私は、今、インドでの仕事を終えシンガポールに来ている。
一昨日、IDGグループ(Inspirational Development Group)が、インド・プネで大規模なイベントを主催し、それに私は参加した。20年ぐらい前までは、大きなイベントの開催場所と言えば、欧米か、アジアでは日本が中心であった。そののち開催地は、シンガポール、香港、上海などに広がった。国際的な会議やイベントが開催できる施設、ホテルが整備された結果、今では、インドの大都市であるムンバイ、バンガロール、プネなどでもこうした国際的な会議が頻繁に開催されるようになった。プネでは、IDGのCEOであるStephen Bennett氏も来場、講演した。
私が、参加したセミナーのトピックは、リーダーシップに関する講演とワークショップであった。一昔前までは、インドのIT企業は、欧米などのアウトソーシングが中心で、コストと人々の質の差を強みとして仕事をしていた。しかし、ここ数年、インドは、世界の工場やアウトソーシング先から変化し、一部の産業では付加価値重視にビジネスをシフトさせはじめている。付加価値ビジネスの実現には、人々の考え方の変化が不可欠になる。単純だが一所懸命仕事をやって豊かさを実現する世界から、生きがい、仕事の意義、人の成長等を大切にするビジネスを模索する段階に入ってきているように思う。
このような背景から開催地に合ったセミナーの話題も変化してきている。私は、ここ10年ほどインドや中国などアジアの国の人々の変化を見てきた。急成長を続けてきた彼らだが、ここにきて成長が鈍化する一方、中産階級が出現し、国内の市場がある程度できてきている。そうなると、価値やニーズの多様さが社会に現れ、人々は生きがいや働き方の追及を始めるようになる。日本の場合、第2次世界大戦後、今のアジアに比べればゆっくり長い時間をかけて社会は変化したのだが、それに比べ、インドや中国の場合、変化があまりに急激で、人の変化がついてきていない、あるいは今後ついてこれないのではないか、と私は、感じた。
いずれにせよ、変化に応じて、人に係わる話題、悩みが増えることは確かだ。
インドのITをはじめとするどの業界でも、ここ数年の間に、多様で複雑なニーズに応えるために人々のリーダーシップが求められている。当然のことだ。
今回は、インドでのセミナーの一部を紹介しよう。業界に寄らず優れた成果を残した人とそうでない人の本当の違いは、どこにあるのだろうか?
セミナーの講師は、優れた成果を残した人には、以下のような特徴があると言っている。
どれも、当たり前と言えば当たり前だ。理解することは簡単だが、実行することは難しい。
当たり前のことを当たり前に行うことが重要だ。けれど、講師の述べた特徴は、最高に優れた成果を残した人の核心ではないように感じた。
では、最高に優れた成果を残した人の核心とは何か?
私は考え続け、そして一つのアイデアが浮かんだ。
「わかった!ハイ・パフォーマ(私は、達人と訳す)は、宮本武蔵と同じだ!」
日本の達人の代表である剣士は、先に講師がに述べた特徴を当然ながら備えている。普通の優れた成果を残した人と達人(最高の成果を残した人)の違いは、結局、確信があるかどうかである。確信とは、心から理解していること。自分のプロとしての目標を信じることができていることだ。だから、どこまででも努力できる。確信を持ち何事にでも高次元で実践できる力があることが、達人の条件である。
日本には伝統を守っている達人が数多くいる。そういう達人に学ぼうではないか!
私は、こんなことをインドであらためて気付かされた。
ところで、英語での説明を聞きながら、「プネで英国人講師からリーダーシップについて英語で聴くなんて!!!」と私は不思議な感じがしていた。
我々がいるのはインドのホテルであり、出席者の殆どはインド人だ。一方、会場の雰囲気は、まるで米国か英国だ。講師は英国人。言葉は英語。講演の内容はリーダーシップ。それなのに、ここは、やはりインドなのであった。(因みに私は日本人であった。)
シンガポールより