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日印の架け橋のためのジャパンビジネス成功セミナー(プネ大学)日本の文化 その3


今回は、日本の本質に焦点を当て、説明することにする。前回も強調したが、私は、グローバルでのビジネスで最も重要なことは、以下の3点であると考えている。

・文化の理解(自国の文化、他国の文化の理解)
・言語(英語、日本語、など)
・世界で通用する専門力、実務力

その中でも、様々な国の人と仕事をする上で苦労する点は、やはり、互いの文化の違いに起因する問題である。これは、グローバル経験の比較的少ない日本人を冷静に観察すると文化的な面の理解の違いから悩んだり、間違ったりする。私たちが、子供のころから当たり前と信じていることこそ、辺境の国日本の特殊なことかもしれない。当たり前のことを疑い、自ら自国の文化は、…のようなものと理解することから日本の文化の本質や特徴が見えてくると思う。

さて、日本人にとっても、とても難しい“日本”とは何か(日本の正体、日本の本質)について、考えていこう。私は、20年ほど前からグローバルの仕事に継続的に関わってきたので自分なりの日本像というのは、ある程度持っていてビジネス活動をしてはいたが、外国人に対して明確に日本とは何かについて説明できるレベルには、到達していなかった。今回、インドで日本について講義をすることになったためにこの点を深く考えることができた。これから説明する内容は、学術的に専門的に検証したものではないが、私なりに納得のできる理屈で自身の視点からまとめたものである。

日本とは何か
日本とは何か?という問いに対して明確な答えはない。しかし、外国の人に、なぜ日本人は、独特のあいまいなふるまいをするのか?なぜ、日本人は、ものごとを欧米人のように決められないのか?なぜ、日本人は、震災の時にあれほど気丈で我慢強く行動できるのか?・・・など質問されたときにしばしば困る。多分、日本人共通に持っている特徴は、地理的な要因や歴史的な要因と深く関係していると私は、考えた。日本の地理的な位置づけは、南北に長く、亜熱帯から亜寒帯までを含む四季のある温帯が国土の中心であり、緑、水、自然が豊かで多様で変化する環境がある。また、2000年以上周辺の国からは独立して発展してきた。また、日本人と言えば、日本と呼ばれる島国に住む、単一民族としての日本人を示す。国名、領土、人種、言語が、一致している国は、世界でも少数派である。国土が島国で、他国からの侵略が2000年以上にわたってなかったということは、世界に国の中では、極めて稀なことで(日本人にとっては当たり前のこと)地味だけど強い日本の文化を生み出してきた。

日本文化の特徴と歴史
多様な自然環境と豊かな自然が、安定的な生活環境を生み出した。日本は、言うまでもなく農業国である。自然の恵みを大切にする文化が生まれる。さまざまなものに神が宿る(八百万の神)。年間で四季をめぐり繰り返す活動を基礎とした様々な儀式や生活感が自然と生まれた。また、農耕民族としての家族観や社会を維持する仕組みが長い時間をかけて養われ、インドや中国から伝わった文化、宗教なども自国の社会にうまく適合させてきたと思われる。

日本人は、海外からの新しいものについて否定的ではない。むしろ積極的に受け入れてきたと思う。多くの国が異国のものに対して従うか拒絶するかという極端な態度をとっている。むしろ、日本ではうまく自国に合うように取り込むのが上手いといえる。日本文化の理解に欠かせないのは、天皇の存在と後転的に出現した武士の存在が、私は、重要であると思う。何千年もかけて日本人にしみ込んだ文化の理解なくして他国の文化を理解することは困難だと思う。

例えば、環境との共生やエコ、COOL JAPANなど近年、日本の技術が注目されているが、これらの根源が、何に根ざして発展してきたものなのかを我々は、理解する必要がある。日本人は、何千年もの間、環境との共生をはかり、衣食住の文化を発展させてきた。エコは、まさに、“勿体ない”という言葉に代表される。この、勿体ないに相当する外国語の表現は、存在しない。必要なものを必要な分だけ大切に使っていく。私たちが、食事の前に口にする“いただきます”という言葉は、“命をいただきます”という意味から来ている。万物に命が宿り、自然を大切にする根本の考えが、日本文化の中に根付いている。

日本の宗教は、もともとは、多神教である。後転的に仏教、キリスト教などが入ってきた。このことを知らずして、日本の説明をする方法もないし、他国の文化との違いを分かるはずもないと私は、考えている。自国の文化をしっかりと理解し確信を持つことで、捉え方の基準ができる。基準があれば、他国の文化との差異がわかる。差異がはっきりとわかれば、違うものとして認めることができるのだ。基準や認識がふらふらしている人は、違うということを善悪のどちらかで考え、自国の習慣ややり方が正しく、違和感のある他国の方法を否定することになる。これは、大変な間違いであり、他国の文化を馬鹿にしているばかりでなく、自国を傷つけていることになる。このような事態にならないために、自国の本質をしっかり認識しなければならないと思っている。

最後に、日本文化の特徴は何かといえば、しっかりと継承された伝統の中に、新しいものをうまく取り込んでいく強さであるといえる。孔子の有名な「和して同ぜず」という言葉は、まさに、日本文化のことを分かりやすく理解させてくれる。和とは「調和」であり、同ぜずの同は、「妥協」を意味している。

次は、近代から現代の日本について語ろう。          つづく

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林衛
IT戦略とプロジェクトマネジメントを中核にITビジネスのコンサルティングを行うアイ・ティ・イノベーションのファウンダーであり社長を務める。◆コンサルの実践を積みながら英米のIT企業とかかわる中で先端的な方法論と技術を学び、コンサルティング力に磨きをかけてきた。技術にも人間にも精通するPM界のグランドマスター的存在。◆Modusアカデミー講師。ドラッカー学会会員、名古屋工業大学・東京工業大学などの大学の講師を勤める。

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