前回のメルマガでは、プロジェクトの目的を実施するための施策は複数ある。しかしすべての施策の実施を実現しようとすると、ステークホルダーから見た場合、その実現性に疑問が生じたり、目的の達成に真の合意を得られ難いといった趣旨の内容をお伝えしました。またそのような場合には、すべての施策が中途半端になる可能性があるぐらいであれば、思い切って『施策を1つだけに絞って考える』ことをお勧めしますともお伝えしました。
そもそも「やらなければならない」と思っていることは、本当に「ヤラナケレバナラナイ」ことなのでしょうか?
ひょっとしたら、プロジェクトの目的が明確に定まっていなかったり、その目的の実現方法に不安を抱いている。そのことが原因で、思いがまとまらず、結果、やらなければならない事が複数あると思っているだけかもしれません。
そのような場合に、思い切って目的実現のための施策を1つに絞り込んで考えてみると、次のような効果が生まれます。
ただ現実的には、プロジェクトの目的を達成するための施策を1つだけに絞り込んだ場合は、目的のうち70~80%程度しか実現できないかもしれません。しかし複数の施策を実施しようとしたために、プロジェクトが失敗するかもしれません。その失敗が、企業のビジネスチャンスを逃す機会損失へとつながるかもしれません。そして機械損失は、プロジェクトの予算が超過した金額よりも、場合によっては大きいかもしれません。
そのような状況になるくらいであれば、最初から施策を1つに絞り込むことも、プロジェクトマネジメントとしては大変重要なことであると考えられます。なお施策を1つに絞り込んだ場合でも、他にやらなければならない施策は、段階リリースするなどの計画立案は必要です。
以前、NHKで「プロジェクトX」という番組がありました。その番組は、大きな挫折があり、ある人物のひらめきなどが起因して、結果的には素晴らしい成果を見出すというものでした。番組としては大変面白く、私も興味深く毎週視聴していました。このことをITのプロジェクトに当てはめたとします。そのプロジェクトが、企業にとって、次世代を担うような戦略的なこと、もしくは企業の存続そのものを左右するような重要な案件であれば、多少リスクを伴っても、衆知を集め必ず実現するという不退転の熱意で取り組まなければなりません。しかし多くのITプロジェクトは、企業が行なう日々の業務を足元から支えるような性質のものが多いと認識しています。そのような性質のシステムを構築する場合、プロジェクトX型のプロジェクトでは、リスクが大きすぎて、企業に与える影響が甚大すぎます。
この例は、施策を1つに絞り込むとしても、企業にとってシステムが担う性質により、適切な判断が必要だということをご説明したく挙げました。
以上のような取り組みは、プロジェクトの目的や、それを実現するための施策立案として、BAが大いに活躍する必要がありますし、またその推進役・マネジメント役として、PMの存在が大変重要になります。
(追伸)
先日、運用スペシャリストの方々に対し、運用は超上流の入り口といった趣旨のセミナーにおいて、講演を賜る機会がございました。その中で
といったことをお話しさせていただきました。
当初受講者の方々の反応は冷ややかでしたが、3時間ほどお話しした後は、数人から前向きなご意見を頂戴でき安堵いたしました。
青木 安輝氏が書かれた「解決志向(ソリューションフォーカス)の実践マネジメント」河出書房新社 (2006/2/11)という本があります。この本に5年ほど前に出会ったのですが、人が大きく関わるような課題を解決しようとした場合、問題解決型で根本原因を特定し、その取り組みをするよりも、ありたい目標を設定する。その時に現状の課題は置いておいて、その達成をするための必要な事を洗い出し、その実施に注力した方が良いといった内容であったと記憶しています。なぜならば、根本原因が根深いものであり、かつその解決に困難さが伴う、かつその実現に長い期間を要するとした場合、人のモチベーションは兎角低下し、途中で諦めがちになるとのこと。しかし後者の場合は、現状の課題を直視しないため、常に前向きに取り組めるから、人のモチベーションは低下し難いというものでした。この考え方も、最終目的は1つ。ただその実現方法が異なるだけであり、人のモチベーションを如何に維持するのかという点にフォーカスしています。その本を読んで以来、私が行動する際の大切な考え方の1つにしています。