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当事者意識が欠けている


最近いろいろなIT企業やIT部門で、改革の話が盛んになってきている。
大変結構なことだ。

当社はIT組織の改革をメインの仕事としている。
最初からIT戦略立案、教育、プロセスの改善、プロジェクトマネジメント改革などの軸足を持って、お客様が当社に仕事の依頼をすることも多いが、そのまま、改革プログラムを実施するとうまくいかないことがよくある。その理由は、リーダーである依頼者は問題意識があり、組織の問題課題がよく見えているが、その他の人は依頼内容に対して疑っていたり、別のことが課題であると考えていたりする。つまり、依頼することが問題であるとなんとなくは考えているが、納得していないということである。腹落ちしていないとも言う。このままでは危険だ。

組織を変革する場合、物事がよく見えていて熱意のあるリーダーの存在は不可欠であるが、他のリーダークラスの全員が納得してから開始すべきである。

人が何かを納得するためには、対象となる事象に関心があるかどうかが出発点である。次に、問題意識を持って考えられるかどうかである。問題意識を持って深く考えた結果、真の問題が定義できる。真の問題を確信し、腹落ちして、定義して、初めて、問題解決のアプローチが可能になる。組織のメンタルモデルの構築は、成功へのキーファクターである。

問題意識と同様に重要なことは「当事者意識」である。私はこれまでに数多くのITマネジャたちと問題に関する討議を行い、問題に関するアプローチを考察してきた。

はっきり言って駄目なリーダーには「当事者意識」というものが無い。当事者意識の無い人の発言は軽いし、べき論、空論、実現できない理想論になっている。なぜならば問題はある程度捉えているが、自分を問題領域の外に置いている。このことは人の癖になっていて、悪い形でその人に定着しているので、よほどのことが無い限り、直るということは無い。むしろ攻撃や反論に転じることもある。自分が当事者ではないならば何でもいい加減なことがいえる。自分を問題の外に置いて会社が悪い、組織が悪い、社会が悪いと延々と言ってのける。
 
一見些細と思われる問題でも「当事者意識」を持って捉えてみると、本質が見えてくるし詳細も理解できる。そのように問題を定義したならば、真剣に問題と原因を追及することができ、有効な解決策を生み出すことができるだろう。

「当事者意識」とは、リーダーが基本的に備えるべき問題の置き方である。

残念ながらリーダーのみならず、トップ層まで、この件については充分とは言えない人が見受けられる。
発言の内容を一分聞けば、私たちは当事者意識のある人と無い人の差が分かる。
「当事者意識」を強く持った組織は必ず改革が進むし、トップから担当者まで、どのような階層でも真剣で「現場力」のある組織ができるだろう。

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林衛
IT戦略とプロジェクトマネジメントを中核にITビジネスのコンサルティングを行うアイ・ティ・イノベーションのファウンダーであり社長を務める。◆コンサルの実践を積みながら英米のIT企業とかかわる中で先端的な方法論と技術を学び、コンサルティング力に磨きをかけてきた。技術にも人間にも精通するPM界のグランドマスター的存在。◆Modusアカデミー講師。ドラッカー学会会員、名古屋工業大学・東京工業大学などの大学の講師を勤める。

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