今回は、プロジェクトにおいて発生する“変更”をいかにコントロールするかという話です。
「設計書が変わっていたなんて聞いていないぞ!折角モノを作ったのにやり直しじゃないか」
「勝手にスケジュール変更したらダメじゃないか!そんなに伸ばしたら納期に間に合わないぞ」
「修正が多すぎてどれが最新の資料か分からない!どの資料を見ればいいの?」
皆さんも似たような状況に遭遇されたことがあるのではないでしょうか。
プロジェクトに限らずどのような仕事であっても、関係者間で共有されている内容に変更が発生した場合、そのコントロールがうまくいかずに上記のような問題が発生する可能性があります。
その結果、作業の無駄や品質上のトラブルが起こってしまうのですが、影響はそれだけではありません。これが専門的な知識が不足しているために起こった問題であればまだしも、このような間違いは組織的に仕事を進める上での「初歩的な作法」の問題ですから、「なんでこんな簡単なミスを防げないかな~」と、メンバーの士気低下も引き起こしかねません。
特に時間的なプレッシャーが常につきまとうプロジェクト型の活動では、「ま、わざわざ変更したことをいわなくても皆気付いてくれるだろう。」と、初歩的な作法がおろそかになるケースは意外に多く、変更にまつわる問題が頻発する場合もあります。
「当たり前だから」といって明確なルールを決めず、個人の判断・振る舞いに任されているとこのような事態に陥りますので、やはり、変更をコントロールするためのルールをプロジェクトとして決め、周知徹底しておくことが重要になるのです。
変更をコントロールするための基本手順
では、どのようなルールを準備しておけば良いのでしょうか。プロジェクトによって細かい手順は変わってきますが、基本的な変更時の手続きは次のような流れになります。
■手順1: 変更の内容とその影響を確認する
変更を行いたいという要望が上がったら、まずは「何をどのように変更するのか」、「その変更がプロジェクトにとってどのような影響を及ぼすのか」という2点を明らかにする必要があります。
「プロジェクトへの影響」とは、その変更によって例えば追加の予算が幾ら必要になるとか、プロジェクトの期間をこれくらい延長する必要があるといった、影響の範囲を洗い出してその大きさを想定することです。
■手順2: 変更の可否を判断する
次に、変更の必要性とプロジェクトへの影響度合いを天秤にかけて、変更を実施すべきか否か判断を下さなければなりません。影響が非常に軽微な場合にはプロジェクトマネジャー自身が判断を下しても良いのですが、影響が大きい場合には、必要な関係者を集めた協議によって結論を出すことになります。
また、変更を実施する場合には「だれが、いつまでに対応を行うのか」、あわせて確認しておかなければなりません。
■手順3: 変更を実施し、結果の承認を得る
変更にGOサインが出た後、実際の資料の変更を行います。この時、別の変更案件などによって他のメンバーが同じ資料を同時に変更してしまわないよう注意しなければなりません。
簡単な方法としては、資料の一覧表を作成してメンバーで共有できるようにしておき、現在変更中の資料にはそうと分かるようにマークを付けておくことです。
資料の変更が終わったら、その結果について必要な承認を得て変更作業を終えます。
■手順4: 変更した結果を保管し、周知する
変更された資料を古い資料と差し替えて保管します。この時、どの資料が新しいものかメンバー全員が分かるように、最新の資料を保管しておく場所や資料の名前の付け方を決めておくと良いでしょう。
最後に、変更内容を関係者に情報展開・共有し、手続きを完了します。
管理過多にならない考慮が必要
上記で基本手順をご説明しましたが、このようなルールに従って変更を行う資料はあくまで「プロジェクトで共有されているもの」が対象になることに注意して下さい。特定のメンバーが作成中の完成前の資料や、メンバーが個人的に作成し利用している資料などまで管理すると収拾がつきませんので、対象とする資料と、どの段階からこのような手順に従って変更のコントロールを行うかについても、手順と共にルールとして決めておく必要があります。
また、例えば追加のプロジェクト予算が必要になるような大きな変更と、誤字脱字を修正するといった細かな変更を同じルールで扱うと、管理の負荷が非常に大きくなってしまいます。
従って、変更可否の判断や変更結果に対する承認を、「だれにどのような方法で得るか」について、変更による影響度合いに応じて段階別に定義しておき、なるべく効率的に変更対応が行えるようにしておくことが一般的です。
変更をしっかりとコントロールすることは重要なのですが、あまりにも厳密にやり過ぎると、「ちゃんと手続きを踏むと面倒だから勝手に変更しちゃえ!」とか、「手続きが面倒だから間違いを修正せず放置しておこう!」などといった本末転倒な事態が発生しかねません。
変更の管理においては、いかに“メリハリ”のある効率的なルールを組み立てられるか、それがプロジェクトマネジャーの考えどころといえるでしょう。
それでは次回もお楽しみに!