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【第5回】えっ?そんなの聞いてないよー!


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前回まででプロジェクトマネジメントの全体像がなんとなく掴めたと思いますが、ここで少し目先を変えて「プロジェクトマネジメントと組織の関係」について考えて見たいと思います。
多くのプロジェクト活動は企業や団体と言った組織の中(または複数の組織を跨いだ体制)で進められる訳ですから、個々のプロジェクトのマネジメントと組織としてのマネジメントの関係性を考えておく必要があるのです。

えーと、つまり?

例えばあなたが住宅販売会社「PMホーム株式会社」の営業部員で、「マイホームを建てたい」と言うある顧客からの依頼を担当することになったとしましょう。あなたはこれをプロジェクト活動と捉えますが、同時にこの活動は企業としての組織活動の一環でもあり、あなたは上司に対して活動状況を定期的に報告し、また自分で判断出来ない問題が起こった場合には相談をしなければなりません。一方、もしあなたが上司の立場だった場合には、部下の営業部員達が進める複数のプロジェクト活動をまとめてマネジメントすることになります。
このような場合には、プロジェクト活動とそのマネジメントが、組織活動と組織のマネジメントに「内包された関係性」を持っており、当然のことながらこの2つのマネジメントが相互に連動した動きになっていなければなりません。その連動がうまく機能しなければ、個々のプロジェクトにとってはもちろん、組織としての大きな問題が起こる可能性があるのです。
では、何が必要なのでしょうか。プロジェクトと組織のマネジメントをリンクさせるためには様々な「仕掛け」を用意しなければならないのですが、特に考えるべきポイントは以下の3点です。

  ・ 権限・責任分担の明確化
  ・ 各プロジェクトの状況把握・チェック手段の確立
  ・ プロジェクトマネジメント方法の標準化

権限・責任分担の明確化

組織の中でプロジェクト活動を進める場合、組織の管理者は部下にプロジェクト活動のマネジメントを任せることになります。先のPMホーム(株)では、営業部長が「A君、後輩のB君と一緒にこの案件を進めてくれ!」と命じ、任されたA君は張り切って案件を進めるのですが、そのうち問題が起こることになります。

<ある日のこと>
A: B君、明日本社に行ってこの設計書をチェックしてもらってくれ。
B:明日ですか?でも、私、明日は客先を訪問するよう部長から指示されていますが?
A:えっ?そんなの聞いてないよー。私も明日は会議があるからな・・・。そうだ、C君、代わりに行ってくれないか?

<次の日>
営業部長:おいC君、一緒に営業に行くぞ!・・・あれ、いないな?
A:C君なら本社に行ってもらっていますよ。
営業部長:えっ?そんなの聞いてないよ!勝手に指示されては困るよ!

<その頃C君は・・・>
C:営業部のCですが、この設計書のチェックをお願いします!
本社:どれどれ・・・。おや?こんな案件聞いてないよ?
C:えっ?そうですか。ちょっと確認してみます。ピポパ・・・「Aさん、例の設計書の件、本社では知らないそうですよ?」
A:えっ?部長、本社にはこの案件の承認もらっていないのですか?
営業部長:えっ?君に案件を任せてあるんだから、本社の承認を得るのもA君の仕事だろう?

なんともひどい混乱ぶりですが、皆さんにも似たような経験があるのではないでしょうか。
このような問題が起こるそもそもの原因は、「プロジェクトマネジャーとその上司の間で権限・責任の分担が曖昧」と言うことにあります。その結果、上記の例のように、作業指示の判断が重複したり、逆に必要な判断が漏れたりすることになります。
組織の中でプロジェクトの活動を行う場合、プロジェクトのマネジャーに対して組織の管理者が持っている権限と責任の一部を託すことになる訳ですから、その切り分け・分担がハッキリと定義されていることがまず必要なのです。

プロジェクト活動の状況把握とチェック手段の確立

企業で不祥事が発覚した際、「部下が自分でやったことで、私は知りませんでした」という言い訳を良く聞きますよね。多くの場合は逆効果で、ご存知の通り「えーい、見苦しいぞ!」と反感を買うことになります。そうです、「問題になるような部下の行動を把握・チェックしていなかった」こと自体が組織の管理者としては問題なのです。
組織の中でプロジェクト活動を行う場合、どれだけ多くの役割を部下のプロジェクトのマネジャーに移管したとしても、管理職が管理職であるための役割までをも託すことは出来ません。少なくとも「どのような活動が行われているか」を組織として把握・チェックしなければならず、組織の管理職である以上は自らの責務として役割を持ち続けなければならないのです。
そのためには、プロジェクトの一つ上の階層、すなわち組織として各プロジェクトの活動を全体的・横断的にマネジメントするための手段が確立されていなければならず、例えば各プロジェクトからの状況報告方法、プロジェクトで発生した重大な問題への対処方法、部門の要員や予算を各プロジェクトに割り当て・調整する方法などが組織として整備されている必要があります。

後半に続く・・・

今回は少し堅い内容になってしまいましたが、プロジェクトと組織のマネジメントの関係、および両者を連動さえる方法をイメージ出来たのではないでしょうか。
先に挙げた3つのポイントの内、最後の「プロジェクトマネジメント方法の標準化」ですが、これは組織にとってプロジェクト活動の状況把握とチェック手段を確立するための「前提条件」と言えるものです。また、個々のプロジェクトのマネジメント力を向上するための仕掛けと言うことも出来ます。このポイントについては、次回に詳しく見て行くことにしましょう。

それでは、また!

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弘中 伸典
1994年、徳山工業高等専門学校情報電子工学科を卒業。 SIベンダーに入社後、数々のシステム開発の現場で活躍。そこで得た多くの経験に感謝しつつも、IT業界における構造的問題に一石を投じるべく株式会社アイ・ティ・イノベーションに参画。問題の原因は、プロジェクトマネジメントの欠如にあると考え、日々のコンサルティング業務を通じてその必要性を訴え続ける。 専門領域は、プロジェクトマネジメントおよびシステム開発プロセスの標準化、PMOの設置と運営、IT投資マネジメントなど。 責任と誠意を持って問題解決に取り組む姿勢を大切にしている。 PMP(Project Management Professional)資格 保有

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