朝一で、メールの確認と返信をしながらインターネットのニュースを見ていたら「となりの達人」という記事が目に留まり熟読し感動してしまった。
http://www.mainichi-msn.co.jp/keizai/wadai/tatujin/news/20060831ddm008020090000c.html
新幹線のカリスマ販売員 斎藤泉さんの話である。(今年の8月に掲載された記事)
斎藤さんは、「いわゆるカリスマ販売員」と言われ、山形新幹線の車内販売で驚異的な売り上げ記録を持つ女性である。一往復7時間の間に平均的な販売員の売り上げが8万円程度であるのに、斎藤さんの記録は、30万円以上だそうだ。同様の条件でなぜ、このような結果になるのか不思議である。
所属する日本レストランエンタプライズの荻野洋社長からは「仕事に対する厳しさと向上心、サービスに対する哲学は経営者そのもの」と評価されている。
また、一流企業もサービス業の講師として斎藤さんを招いているそうだ。
私なりに斎藤さんの成功要因を分析してみた。
何よりも増して、彼女の仕事に関する考え方が、健全でお客様のことを常に考えていることが、すばらしい。
「丁寧なサービスを提供することで、お客様の旅の楽しい思い出をひとつ付け加えられたとしたらどんなに素晴らしいでしょうか。」と言っている斎藤さんの言葉は、素晴らしい。
皆さんは、ワゴンが何キロあるかご存知でしょうか?
120キロだそうです。120キロのワゴンを揺れる車両の中で押して、異なる車両を何往復することが、どの様な仕事か分かりますよね。その仕事を笑顔でお客様のことを気遣いながらできることだけでもすごいと素直に思います。
私は、この記事を読む直前に、12月5日に実施予定のITIフォーラム(弊社の年に一回の重要イベント)での上田惇生先生との対談の準備のために上田先生の著書「ドラッカー入門」を読んでいた。
ドラッカーは、「人、社会、マネジメントは、すべてつながっている」と言っているが、まさに、斎藤さんの新幹線内での販売の世界で、ドラッカーの述べている経済社会は、論理で成り立っているのではなく、生態学的な繋がりのある生命のようなものに近い存在であることを実感できた。
新幹線の中という条件での販売は、一見、制約や努力で克服しにくいし、販売は、ルール化、マニュアル化されており、販売員による大きな差は出にくいように感じる。
また、車両の中での商品販売は、短い乗車期間でもあり、一度、弁当やビールを購入したお客様が、もう一度その場で商品を買う確率は、論理的に考えれば少ない。同じ販売員が、別の機会に同じお客様に出会う確率もかなり低いだろう。しかし、笑顔を絶やさず、お客様へ気遣いを行なってお客様の思い出作りのためにワゴンを走らす。これは、無駄なことだろうか?我々は、理屈よりも前に、感情のある人間であることを忘れてはならない。斎藤さんのようにお客様のことを思い努力している人が報われる世界なのだと私は考えたい。
心の美しさ、誇りある職業観、向上心、精神の健全さ、素直さ、少しだけの気遣いの差が、業績の差に大きく反映していることは、事実だ。
私は、あらためて経済活動のことを考えると、心の世界で繋がっているとしか思えない。やはり、ドラッカーは、偉大だ。
そして、私は、山形新幹線の斎藤泉さんは本物、一流のプロフェッショナルだと思う。
心から頑張ってくださいとエールを送ろう。