読者のみなさま。こんにちは!
このたび連載を担当させていただくことになりました株式会社アネゴ企画の上田雅美です。
いよいよ3回目の連載となりましたが、コーチングに対する理解が進みましたでしょうか?
今日はリーダーに対するコーチングについて書いてみたいと思います。
当社は、エグゼクティブに向けたコーチングを事業の多きな柱としており、メインはビジネスの世界ですがさまざまな分野のリーダーに仕事を通してお付き合いをさせていただいております。われわれコーチは守秘義務を守ることがコーチの職業倫理として定められているため、実際どんなことが行われているのかはお伝えすることができませんが、今日は少し現場の話にも触れてみたいと思います。
「自分にコーチングは必要ないと思うけど、モチベーションの低い部下をコーチしてほしい」
「何でも自分で決めているから、コーチングは必要ない。」
昔はコーチングの話をさせていただくと、多くのリーダーからはこのような声を聞いていました。日本人は(特に男性なのでしょうか!?)人に話を聞いてもらうということは、相談をする印象が強くあるからか、「自分には必要ない」と思われることが多いのではないかと分析していました。しかしながら、私の印象では優秀なリーダーこそ自らコーチを必要としていてその関係を理解しているのだと時代が過ぎると共に肌で感じることができるようになってきました。
ここからはリーダーをコーチしたエピソードをお伝えしてみます。
かつて、とある企業の40代の取締役をコーチしていました。
社長であるお父様のお年が70代となり、少しでも早く事業を引き継がせたいというお父様からのリクエストでコーチングがスタートしました。2週間に一度、企業にお伺いしながらコーチングを進めることにしました。はじめのうちはコーチングの時間を作ることさえも難しいぐらい、プレイングマネージャーとしてもお仕事を率先して行っていました。そして、はじめは社長からコーチを「つけられた」ということが気になっていたようで、私にさほどオープンに接していたわけではありませんでした。
とあるセッションで、私がたまたま話の中でかつて中小企業の経営をしていた父のことを話しました。当時父がその会社の役員と社員のまえで大喧嘩をしたことがあり、取引先の社長から怒られたという話だったと思います。その話を聞き終えると、ご自分のことをふりかえって話をしてくださいました。
数日前に会議の席で社長と意見が割れ、ほかの役員の前で大喧嘩になってしまったのだそうです。そして、その場にいたかつての上司よりたしなめられたというものでした。
意見があることは素晴らしいものだけれども、きちんと場を見て自分には大きな責任があることに気づき、自分の影響力を理解してその意見を言ってほしいといわれたのだそうです。そこで、私たちはその状況を一緒に振り返ってみることにしました。
ご自分の意見や立場、社長の想いや考え・・・その場では自分の想いが先走ってしまったようでしたが、社長には自分へ想いが伝わっていないことを感じさせてしまい、その場にいたみなさんには会社に対する不安を感じさせてしまったのだいうことが彼の口から言葉として出てくるようになりました。「今からでもお詫びをしたほうがいいでしょうか?」そうお聞きになったので、「どう受け取るかはみなさんかもしれませんが、自分の中で未完了をそのままにしないほうがいいですね」と話しました。その後お一人お一人に丁寧に話をしに足を運んだのだそうです。
成長しようとしているリーダーたちは、常に客観的に自分を振り返る機会を持っているようです。鏡を見るかのようにフィードバックを得ることにより、自分が今後どんなふうに考えたり振る舞ったりすることが周囲によい影響を与えるのかについて信用できる他者にニュートラルな意見を求めます。また、あらゆる出来事から内省して自分を成長させようとしている共通点があります。一人の時間を意図的に作り、自分自身と戦略会議を行っている人は少なくありません。
影響力を持つと、なかなか利害関係のない意見を得ようと思っても得ることができなくなるものです。ジャック・ウエルチをはじめリーダーとなって影響力を持つ人たちがコーチというパートナーを自分を成長させるための相棒として必要としたという歴史を思うと、とても自然なことではないでしょうか?
「どんなことでもいいから、いつでも自由に意見をいいに来て」と役員室の扉を開けていても、本当に声が集まるかどうかはまた違うものではないでしょうか?