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【第4回】紡ぎ出される、PMの横糸(2)


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前回、PMの横糸(プロジェクトマネジメントにおいて考えるべき要素)として基本の4本(品質、コスト、タイム、スコープ)を紹介しましたが、今回はその続きとして残り5本の横糸を考えて見ましょう。

人にまつわるエトセトラ、「人的資源とコミュニケーション」

うーん、いきなり教科書チックな言葉で難しい感じがしてしまいますが、要は、プロジェクト活動に関わる人のこと、さらにその関係者間の情報のやり取りを考えておかないと仕事がうまく行きませんよね!と言うことです。

人的資源の視点から具体的に行うことは、主に活動に必要なメンバーを集め、適材適所を考えて仕事を割り振ることであったりするのですが、実際にはこれがなかなか簡単にはハマりません。多くの場合、高い能力を持ったメンバーを潤沢に揃えた「ドリームチーム」を結成することは困難であり、「Aさんはこの期間しか手が空いていない」、「Bさんはまだ新人で実力が分からない」など様々な制約の中で最適な組み合わせを考える一種のパズル、しかも、どうやっても最後までは完成しないパズルに取り組むことになります。従って、プロジェクトマネジメントではパズルの攻略とあわせて、不足してしまう部分をどう調整・カバーするかについても考えなければなりません。

また、コミュニケーションの視点からは、主に仕事の関係者間での情報伝達の仕組み、つまり伝達ルートやタイミング、方法などを考えます。
「ほう・れん・そう(報告・連絡・相談)」の言葉があるようにコミュニケーションはどんな仕事でも基本であり、その重要性については今更説明の必要はないでしょう。しかし、新たなチャレンジ要素を持った活動であるプロジェクトにおいては、目標の達成に向けた仕事の進み具合や、活動上の課題と言った情報を、高い精度でタイムリーに収集・共有しておく必要があり、通常にも増してしっかりと情報流通の仕組みを考えておくべきです。そのため、9本の横糸の1つとしてコミュニケーションのマネジメントが挙げられているのです。

モヤモヤ君の正式名称、「リスク」と申します

これまで、プロジェクト活動には不確実性が伴い、なんだか「モヤモヤ」がたくさんあるなぁ、との説明をしているのですが、そろそろこのモヤモヤ君を正式な名前、「リスク」と呼んであげることにしましょう。
「リスク」は、「地政学上のリスクをどう認識するか」、「為替リスクをどのようにヘッジするか」など、専門家が登場するようなTV番組で良く聞く言葉ですが、プロジェクトマネジメント的には仕事の中でもっと気楽に使ってあげて下さい。別に、仕事中に「このリスクはハイプライオリティでありプロアクティブなコントロールがマストです!」などと叫んでいると不思議とカッコ良く見える、と言う理由だけではなく、新しいチャレンジ活動では大小様々なリスクを管理しておくことが本当に大切であり、成功確率を高めるために非常に有効であるからです。
プロジェクトマネジメントの中では、「リスク」=「このままでは問題が起こるかもしれないと言う予感」と考えて下さい。単なる予感なので、的中する場合もあればそのまま問題が起こらない場合もあります。例えば、「作った企画書に自信はあるけど、あの上司は厳しいからダメ出しされるかも・・・」との予感があっても、意外に一発OKで「ふぅー、助かったー!」と言うケースもあります。
しかし、もし企画書がNGだった場合には、書き直しのために多くの時間を無駄にしてしまうことになります。予感が的中してしまう前に先手を打っておくこと、例えば「事前に上司と企画書のストーリーをディスカッションしておく」、「途中段階で何度か見せておく」、と言った予防策を講じておけば、予感が現実のもとなる確率を下げたり、被害を軽くしたりすることが出来るハズです。
「そうは言っても目の前の問題で手一杯、先のことまで考える余裕はないよ!」と言われるかも知れません。しかし、だからこそ予感の段階で予防策を講じ、リスクが顕在化して目の前の問題に変わらないよう仕事の進め方を考えなければなりません。
一歩先を考えながら仕事をする、リスクと言う横糸を常に考えながら活動することが成功の秘訣となるのです。

奥は深いがここはあっさり、「調達」

プロジェクトで必要とするモノやサービスを業者から購入する場合、例えば「新商品のパンフレット作成を業者に依頼する」と言った際には、当然ながら発注先の業者を選んだり、契約を結んだりと言った活動が必要になります。これらを調達のマネジメントと呼ぶのですが、多くの大企業で調達部門が独立した組織として存在していることからも分かるように、簡単なようでとても奥が深い世界です。とは言え、すべてのプロジェクト活動で物品やサービスを買ってくる必要がある訳ではありませんし、もしあなたが大きな組織に属しているのであれば、調達部門のサポートを受けることも出来るでしょう。
ここはあっさり、「プロジェクトで業者から何か買う場合には、あなたは調達のマネジメントについても考えなければならない」と言う横糸が1本あることを押さえておいて下さい。

最後の一本は特別な糸、「統合」

いよいよ最後の横糸ですが、この「統合」マネジメントは少々特別な糸で、他の8本の横糸をバランス良くまとめる「軸」の役割を果たす横糸になります。
プロジェクトの目標を検討する際には、「QCDS」の4つの視点(品質、コスト、タイム、スコープ)を中心に考えることになりますが、例えば「高い品質」を目指せば当然その分時間やお金が必要となり、「低コスト」で活動しようとすれば品質目標を下げたりスコープを狭めたりする必要が出てきます。つまり一方立てれば他方が立たずの関係で、通常「トレードオフの関係にある」と言うのですが、これらのバランスを調整した上で適切な目標を決定しなければなりません。
また、活動の途中で「企画書に載せるデータを新たに追加しなければならなくなった」などとスコープが変わるような場合には、スケジュールの見直し(タイムへの影響)やメンバーの強化(人的資源への影響)などの対応を考える必要があり、再度バランスを考えて調整を行わなければなりません。
このように8本の横糸は相互に影響を及ぼし合うため、それらを調和の取れた形に統合して目標達成を図る9本目の横糸を考える必要があるのです。

呪文として覚えておくだけでも効能あります

前回に続き横糸を見て来ましたが、これでプロジェクトマネジメントの全体像がぼんや~りとイメージ出来たのではないでしょうか。縦糸と横糸が交わる所で「具体的にどのようにどうやって管理するか」については今後紹介する予定ですが、まずこの9本の横糸を覚えておき、仕事の節目で「今やっている管理」をこの視点に照らし合わせて確認するだけでも「マネジメントの考慮モレ」を防ぐことが出来るようになります。

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弘中 伸典
1994年、徳山工業高等専門学校情報電子工学科を卒業。 SIベンダーに入社後、数々のシステム開発の現場で活躍。そこで得た多くの経験に感謝しつつも、IT業界における構造的問題に一石を投じるべく株式会社アイ・ティ・イノベーションに参画。問題の原因は、プロジェクトマネジメントの欠如にあると考え、日々のコンサルティング業務を通じてその必要性を訴え続ける。 専門領域は、プロジェクトマネジメントおよびシステム開発プロセスの標準化、PMOの設置と運営、IT投資マネジメントなど。 責任と誠意を持って問題解決に取り組む姿勢を大切にしている。 PMP(Project Management Professional)資格 保有

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