本物の選別が始まっている。
今まで好況の時代には、目立たなかった差が不況期には一気に現われる。顧客に提供している物が、製品であれサービスであれ関係ない。顧客の中でどれほど大切な位置づけであるか重要なのだ。顧客の中でナンバーワンであり、無くてはならない機能、サービスである場合には、生き残ることができるし、この際、顧客内のシェアーを伸ばすことも可能である。顧客が、一旦、製品の購入やサービスの提供を止める場合もあるだろう。義理や惰性で導入してきた製品、サービスと本物が入れ替わるチャンスでもあるのだ。
本物の価値が問われる時期だと考えたほうが良い。既存の製品とサービスを提供者は、見直し、今後の戦術を明確にすることこそが重要だ。不況時には、新規事業や大胆な(一か八かの)戦略の実行は、危険極まりない。むしろ、既存事業の品質、価格、サービスの在り方を顧客に尋ね、改善するほうが良い。既存事業の応用問題である隣の事業や新たに工夫されたサービスは、ニーズに合えば、受け入れられるだろう。
いずれにしても既存の顧客への深耕をいかに行うかが課題であるが、顧客に対する面談の頻度を上げ、サービス品質を高めることが、最大の防衛策になる。要は、社員が、顧客に対して心を込めて出来ることを見つけ出し、小さい改善や工夫の積み重ねを、全社を挙げて実行する。地味な努力ができることが、実力そのものだ。また、拡大する力のある会社は、好況時に業績を確かに伸ばすが、適時に小さくする力(会社の収縮力)も大切な能力だ。この能力がないとその会社は、いつか滅びることになる。むしろ収縮力を発揮する方が難しい。
一部の企業は、不況になると受注できそうも無い顧客へ訪問しなくなる。それどころか自分の利益中心の行動を取り始める。企業体質の悪い面が露出し、化けの皮がはがれたのだ。私は、むしろ、すぐに仕事にならない顧客への訪問を積極的に行っている。このような時期こそ、キーマンといろいろな話が出来るし、次の時代の作戦のヒントが得られるのだ。実は、今、顧客を訪問するということは、次の時代の準備をすることになると考えている。お客様のことを真摯に考えられる人格が必要だ。お互いに苦しい時期に相手のことを考えられる社員がいる会社が本物なのだ。苦しい時期に明るく振舞える社員がいる会社がすばらしい。
本物の製品、本物のサービス、本物の社員を明確にしよう。
不況時の方針の決定は、経営者のもっとも大事な仕事だと思う。