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【第28回】RFPに隠された暗号を読み解け!


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今回は「RFP(提案依頼書)に隠された暗号???」がテーマです。「暗号」といっても、最近なにかと話題になっているシステムのセキュリティ確保のための暗号化技術のことではありません。数年前に世界的に流行し、物議をかもしたダン・ブラウン氏の小説『ダ・ヴィンチ・コード』に登場するような名画や歴史的建造物に隠されたメッセージという意味の「暗号」のことです!(※1)

 

【 RFP(提案依頼書)とは? 】

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当ブログの 【第25回】プロジェクト初期見積り考古学 では、初期見積もりについて考察するうえでの共通認識を持っていただくために「RFP(提案依頼書)をもとにシステム開発にかかる費用全体の見積りを行うというシチュエーション」を設定しました。このときから、特にRFP(提案依頼書)がどんなものかを何も説明してこなかったので、ここではまずRFP(提案依頼書)について簡単に紹介しましょう。

PMBOK第5版による定義を引用してみます。(※2)

提案依頼書(RFP:Request For Proposal).調達文書の一種で、プロダクトやサービスの納入候補に対してプロポーザルの提出を求める際に用いる。適用分野によっては、より狭義の、あるいは特別な意味をもつことがある。

つまり、何らかのシステム開発を行おうとしている組織や人(発注側)が、システム開発を委託する候補のベンダー(受注側)に費用見積もりも含めた提案をしてもらうために、そのシステムに関する概要や開発に関する条件等を文書化したものです。もちろん、プロジェクトの初期見積もりは、必ずしもRFPをもとに行う場合だけではありません。しかし、近年では、見積もりミスが原因でプロジェクトが失敗したと思われるケースも多いことから、しっかりとシステム企画を検討し、見積もりに必要な項目をすべて明確にして、RFPとしてドキュメント化することの重要性が認識されつつあります。

一般的なRFPの目次例を以下に示します。

<目次>

  1. 背景(対象部門、現状の課題、システム化の目的、期待される効果、前提・制約等)
  2. 提案依頼事項(依頼範囲、要求事項(機能面、技術面、品質面、マネジメント面等))
  3. 作業条件(体制・役割分担、 作業場所・環境、納品物等)
  4. 契約事項(発注形態、検収・支払条件、瑕疵担保責任期間、知的所有権等)
  5. 提案手続きについて(参加資格条件、手続きの流れ、提案書記載内容、提供資料等)
  6. 添付資料

発注側で整理した、システム開発を行う上でのWHY、WHAT、HOWが一通り含まれており、加えて発注側と受注側の間で結ぶ契約に関する内容と契約に至る手続きについて記載されます。

 

【 RFPに埋め込まれた暗号とは? 】

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RFPがどんなものか確認できたところで、RFPを発行する側(発注側)は、どんな思いでRFPを作成するのか想像してみましょう。たとえば、自分が住む家を注文するというシチュエーションを考えてみましょう。

  1.  背景 ・・・ そろそろ子どもたち(2人)も大きくなってきたので、これまで暮らしてきた3LDKのマンションでは狭くなる。子どもたちの自立を促すためにもひとりひとりに個室を与えたいし、これを機に一軒家を購入することにしよう!
  2.  提案依頼事項 ・・・ 木造2階建て、災害にも強い家、南向きで日当たり良好、もちろんECO仕様、広いバルコニー、天然芝の庭もほしい、ゲスト用も含め2台分の屋根付き車庫もほしい!
  3.  作業条件 ・・・ せっかくの注文住宅なので、間取りや内装、キッチン・バス仕様などは、自分で調べて決めたい。けど、専門的なことはわからないので、建築スケジュールや段取りは、業者さんに幅広く提案してもらいたい。
  4.  契約事項 ・・・ 頭金は1000万ぐらいで、あとは30年ローンかな?
  5.  提案手続 ・・・ 住宅展示場で目星をつけた業者3社から、来週中には大まかな設計図と完成イメージ図、見積もりを提示してもらって、今月中に1社に絞って、来月いっぱいで契約にこぎつけたいな。

夢にまで見た新築一戸建ての我が家!きっと想像が膨らんでいることでしょう!
どんな家に住みたいかのイメージはありますが、やはり心の片隅にはコスト制約が。。。
とにかくRFPの段階では、少し要求は高めにしておいて、業者からの画期的な提案を待ちたいって感じでしょうか。。。

しかし、一週間後の3業者からの提案は、どれも予算オーバー。。。
結局、いくつかの要件を取り下げ、予算枠も明示してRFPを再発行。。。
まるでシステム開発のベンダー選定と同じように、思い通りにはいきません。
現実は厳しい!

この例では、3業者の1回目の提案はどれも却下されてしまいました。提案する側は、RFP発行側の予算制約を読み違えていたと言えます。もしかすると、予算制約を超えているかもしれないことを承知の上で、様子見のために、あえて過剰な要求事項に対してそのままの見積もり額を提示したのかもしれませんが。。。いずれにせよ、提案する側はRFPをどういう意図で発注側が作成しているのかを読み解く必要があるのです!

「RFPに込められた発注側の意図を読み解き、その意図に応じた提案を行う!」

多くの場合、RFPには注文住宅の例のように、発注側の事情を考慮した画期的な提案が出てくることの期待が込められていることでしょう。ごくまれに、特定のベンダーが持つ製品でしか実現できない技術要件がRFPに埋め込まれている場合もあります。そのようなケースでは、おそらく支援契約で特定のベンダーが発注側のシステム企画段階から入り込んでいて、事実上の指名入札にするために、他ベンダーが提案しづらいような要件をRFPに仕込んでいると思われます。提案する側は、RFPが書かれた発注側の事情をよく読み解いたうえで提案に臨まないと、思うような受注活動に結びつかないこととなるため、注意が必要です。

考古学、「既知の未知」に「未知の未知」、RFPに込められた暗号・・・
プロジェクトの初期見積もりには、本当にロマンを感じますよね!

それでは、次回もお楽しみに!          < 前回 | 目次 | 次回 >

工藤武久

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※1 ・ダン・ブラウン(2004)『ダ・ヴィンチ・コード』角川書店
・「ダ・ヴィンチ・コード」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』
http://ja.wikipedia.org/wiki/ダ・ヴィンチ・コード 2014年2月19日 (水) 06:15 UTC

※2 Project Management Institute, Inc.(2013)『プロジェクトマネジメント知識体系ガイド(PMBOK®ガイド)』(第5版)Project Management Institute, Inc.

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工藤 武久
■株式会社アイ・ティ・イノベーション  ■コンサルティング本部 - 東日本担当 ■学歴:早稲田大学 - 第一文学部卒業 ■メーカー系のシステム子会社にて、主に官公庁向け大規模システム開発プロジェクトに、SE、PMとして携わる。立ち上げから運用保守フェーズに至るまで、システム開発プロジェクトの幅広い実務経験を重ねた。 ■2007年より株式会社アイ・ティ・イノベーションにおいて、大規模プロジェクトにおけるプロジェクトマネジメント支援や品質管理支援等のコンサルティングを手がける。 ■PMP、情報処理技術者試験(プロジェクトマネージャ、システム監査技術者他)など。 ■Twitter:https://twitter.com/iti_kudot  ~・~・~・~・~・~・~・~・~・~ ■ ブログランキングに参加しています! ◆人気ブログランキングにほんブログ村 ↑是非応援(クリック)お願い致します↑ ~・~・~・~・~・~・~・~・~・~ ■主なタグ:統合, スコープ, タイム, コスト, 品質, 人的資源, コミュニケーション, リスク, 調達, ステークフォルダ

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