このメルマガを読んでいただいている人の中にも海外赴任されている方が、いることと思う。日本の中に居ても思うように仕事を進めることが難しいのに、海外で成功するには、大変な努力が必要だと思う。しかし、環境、文化、言語などが違う場所で仕事ができることは、一方で、自分を磨き、新たな発見をするチャンスと考えることもできる。
実は、私、このメルマガをバンガロールのホテルで書いている。今回は、シンガポールに2日、インドを一週間ほど転々としており、ムンバイ、プネ、再びムンバイに戻り、今、バンガロールに居る。バンガロールの訪問目的は、ある日系企業の現地法人の戦略会議に出席するためである。企業の異国での戦略計画にアドバイスすることも緊張するが、一方、インドのいろいろな場所で仕事をしている人と直接、話をする機会でもあるので、私しては、勉強になるし楽しみだ。
海外で仕事をしている人は、一様に行動力があり、明るい。自分の意見を持って仕事をしている。パワーと明るさを感じる。また、インドのそれぞれ担当している場所や仕事について、自分なりの理解をしている。私もインドでの仕事の経験は、5年余りになる。この間のインドの変化は、激しかった。また、同時に、インドに関する理解が、仕事を通じて、徐々に鮮明になってきている。
今回、インドでの訪問において、自分の理解と実際に仕事をしている人の理解を相互にチェックできる機会を得た。お客様が「戦略立案」と言うテーマを通じて、いろいろな意見を出し合う場に立会い、テーマの落とし所をアドバイスすることと、よく会話を聞き込んで、論理性、整合性や裏づけを確認することである。お客様の仕事の中身は、私はその道のプロではないので分からない点が多数あるが、素朴な疑問をぶつけることで成果の質は高まる。親会社は、大きくてもインドの現地法人は、比較すれば規模は小さい。小さい企業だから出来ることも多くある。小さい企業を経営してきた経験から助言できることも多くある。要は、お客様が、気が付かない視点から疑問を投げかけ戦略、戦術の根拠の確かさ考えの深さを見抜く。一日中会議を行うと初対面の方ばかりであるが、異国の地ということもあってすぐ仲良くなれるし、正直にもなれるものだ。戦略会議を開催することで、社員のコミュニケーション場となり、異なる意見を披露しあい合意形成することでチームの結束力が高まる。チームワーク、リーダーシップの養成も目的の一つである。
小さい会社の戦略は、大企業の物とは異なったアプローチが必要だ。方針さえ固まれば、後は、社員力が、成果を決定付けるといってよい。俊敏(アジャイル)に行動することと強靭性(諦めない力)が、成功する条件になる。
マーケットの状況や優れた手法を用いてもっともらしい戦略を立案しても絵に描いた餅になりやすい。分析的な方法を適用(SWOT分析、CSF分析、BSC手法)して、美しい戦略ができても肝心の実行が出来るかどうかが課題になる。小さい組織では、一人一人の人の行動やチームワークの影響がもろに出てくる。また、メンバーの成長や教育の効果、意識の差も大きく現われる。BSCでいう成長と学習の視点が最も重要である。
程々に分析手法で戦略が立ったら、行動計画とメンバーの納得とやる気の醸成に注力しよう。最もやる気を出さなければならないのが、社長である。続いて幹部社員である。そうすれば、社員は、ついてくるだろう。 要は、「高い志」と「行動力」が、成果を生む源泉になる。シンプルな戦略とプロセス思考(帰納法的なアプローチ)で、戦略を実践に移すのが望ましい姿である。戦略を立てたら、すぐに実行に移し、うまくいかないところは、振り返り、改善し、さらに実行する。(「変える力」)プロセスとフィードバックをしながら実行力のある人が、高い成果を生み出す。
大企業は、分析的なアプローチが、好きで、小規模な組織運営をする際に「頭で考え過ぎ、分析ばかりで行動が伴わない」傾向になる。また、中小企業では、行動ばかりが目立ち、「あたまで考える(分析的アプローチ、演繹思考)ことが、不得意で戦略や方針が無い」傾向になっているようだ。 企業に本当に必要なのは、規模や状況に応じた複数のアプローチの組み合わせで物事を進めることである。実際の仕事を進めるは、言うまでも無く人そのものだ。メンバーの納得や合意形成にもっともっと力を使うべきである。強く、柔軟なメンタルモデルを創り上げさえすれば、どんな困難な目標でも超えることが出来るだろう。
日本の経営者、社員に求められるのは、このようなことだ。海外に出て今一度、思い直したところだ。