皆さんお待たせしました!いよいよ、今回からプロジェクトマネジメントの具体的な内容に踏み込んで行きたいと思います。
しかし、その前にちょっとだけ「おさらい」しておきましょう。たった5点だけですから、気楽にコーヒーでも飲みながら。
・ プロジェクトとは「ある期間の中で独自の成果を生む活動」であり、多くの仕事はプロジェクトの要素を含んでいる。
・ プロジェクトには「モヤモヤ」がつきものであり、失敗の落とし穴が我々を待ち受けている。プロジェクトマネジメントは、モヤモヤを押さえ込み、プロジェクトを成功に導くためのノウハウである。
・ モヤモヤと戦うための基本動作は、「段取り・確認・振り返り」。要は、ゴールと道筋を設定し、常に現在の位置を確かめながら着実に進めること。
・ プロジェクトの成功確率が上がることは、あなたと、あなたの組織の価値が大きく向上することを意味している。
・ 業界にもよるが、プロジェクトマネジメントの重要性とそのパワーに気付いている人はまだ少数。Web上のあまたのコンテンツの中からこの連載を見つけ出した方は非常にラッキー。あなたと私とプロジェクトマネジメントの運命的な出会いに乾杯!
・・・最後の辺りには一部関係ない話も含まれていますが、気にせず進めましょう!!
プロジェクトマネジメントの全体像
これからプロジェクトマネジメントの考え方を理解するためには、まずその全体的に掴んでおくことが重要になります。
そのために、今回は「何をマネージすれば良いのか?」について考えて見ましょう。
「何をマネージするかって・・・そりゃあプロジェクトでしょ!?」
イヤイヤ、そんな身も蓋もないことを・・・。もちろんマネージの対象はプロジェクトなのですが、ここでは「マネジメント活動において考えるべき要素」について説明したいのです。つまり、基本動作の「段取り・確認・振り返り」を縦糸とすれば、考えるべき要素が横糸となります。縦横が交差し織り成す布地がプロジェクトマネジメントの全体像となる訳です。
基本の横糸は、QCDSの4本
皆さんは「QCD」と言う略語を聞かれたことがありますでしょうか。
この言葉は、製品の良し悪しを判断するための評価軸として使われ、以下の単語の頭文字をつなぎ合わせたものです。
・ Q=Quality(品質)
・ C=Cost(コスト)
・ D=Delivery(納期)
つまり、良い製品は「高品質、低価格、短納期」の3拍子揃っているという意味で、例えば時計であれば「誤差が少なく、低価格で、すぐに手に入る時計」が良い製品と言うことになります。
その「QCD」ですが、近年さらにSが追加され「QCDS」と言う発展形となって広まっています。最後のSにはいくつかのパターンがあり、”Service”や、”Support”の場合もあるのですが、ここでは、
・ S=Scope(範囲)
と覚えておいて下さい。つまり、「誤差が少なく、低価格で、すぐに手に入り、さらに多機能な時計」が良い時計と言う訳です。
さて、この「QCDS」、実は製品を評価する軸としてのみならず、プロジェクトの結果を評価するための軸としても利用することが出来ます。と言うのも、通常プロジェクト活動では「多くの高品質なアウトプットを、低コスト、短期間で生み出す」ことが求められるからです。世の中には、「目的さえ果たせば好きなだけ自由にお金を使っても良い」と言ったプロジェクト(例えば、物好きな大富豪から秘宝探しの依頼を受けると言った)も存在するでしょうが、仕事の中でプロジェクト活動を行う場合にはまずあり得ません。
そして、QCDSでプロジェクトの結果が評価されるのであれば、当然プロジェクトマネジメントにおいてもQCDSを管理の基本軸として考えれば良いことになります。
えー、ここで注意事項を2つ・・・
QCDSを管理の基本軸として考えれば良いと説明しましたが、2つの注意事項があります。
1点目はDについて。プロジェクトの結果を評価するときには”Delivery”、つまり「納期」という言葉で良いのですが、プロジェクトマネジメントでは結果にたどり着くまでの過程、つまり活動のスケジュール全体を管理することになります。従って、プロジェクトマネジメントでは”Time”、つまり「時間」を管理すると言う表現になります(だからと言って、「QCTS」と表現されるケースはあまりないのですが)。
注意事項の2点目はSです。実は、プロジェクトマネジメントにおいて”Scope”は2つの意味を持っています。1つは「プロダクトスコープ」で、プロジェクトのアウトプットが保有している範囲(つまり、出来上がる「もの」)を指しています。もう1つは「プロジェクトスコープ」で、こちらはプロジェクトで実施する作業範囲(つまり、やる「こと」)を指します。例えば、「企画書を作成する」プロジェクトでは、企画書に含まれる項目や、どのような資料を添付するかが「プロダクトスコープ」であり、データを集める、企画内容を打ち合わせする、資料を作成する、レビューして修正すると言った作業の範囲が「プロジェクトスコープ」となります。
「プロダクトスコープ」と「プロジェクトスコープ」は密接な関係にあり、簡単に言えば、「プロダクトスコープ」を実現するために必要となる作業が「プロジェクトスコープ」と言うことになります。
ちょっと難しいのですが、これからプロジェクトマネジメントの考え方をしっかり理解するために、その2つの区別があると言うことを頭の片隅に置いておいて下さい。
えっ!横糸あと5本もあるの?
ここまでで、プロジェクトマネジメントにおいて考えるべき要素4つを見てきました。
・ 品質
・ コスト
・ タイム(時間、簡単に言えばスケジュール)
・ スコープ(出来上がる「もの」の範囲と、やる「こと」の範囲)
これが基本となるのですが、複雑で難しいプロジェクト活動をマネジメントするためには、さらに5つの横糸を通しておく必要があります。
・ 人的資源
・ コミュニケーション
・ リスク
・ 調達
・ 統合
これらの要素については、次回紹介して行きたいと思います。少々ややこしい話も出て来るのですが、バーボン片手に「フッ、それ程までに重要なのさ、リスク・マネジメントってやつは・・・」なんて遠い目で語れるようになる、プロジェクトマネジメントの「カッコイイ」部分でもあります。是非ご期待下さい!