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インドに学ぶ


インド訪問は、今回で7回目になった。同じ場所に、同じ目的意識で訪問しているといろいろな変化が見えてくる。

私は、2年前からインドのプネで日本人のIT技術者にソフトウェアエンジニアリングを教えるビジネスを展開している。昨年は、さまざまな企業から30数名の日本人技術者の方に、2ヶ月から4ヶ月インドで集中合宿研修を受けていただいた。インドでの研修について個人的な反応はさまざまであるが、受講生が日本では考えられない様ないろいろな刺激を受けたことだけは確かだ。ITスキルの向上だけではなく、文化的な交流や語学を通してグローバルに活躍できる人材を育成することを狙いとしている。 
2007年に入り受講した技術者が、研修での経験を生かした仕事に就いてきている。オフショア開発の部門の責任者になった人もいるし、再び同じ職場に戻り学んだソフトウェアエンジニアリングの技術を元に、現場に適用を行っている人もいる。また、ある人は、学んだ語学などを使って海外に導入展開しているソフトウェアの保守と改良のマネジメントの仕事を行っている。受講者が、誇りを持ち自立して実務で活躍することを心から願っている。
 
ここ数年の間にインドは、かなり変化している。見た目のインドの変化は、すごいものだ。特にこの2年間にプネの町は、様変わりした。ホテルや一軒しかなかったデパートが、次々と数件開店したし、インド最大級のコンベンションセンターも建設中である。また、道路を立体交差にしたり整備拡張のための工事は、恒常的に実施している。数年後には、今とはまったく変わった町になるだろう。走っている車は、自転車やバイク、オート力車に加えて、新しい乗用車がすごい勢いで増えてきている。相変わらずなのは、汚いバス、トラックは、壊れて動かなくなるまで使うようだ。需要の伸びに電力の供給が追いつかないため、毎日停電するのも改善されていない。路上にいる、牛、ヤギ、犬などは、いくらか減ったように感じる。どこへ行ってしまったのだろう。ビジネスが活況なために、常にホテルは満室状態である。価格は、ここ2年間で約50%上がっている。物価も高騰しているが、ことIT技術者については、引く手数多である。とにかく表層で見るインドの変化は、激しい。

今回もまた、CDAC(インドの政府系IT機関でITの大学院レベルの専門教育を実施している。)を訪問し、4人のインド人のITエンジニアであるCDACでの受講生に話を聞いた。彼らは、数倍の入学試験を合格したあと6ヶ月で2年分の集中IT専門教育を受ける。終了後には、一流企業に高給で就職ができる。

何が、日本のエンジニアと違うのだろうか。そもそも、かなり優秀な人が、ITの仕事に従事していることは確かであるが、大きく違うのは、次の3点であると私は思う。

  1. わかりやすい目標を持っている。

    「ITの一流企業に就職し、将来は、社長になりたい。」
    「インテルに入社して、VLSIの設計をしたい。」
    4人の技術者は、成功がイメージしやすい、わかりやすい目標を持っている。

  2. 夢に向かって明るく、前向きで、実行力(やり遂げる力)がある。

    土日も休みなしで、一日15,6時間勉強をしているにもかかわらず、強い意志、粘り強さ、明るさをもっている。将来が、約束された環境もあるし、他の職業と比べて明らかに収入が高く、気持ちを前向きに保てるのだと思う。明るさを感じるのは、夢があることとできる限りの自分の力を出して勉強をやっているという誇りのようなものがあるからだ。

    ある女性エンジニアが話してくれた。夢があるので、6ヶ月間土日の休み無しで1日十数時間の勉強は、苦にならないと言っている。このプログラムの後半の5ヶ月目、6ヶ月目は、実際のプロジェクトに近い課題を学ぶ。本当に仕事に就いたとき、メンタル面で耐えられるように、きつい時間や期限が厳しい環境で訓練するようだ。ITのスキルだけではなく、メンタルの部分も同時に鍛える。インド人の技術者が、他の国の技術者と違う点は、知識や技能を持っている人が尊敬される、インドの文化から来ていると私は考えている。金も重要であるが、なりたい自分の職業観をしっかりと持っているように思う。また、日本の成功した技術には、強い関心を示し、尊敬もしていることには驚いてしまう。そんな若者の前で、私は恥ずかしくなってしまうのだ。嘗ての日本人は同じような文化を持っていたではないか!


  3. 最初から基本であり本筋のソフトウェアエンジニアリングをしっかりと学んでいる。

    最初から一級建築士(建築の世界に例えれば)になるための基礎理論、エンジニアリング手法、ある程度のヒューマンスキル、マネジメントを学んでいることが、日本の技術者とはまったく違う。日本のエンジニアには、最低限の基礎となるエンジニアリングを当たり前に学べる動機付けと環境が必要だ。ここから変えなければならないが、この事実を認識しているCIO、ITマネジャの数は少なく、日々の仕事の消化をするためにスキルの満たされていないメンバーとともに、企業の目標を達成しなければならないのが実情だろう。基本が身についていないために、同じ失敗も繰り返すし、応用問題も解けない筈だ。

3の学ぶ内容を改善することは、すぐ着手すべき課題であるが、そう簡単ではない。更なる問題は、1,2「わかりやすくシンプルな目標を持つことと、明るく前向きな姿勢で夢を持って仕事をすること」である。
これらは、日本の国家的な問題であり、企業の経営者の課題でもある。
今真剣に取り組まなければ、将来大変な事になると筆者は、考える。

ここ2,3年の私の活動指針は、「明るく、元気な、IT組織を創造する」であるが、あらためてインドで日本のIT組織の課題を確信できた。日本の本来の文化は、緻密で努力家で、粘り強いものではなかったか!日本人が継続的に持っている価値観を取り戻せと、インドの若い技術者が教えてくれているではないか!

日本人の本来どおりの方法で普通に行えばうまくいくと思う。

明日から、明るく、元気な組織創りに取り組もう!!!

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林衛
IT戦略とプロジェクトマネジメントを中核にITビジネスのコンサルティングを行うアイ・ティ・イノベーションのファウンダーであり社長を務める。◆コンサルの実践を積みながら英米のIT企業とかかわる中で先端的な方法論と技術を学び、コンサルティング力に磨きをかけてきた。技術にも人間にも精通するPM界のグランドマスター的存在。◆Modusアカデミー講師。ドラッカー学会会員、名古屋工業大学・東京工業大学などの大学の講師を勤める。

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