ITアーキテクトとITスペシャリストの違いは、何であろうか?
この3点だと、私は考えている。
アーキテクトにとって新たなものを想像する心や気持ちは、とても大切だ。
理論や過去の経験を新たなデザインと工法の開発や改善に生かし、新しいアーキテクチャにチャレンジする人がいなければ、ITの世界の発展は無いだろう。新たな仕事に取り組む場合に6,7割しか成功への材料が無い場合がしばしばある。ITの世界に限らず優れた業績を残した技術者は、必ず、自分を信じてチャレンジしている。
鉄道、航空機、橋、建物、宇宙開発など様々な分野があるが、想像性と勇気が無ければ、成功には到達できないだろう。ぎりぎりの判断、決断の際に本物の技術者かどうかが分かる。
次に、多くの専門家のベクトルをひとつにするリーダーシップもアーキテクトにとって重要である。複雑で難易度の高いシステムを構築する場合、様々な領域の専門家の意見を纏め上げ、高い目標に向かわせることは、並大抵のことではない。中心となる人の目標に対する熱意としぶとさ、成功を信じる心、人格に周りの人が共鳴して、高い成果が得られることになる。一山超えるとか最後の頑張りなど理論ではない部分が実は成功を支えていることを忘れてはいけない。リーダーとしての人間性は、ITアーキテクトの重要要素である。
最後に、成功を保証するデザインと工法であるが、言い換えれば、体系的な開発方法論をマスターしていることが、必要な条件である。どんなにITアーキテクトの心があり、リーダーシップを持っていたとしても、複雑で難易度が高いシステムの「作り方」「やり方」の原理原則と実施した経験が無ければ目標に到達できないことは、当たり前のことである。小船を作ったことがあるからといって戦艦やタンカー、大型客船を作れないことは、誰でもわかるだろう。同様に、ちょっとしたシステムと工期に3年もかかるようなシステムは、そもそも開発への「アプローチ」「やり方」が違う。
理論と実践がITアーキテクトの前提になる。
ITアーキテクトになるには、最低10年程度の経験と実践が必要になるが、やりがいのある誇りの持てる仕事である。IT業界が、本物の業界に発展するためには、これから2,3年の内に、アーキテクトの職業観を確立し、多くのIT関係者が目指すべき道を作る必要がある。
プロマネ、アナリスト、ITアーキテクト、それぞれの人が協調して、素晴らしいシステムを次々と生み出す世界に変えていくことが筆者の目標である。