読者のみなさま。こんにちは!
このたび連載を担当させていただくことになりました株式会社アネゴ企画の上田雅美です。
いよいよ4回目の連載となりました。皆さんのお仕事の現場やできごとと共に一緒に考えてゆけるメルマガであったらうれしいです。
コーチングというととかく問題や課題の解決の一種のように見られがちですが(私の思い込みではなければ!)、「支援を目的としたパートナーシップ」のなかでゴールや未来をお互いに共有するプロセスに私はとても意味があると思っていますし大好きな場面のひとつです。これは、個人においても組織においても同じこと。
そして、どうしても二人きりで面接のように話しているイメージが強いと思いますが、そればかりではありません。コーチングは第一回目にもご紹介したとおり、人を育てることが上手だったり、相手の最大限のパフォーマンスを発揮させられることができるような人たちの「やっていること」「大切にしていること」「価値観」を学習できるよう体系化したものです。私はいつも知れば知るほど、自分の親や恩師などのかかわってくれた名コーチのことを思い出します。
コーチングセッションばかりがコーチングではないという一例として、カルロス・ゴーン氏を参考にしてみましょう。
日産CEOにカルロス・ゴーン氏が就任したとき、新聞の一面に「私は日産のコーチです」というフレーズが紹介されました。このフレーズが私に予期させたのは、彼の豊富な経験と知識、そして人脈をもって日産という会社のコーチ役になるのだなと思いました。指導的な局面も多かったようですが、「共に考え、正しい考え方を学ばせる」ことが日産という会社を蘇らせるであろうと確信していらしたのでしょう。「コストカッター」「コストキラー」と呼ばれ、なりものいりで就任となりましたが、ルノーでの経験を活かして素晴らしい実績を残しています。
日本のマネージャーたちがコーチングの場になるととたんに自分の話をしなくなってしまいますが、それは残念でもったいないことです。対する相手によりますが、必要なことは正しく教える必要があります。「やりかた」「考え方」「姿勢」など多岐にわたるはずですが、相手のために(for you)、そして、目的が共有されていればTeachingは大切なCoachingの一部となります。
そして、もうひとつの例。これは私の話ではないのですが、尊敬する先輩の新入社員時代の話です。
出張が多くなかなか話す時間のなかった上司は、いつも夕方に決まって「今日はなんかある?」という電話をかけてきます。いつもの電話で、「僕の机の上に一冊本がある。君に読んで欲しい。僕が大切だと思ったことは赤で線を引いてあるから、君が大切だとおもったことは青で線を引いて返して欲しい。」といわれます。上司の目的を知らないまま本を読み、自分なりに線を引いて返しました。あるときに上司が「なかなか出張が多くて、君たちを指導する時間がなくて申し訳ないと思っている。それでも君たちを育てなくてはいけないと思って思いついた苦肉の策が、本をつかって自分の考え方を伝えられればということで・・・」と聞くことになります。そして、はじめは上司とはいつも違う位置に青い線を引いていることが多かったのだそうですが、時を経て自分が部下を持ったりすると上司の線を引いてあるところに自分の考えが変わっているのだそうです。
私はこのエピソードを聞いたとき、素晴らしい上司に育てられた方だなと羨ましく思いました。そして、こういう関わりも時にはコーチとしての関わり方なのではと思います。
今日は私なりの考えですが、コミュニケーションにとらわれがちなコーチングの世界を一風違うところから考えるために、エピソードをご紹介しながらお伝えしてみました。コーチング研修でならったコーチングの土台があるのでしたら、その土台をベースに自分らしいかかわり方をアレンジされてはいかがでしょうか?そして、時にはこれまで自分を育ててくれた人たちを思い出して、自分のコーチングスタイルを考えることもお勧めです。