1 はじめに
もう6月である。今年はサッカーのワールドカップがある。それに毎年すっかり恒例となった「総選挙」もある(注:このブログは6月2日に書いている)。
そう、「総選挙」である。今ではすっかり定例化してしまい、かつてほどの緊張感はないが、、それでも見るは見る。
組織にはモチベーションが必要である。それも可能ならば、内発的なモチベーションがいい。その組織に属するメンバーが、自分の直面する問題に対して、自律的に自分が何をすればいいのか考え、そして行動する。簡単なようで難しい。それでも、それができる組織は、強い。
2 AKB48の場合
どうしても語りたいドキュメンタリー映画がある。2012年公開「DOCUMENTARY of AKB48 Show must go on 少女たちは傷つきながら、夢を見る」である。この映画は初っ端が震災の慰問ライブから入るのでいきなりエモーショナルになる。
私が特に語りたいのは、映画中盤の「2011年夏 西武ドームライブ3days」の実録である。
初日の出来がとにかくひどい。メンバーが何をしていいか分からない。次にどこに行けばいいのか、曲は、フォーメーションは、分からないのである。その原因は多分に練習不足であり、スタッフの指導不足であろうが、これに対しマネージャーの秋元康氏はメンバー全員に拡声器で語る。
「僕が知りうる限りたぶん最悪のコンサートだった」
「君たちがこのステージに立つ理由とか、自分たちがこれでいいんだろうか、もっと真剣に考えて、もしかしたらこの曲順はおかしいんじゃないだろうかとか、このMCおかしいんじゃないだろうかとか、もっと真剣に考えないと、ダメだと思います」
そして、キャプテンの高橋みなみが動く。厳しい表情をしながらつかつかと秋元氏のもとへ行き、本当に駄目だった、恥ずかしいくらいに駄目だったと涙ながらにいう。
高橋氏はメンバーのところに戻り、全員を前にして、やはり涙ながらに語る。
今日の様な公演が続くようだったら、多分終わります。それはたぶん誰もが思って、感じていると思います。
こんなんで楽しいって思われるのって、、すげえ悔しくない?もっとできるって多分みんな思ってる。私は思った。もっとできるのに!って。もっとできるのに、なんで、これなんだよう!って。正直私すげえ悔しかったし、終わった後めっちゃ泣いた。
(中略)
・・こんなんじゃダメでしょ。
死ぬ気でやりましょう。
語り終えたら笑顔である。
その後各チームは夜遅くまで自主練し、一人一人が真剣に、声を出し合い、色々と修正していく。その結果2日目の公演は初日とは比べられないほどに恐ろしいものとなった。メンバーの1人が述べた「限界を超えてしまった・・がむしゃらにほぼ気力だけでやってる感じが気持ちよかった」というその通りであった。(*2)
厳しい経験は、人を、組織を、成長させる。
3 まとめ - 高橋氏の言動より
このシーンを企業に当てはめるなら・・・企業の進むべき道をトップが打ち立て、ミドル以下が共有することで、自律的に考えだし、行動し、望ましい形となった - と言える。そしてそのためにはミドルたる高橋氏の存在が欠かせなかったということである。
一般に、「論理(Logic)」や「論拠(Reliability、Reality)」が無ければ、おそらく人も組織も動かすことはできない。
ただ、高橋氏の言動には更に「情理(Narrative Story)」がある、とも思う。
彼女の目線は常にメンバーと同一線上であり、偉ぶっていない。そして、単なる淡々とした説明ではなく、熱意をもって語る。更にいうと、彼女は良く泣く。感動しやすいタイプなのだろう。
日常からどうすべきか深く考えているだろうか、感動しているだろうか。どうすれば、自分が感動したことを熱く語り、他人に「情動」を与え組織が自律的になるだろうか。
自問自答の日々である。
注釈:
(*1) 今回、予定を変更しております。
(*2) 詳細は映画のDVDを見て欲しい。
最後まで読んでいただきありがとうございました!!!
参考文献
※URLの最終アクセス日は何れも2014年5月31日
[1] DVD「DOCUMENTARY of AKB48 Show must go on 少女たちは傷つきながら、夢を見る」発売元:2012「DOCUMENTARY of AKB48」製作委員会 販売元:東宝
[2] 桑田 耕太郎、田尾 雅夫、『組織論 補訂版』、有斐閣アルマ(2010)