今回のメルマガでは「プロジェクトの目的は、何故ステークホルダー間で共有し難いのは?」についてお伝えします。
プロジェクトの目的がそもそも不明瞭であった場合は、当然のことながらその目的をステークホルダーで共有することは出来ません。しかし仮にその目的が明確であっても、その実現が困難である、もしくは様々なことを実施しなければ達成し得ないとステークホルダーが感じた場合には、モチベーションの問題で、プロジェクトの目的は共有し難くなります。
例を挙げてみます。
あるプロジェクトの目的は「会社の売上を50%増加させること」であり、その実現施策として4項目挙げたとします。
<実現施策>
どの施策も、それぞれ大なり小なり効果的であるとします。よってすべての施策を同時に行なわなければならないと、プロジェクトメンバーは考えました。しかし施策は複数個あり、1つ1つの内容は重たいテーマです。そのため個々の施策を実現するためには、多くの組織を巻き込んだ取組みが必要となります。大企業であれば組織力を使い、比較的容易に達成しうるかもしれません。ところが中小企業では、人財が量・質共に不足しています。よってすべての取り組みを一度に実施することは出来ません。そのような状況を皆が認識すると、「こんなにやるのは現実的ではない。」、「我が社では目標達成は無理だ」などと言った否定的な感情を抱く人が増え、結果、皆がプロジェクトの目的を共有できる状態から遠ざかってゆきます。
確かに一見すると、すべての施策を実施しなければ目的の達成は出来ないと思うかもしれません。しかしすべての施策を中途半端に実施したとしても、その結果も中途半端な結果となります。
であれば、思い切って『施策を1つだけに絞って考える』ことをお勧めします。
1つに絞り込むことで、あれこれ思いをめぐらすことは出来なくなります。
「現実的には、1つだけの施策は無い」と思われるかもしれません。しかし複数の施策を行なうことで、すべての施策が中途半端になるぐらいであれば、もっとも大切な施策を1つだけ確実に実施出来た方が、良い結果を招くかもしれません。
PMは、プロジェクトの目的を共有できない状態に陥らないよう、今回ご紹介した方法論を例えば用い、ステークホルダーをマネジメントする必要があります。また同様な取り組みは、BAが実施しても効果的であると考えます。
では具体的にどのような役割で取り組んで言ったら良いのか?
次回のメルマガで詳しくお伝えします。
(追伸)
「人の話しを良く訊く」と言う意味で、反面教師となる、とあるIT系ベンチャー企業の経営者クラスの方と話しをする機会がありました。話しの流れで、弊社の経営理念である「お客様と共に感動し、喜ぶ!!」についてご意見を伺いました。すると「“クライアントファースト(=お客さま第一)”を信条としており、同様の価値観でお客さまと接している」とのことでした。その方とは1時間ほどお話しをしましたが、話しは全く噛みあいませんでした。
何故か?
それは、私の質問に対する返答を、その方の勝手な解釈にすり替えて答えているためでした。つまりその方は、自社・自身の都合だけでお話しをされていたのです。もしこの方がお客さまに対しても同様に接していたとしたら、とても“クライアントファースト”とは言えません。
しかし実は、自分自身も気が付いていないながらも、犯しているかもしれない行動です。BABOKⓇの知識エリアの1つに、ステークホルダーの要求を訊き出す「引き出し」があります。自分では「引き出し」が出来ていると思っていても、自分の考えを正当化したいだけの、誤った「引き出し」になっている可能性もあります。人は自分自身のことが一番分かっていないと言われます。その意味で、自分の行動を振り返ることができる、良き反面教師でした。