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関係者が「聖域を設けず」議論することで、真因が見えてくる


 お客様より開発・運用のアウトソーシングを受けている企業が、お客様から「アウトソーシング先としての役割を果たしていない」とのクレームが入り、急遽我々もその改善策作成のお手伝いをすることになりました。その時に見えてきたことを、今回のテーマにしました。

 お手伝いをしたお客様(以降“OS社”とする)は、アウトソーシングの組織体制を設計・開発・運用の3チームに分けておりました。アウトソーシングをOS社に委託しているお客様(以降“C社”とする)がOS社に対し通知したクレームのポイントは、次のとおりでした。

『過去に発生した障害に対する抜本改善がなされておらず、類似障害の頻発が無くならない。』

 C社がサービスを提供しているお客様からの類似障害に対するクレームが、そのままOS社にも伝えられた形でした。

 OS社の責任者の方は、「トップダウンで改善できるのであれば既に改善できているはず、関係者が納得する真因を皆で共有し、共有できた真因のうち、改善すべき事項を実施する」との方針を打ち出し、改善策作成の取り組みを行いました。

 関係者が納得する真因を皆で共有することは、なかなか難しい事です。何故ならば、上司・部下、もしくは発注者・受注者など様々な利害関係を抱えながら、日々現場の仕事をしているため、本音を言いにくいからです。

 そこで、今回実施した方法は“ワークショップ”。利害関係者同士が同じテーブルにならないようチーム分けし、次のようなルールで実施しました。

(1) 聖域はない -> 肩書き、組織の壁を忘れること
(2) 人の話をよく訊く(尋ねる) -> チャチャをいれないこと
(3) 個人攻撃はしない -> 中立的な観点で、他者に敬意をはらうこと
(4) 建設的な意見を述べる -> 愚痴や文句のはけ口にはしないこと
(5) One Team Operation -> となりの人と分科会はしないこと
(6) 発案者の名前は出さない -> 言いだしっぺに、引導が渡されないようにすること
(7) 当事者意識 -> 自分自身が主体者となること
 
 さて、丸一日をかけチームごとに討議し、その結果を皆の前で発表することを繰り返した結果、次のようなことが見えてきました。

◇C社からの依頼を、OS社が実現可能な対応期間を設けず受けていたため、設計・開発・運用の各チームは、恒常的にオーバーワーク状態であった。

 ◇オーバーワークな状態であったこと、およびC社と約束した納期最優先で対応する意識の強さから、システム的な影響調査、設計・開発・運用における各種レビュー・チェックが甘くなっていた。

 ◇各種レビュー・チェックが甘いため、本番障害が発生。本番障害対応と通常のC社からの依頼対応が重なり、オーバーワークが負のスパイラルに陥っていた。

 ◇皆がオーバーワーク状態であったため、お互いに改善のための会話をする気持ちのゆとりが無い。よって障害報告で謳った根本対策を講じることもできず、今に至っていた。

 私が察するに、以上のことは現場の方は言わなくとも分かっていたことではないかと思います。

皆が同じようなことを思っている/思っていたということを、今回のワークショップで明確に意識共有できたことは現場の方にとって大変有意義であったと、ワークショップ終了後に参加された方々の感想を通じ感じました。

人は、思っているだけではダメで、皆が口にして、文書にして、図にするなど、見える形で表現し、その内容を皆で改善に向け前向きにディスカッションすることの大切さを、改めて強く感じました。

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竹内博樹
1991年 筑波大学卒業後、三和銀行のシステム子会社である三和システム開発株式会社(現、三菱UFJインフォメーションテクノロジー株式会社)入社。同社にて銀行業務のリテール、法人、国際の各分野において、大規模プロジェクトにおける企画・設計・開発に、主にプロジェクトマネジメントを実行するマネージャとして携わる。また開発後の保守にも従事するなど、幅広い業務でマネージャとして活躍。2004年より当社にて、大規模プロジェクトにおけるPMOの運営およびプロジェクトマネジメント支援や、IT部門の組織改革等、幅広くコンサルティングを手がける。 保有資格:情報処理 プロジェクトマネージャ、PMPほか。PMI会員、PM学会会員。

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