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【第15回】段取りの四:スケジュール表を作成する


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今回は、プロジェクトの“スケジュール表”を作成するというお話です。
材料として使うのは、前回作成した“作業リスト”。このリストで洗いだしたそれぞれの作業を、「誰が、いつからいつまで実施するのか」を計画し、紙に書いたものがスケジュール表です。
メンバーはこのスケジュール表に沿ってプロジェクトの作業を進めることになりますので、ここがしっかりしていないと後で問題が噴出することになってしまいます。慎重に慎重を重ねてスケジュールを組むこと、それはプロジェクトの計画における非常に重要なポイントと言えるのです。

スケジュール表の書き方

普段、皆さんは手帳を使ってご自身のスケジュールを管理されていることと思います。
プロジェクトにおけるスケジュール表もこれと基本は同じですが、複数のメンバーの予定を1枚の紙に書くことになりますので、少々特別な書き方を用います。
とはいうものの、実際のスケジュール表を見れば一目瞭然。早速図1をご覧ください。

図1 スケジュール表の例
hironaka_chart100803_1

このような表し方で作成されたスケジュール表は、“ガントチャート”と呼ばれており(他にも、“バーチャート”や“線表(せんぴょう)”などと呼ばれることもあります)、プロジェクトにおけるスケジュール表の最もオーソドックスな書き方です。

スケジュール表の左側には作業リストが並んでおり、「その作業を誰が実施するのか」という情報と、「いつからいつまで実施するのか」という予定が棒線で書かれています。尚、担当者と棒線は作業リストの最下層のものの右側にだけ書かれていますが、作業リストの上位の階層にあたるもの(例では、「1.設計と製作準備」、「2.屋台の制作」、「2-1.本体」など)は作業の“分類”であり実際の作業があるわけではありませんので、これらの行には担当者と棒線は基本的に不要です。

マイルストーンとは?

すでにお気付きかと思いますが、最初の行に作業リストとは関係ない“マイルストーン”という行を入れてあります。“マイルストーン”とは、もともと1マイル毎に道路に設置された標石のこと(日本で言えば“一里塚”のようなもの)で、そこから転じて「何かの節目」という意味を表す英単語です。

プロジェクトにおけるマイルストーンとはスケジュール上で重要な節目となる日を表しており、「このマイルストーンがずれることになると大きな影響が起こる」というポイントに設定しておきます。
作業が始まった後にはスケジュール表を使ってプロジェクトの進行状況を確認するのですが、このマイルストーンを設定しておくことによって、「このままこの作業が遅れるとマイルストーンに影響が出るぞ、すぐに手を打たなければ!」などのように、深刻な問題につながるスケジュールの遅延を早期に認識することができます。

これは、夏休みの宿題にも似ています。「最初の3日で漢字ドリル」、「次の4日で読書感想文」のようにあらかじめ計画を立てていても、ついつい「夏休みは長い、まだ何とかなるさ!」とズルズル遅れを放置したまま、最後に大慌てとなってしまいます。「1週間後に国語の宿題完了」というマイルストーンを設定し、「漢字ドリルに5日かかってしまった、マイルストーンがあるからこの遊ばずこの2日で読書感想文を終わらせよう!」と、必ずそのポイントを守るよう遅れを取り戻していけば大事に至らなくて済むというわけです。

スケジュールをどのように考えるか

では、スケジュール表を実際にどのように作っていくのか、基本的な手順を見ていきましょう。

(1) まず、縦にマイルストーン用の最初の行とその下の作業リスト、横に時間軸を入れた表を作ります。
(2) 次に、マイルストーンの行にすでに確定しているマイルストーンを配置します。すでに確定しているマイルストーンとは、お客様と前もって約束した納期など、スケジュールを作成するための前提となる期日のことです。
(3) 土日や祝日、夏季休業日など、カレンダーを確認しながらプロジェクトのメンバーが作業を行わない日が分かるようにしておきます(図1の例のように、灰色で塗り潰すケースが一般的です)。
(4) 個々の作業の担当者を決め、必要な時間を見積もって棒線を引きます。
この時、すでに確定しているマイルストーンに作業が収まりきらないような場合は、新たにメンバーを追加して作業を分担し、複数の作業を並行して進めることを検討します。
また、時間の見積もりが難しい作業は、詳しい人や作業をお願いする担当者と相談する、過去の似たようなプロジェクトの事例を参考にするなどして確認します。もしくは、作業リストで洗いだした作業の単位が粗すぎて「何をやるのか」が漠然とし過ぎているのかも知れません。その場合は作業リストを見直し、もう一段細かく作業を分解し直した上で時間を見積もる必要があります。
(5) プロジェクトの重要なポイントとなる節目を決めて、マイルストーンを追加します。
(6) 出来上がったスケジュールに問題がないか、しっかりと確認します。

以上がスケジュール表作成の流れになるのですが、最後の(6)で必ず確認しておきたいことが3点あります。

3つの確認ポイント

まず、作業間の“依存関係”が正しいかを確認してください。依存関係とは、例えば「ある作業が終わっていないと、別のある作業が開始できない」といった関係のことです。図1の例では、「屋台の設計が終わっていないと必要な材料が分からないから、材料の購入ができない」、「材料がないと木材の加工ができない」などといった依存関係があるため、その順序に従って作業期間が配置されていなければなりません。
分かりづらい場合は、図2のように作業間の依存関係を棒線と棒線の間に矢印で書き込むと考えやすくなります。もし矢印が左側に向かって伸びている場合は依存関係が正しくないことになります。

図2 作業間の依存関係を確認する
hironaka_chart100803_2

次のポイントは、「同じ担当者が、同じ期間に複数の作業を行うことになっていないか」ということです。基本的に一人の人間が同時に2つの作業を行うことはできませんから、図3のように担当者毎に「この人はまずこの作業をやって、その後はこの作業で・・・」のようにスケジュールを追いかけ、作業が重なっている部分がないかを確認していきます。

図3 担当者毎に同じ期間に作業が重複していないかを確認する
hironaka_chart100803_3

最後は、スケジュールに“余裕度”があるかという点です。プロジェクトでは何が起こるかわかりませんし、スケジュール表を作成する時に見積もった時間はあくまで予測であり、実際にはそれ以上に手間がかかる場合もあります。そのような場合に、余裕のない“ギチギチ”のスケジュール表だと即座に破綻してしまうことになります。「うん!このスケジュール表なら多少の事が起こっても大丈夫そうだね!」という十分な安心感を持つことができたら、スケジュール表作りを一旦完了としましょう。

それでは、次回もお楽しみに!

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Profileプロフィール

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弘中 伸典
1994年、徳山工業高等専門学校情報電子工学科を卒業。 SIベンダーに入社後、数々のシステム開発の現場で活躍。そこで得た多くの経験に感謝しつつも、IT業界における構造的問題に一石を投じるべく株式会社アイ・ティ・イノベーションに参画。問題の原因は、プロジェクトマネジメントの欠如にあると考え、日々のコンサルティング業務を通じてその必要性を訴え続ける。 専門領域は、プロジェクトマネジメントおよびシステム開発プロセスの標準化、PMOの設置と運営、IT投資マネジメントなど。 責任と誠意を持って問題解決に取り組む姿勢を大切にしている。 PMP(Project Management Professional)資格 保有

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