーキテクチャのデザインとしては)。加えて、足元だけを見て構築した個別システムを何とか接続する従来型の“EDI(電子商取引)”ではなく、全体の設計から落とし込まれたものでなければならない。

では、地球規模をスコープとする21世紀の企業情報システムのアーキテクチャはいったいどのようなものが良いのだろうか?「グローバルでボーダレスな商取引が前提でかつ、細部のルールは単一ではなく多様性を配慮したものであり、さらには不確かな将来に向けての柔軟性を持ち合わせたアーキテキチャ」でなければならない。ERP導入が一段落した国内企業の次の一手はまさに、この(企業を越えた)スコープ拡大への対応である。バックナンバー2015.9.13「企業システムのスコープ拡大」にある”SCMシステムのSCOPE拡大例”の如く、システムのビジネスへの追従が急務なのである。

この壮大かつ曖昧なスコープ拡大へ対応するには、どう考えてもERPのような従来型の密結合アーキテクチャでは難しい(ERPは全体の一部)。なぜなら密結合システムを維持し続けるために要するコストと時間が、今後のビジネスの要請にシステムが応えられない程オーバーヘッドになってきているからである。疎結合で柔軟なアーキテクチャへの転換はもはや必要不可欠である。さらに、その転換はビッグバンでのリスクをヘッジした緩やかな移行を可能にするものでありたい。さしずめキーワードは、疎結合Interface(コンポーネント間〜、システム間〜、リージョン間〜)。そして都市計画型マイグレーションといったところになろうか。

ここ数年のビジネス環境は本当に世界が狭くなって来た感が強い。これは何よりICTの進化によるところが大きいと思われる。しかし一方で、猛烈な勢いで溢れるデジタル情報のカオス化を統制、制御して行く事も必要である。ITが撒いた種を刈り取る責任は我々IT従事者にある。その為には、ブラックBOXと化した既存システムを見える化するという地道な作業は避けて通れない。企業内情報システム部門のやるべき事は山ほどあるが、ここは腕力ではなく、専門家らしくモデリング等の科学的手法を用いて整備にあたりたいものである。焦らずに着実に、しかし考え過ぎずに最初の一歩は早めに踏み出してみよう。

新年早々、10年ほど先を妄想してみたがどうだろうか?中には極めて現実的と思われる方(特にグローバル進出が著しい企業)もいるのではないだろうか。Beyondエンタープライズ。少なくとも企業の枠を越えてシステムをデザインする必要性は今以上に高まるに違いない。

本年も引き続きよろしくお願いします。 Y.Nakayama

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中山 嘉之
1982年より協和発酵工業(現、協和発酵キリン)にて、社内システムの構築に携わる。メインフレーム~オープンへとITが変遷する中、DBモデラー兼PMを担い、2013年にエンタープライズ・データHubを中核とする疎結合アーキテクチャの完成に至る。2013年1月よりアイ・ティ・イノベーションにてコンサルタントを務める。【著書】「システム構築の大前提 ― ITアーキテクチャのセオリー」(リックテレコム)

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