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役者を変えろ


今、私は、シンガポールに滞在している。日本から遥か南の戦略的でエネルギッシュな島で私は、日本とインドとのビジネスの将来の見通しを立てている。

不況の中、ショッピングモールに行くと、セールの看板が多めに見えているが、シンガポール人の購買意欲は、衰えている様子はなく活気がある。日本でも外人がショッピングモールへ行けば同様に感じるかもしれない。ここシンガポールから日本を見ると、日本が単独で存在しているわけではなくアジアの北東の端で、未だにとてつもない経済力を維持しながら、頭を痛めている日本の姿が見え、中国、韓国、台湾などと一緒になって見える。シンガポールは、中東やオーストラリアなどの南半球からも比較的近く、休暇中のツアー客に多く出会う。まさに人種の坩堝のような場所だ。昨年からの金融危機の影響で欧米人の姿が、少なくなったようだ。東京でも欧米人は確実に減っている。

欧米型のビジネスは、好機と見たらリスクテイクをして新しいマーケットに躊躇なく投資しすばやく展開を行っていく。この方法が良いか悪いかを議論する気はないが、そのようなやり方だと不況になると、いち早く損切りをしてそのマーケットから逃げ出すことになる。顧客側からビジネスを見た場合、十分な顧客満足を得られるのだろうか?私は、非常に疑問に思っている。これからは、真に顧客の満足が得られる新たな方法が求められる。

シンガポール現地に本社を置くある友人の社長に話を聞いたのであるが、今のシンガポールは、金融危機の影響で大変な不況下にあり、金融機関がかなり撤退をし、製造業も撤退を開始しているそうだ。しかし、将来性のあるインド向けのビジネス拡大の話は、確実に多くなってきているそうだ。また、良い人材が流動化しており、人材の面では、獲得するチャンス到来であるようだ。

私は、今までの欧米型のビジネスフレームワークが終焉し、市場は、次のモデルを求めており、新たなビジネスの枠組みを構築する時期が来ていると確信している。シンガポールという国は、マーケットの役者が変わることを見越して、長期的に国力を増強する戦略を国を挙げた一貫した方針で進めている。アジアのハブ(ネットワークの中核)としての絶好の位置づけを生かし、アジアのあらゆる国々とビジネスを行うと共に、様々な世界の有能な人材を継続的に獲得しようとしている。また、国の発展には人材が重要で教育立国としての明確な方針を持っている。

これに対して、日本を見てみると経済力が大きすぎるのか複雑な仕組みが邪魔になって動けないのか、なかなか明確な世界戦略が見えてこないばかりか、スピード感もまったくない。日本の政治家のグローバル感覚は最悪である。自分の表ばかり気にして、日本の将来を真剣に推進しようとしている人はほとんど見かけない。グローバル企業で頑張っている人が頼りだ。もう少し、グローバルビジネスに対する国の支援があれば少しはましになるだろう。若い人たちが、将来に向けてグローバルに活躍できる様々な機会を社会がつくっていかなくてはならない。日本のビッグピクチャを描けるような人材をもっと多く生み出せるはずである。

直近の課題として、日本が生き残るために注目すべきは、インドと中国に代表されるアジアビジネスをもっともっと伸張させることが、まず必要だと思う。インドと中国は、ごく近い将来、巨大なマーケット(内需)に成長することは確実だ。日本は、シンガポールからインドを含めた様々なアジア、中東、オセアニアへサービスを実現する新しい枠組みを創らなければならない。今までの主役から新しい役者へ変化が様々な場所で起こっている。日本が、新しい主役になれるかどうかが、将来の日本に大きく影響すると考えられる。そのために将来を託すことができる人材の育成を急がなければならず、いろいろとやるべきことがありそうだ。

要は、国と国の間で主役が入れ替わる時期が来ているし、日本の会社の中でも今までの主役から次の世代への転換を図らなければならない。具体的に的確さとスピード感を持って、実現できる企業が今後生き残れる企業になるだろう。日本はすばらしい国だし、国の中だけでもそれなりのビジネスも成り立つだろう。しかし、日本の外の国から日本への期待を考えることも別の視点として重要だと思う。外の目で今何が必要なのかを考えることだ。すべての役者を変えて切り替える時期が来た。

 このエッセイは、シンガポールのホテルで書いている。

私は、つい2日前には、インドのムンバイ、プネにいた。自分の目で見て確かめること自分の肌で感じることを大切にしたい。あさってにはまた、インドのプネに向かう予定だ。

今シンガポールで実感していることを伝えることにした。

P.S
ラッフルズホテルにあるLONG BARにひとりで行ってみると良い。
ラッフルズホテルは、東洋と西洋の良さを分かち持つトラディッショナルな雰囲気があるホテルである。30分は、何も考えずリラックスを手に入れることをおすすめする。

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林衛
IT戦略とプロジェクトマネジメントを中核にITビジネスのコンサルティングを行うアイ・ティ・イノベーションのファウンダーであり社長を務める。◆コンサルの実践を積みながら英米のIT企業とかかわる中で先端的な方法論と技術を学び、コンサルティング力に磨きをかけてきた。技術にも人間にも精通するPM界のグランドマスター的存在。◆Modusアカデミー講師。ドラッカー学会会員、名古屋工業大学・東京工業大学などの大学の講師を勤める。

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