今回は、プロジェクトが、うまくいかない理由を考察してみたい。世界中で、日本中で、様々なITプロジェクトが、実施されその中で多くの問題プロジェクトが、生み出されています。これは、事実であり、一向に改善する気配がありません。なぜでしょうか。多くの人々は、問題に直面して初めて考えます。ここでは、日本におけるITプロジェクトに限って本質的な原因を追求してみましょう。
(1)教育
戦後50年以上に渡って、受身で知識と記憶の教育を行ってきたためリーダーシップを取り、問題解決を行うことができる人は、稀です。私は、いままで1000人以上のITのマネジャ、リーダーの方々に対してIT戦略、プロジェクトマネジメント、開発方法論の教育を実施してきましたが、多くの人が、主体的に考えることを避け、答えを求める傾向になります。向上心、積極性、主体性をどのように醸成するかがこれからの教育の目標になるでしょう。
(2)日本のカルチャー
曖昧さとあうんの文化は、そもそも目的指向のプロジェクト活動に向いていないと言えます。プロジェクトは、西洋文化の象徴であります。日本の伝統は、世界的に見ても素晴らしいものです。”美”や”礼儀”などに関する「静」の文化はまた奥ゆかしく、西洋こそがこの文化の存在意義を理解する日が必ず到来するでしょう。カルチャーが、プロジェクト活動に影響を与えていることは確かな話でしょう。ビジネス活動やプロジェクト活動の本質的な理解がなされていないことが問題です。静の必要性と動の必要性の両方を理解し、必要な行動に反映することが欠けています。両方の使い分けが、良好なプロジェクト運営を実現します。
(3)プロジェクトの基本的な理解
プロジェクトとは何かということについて、十人十色の理解があり、多くの人は、間違った理解をしています。プロジェクトとは、独自の価値創造のための有期的な活動であり、以下のような条件が整っていることです。・目的と範囲が明確に定義されている・定量化・定性化された達成目標(利益目標)がある・成果物が明確に定義されている・開始日と終了日が示されている(定義された時間枠)・資源(人、物、金)がプロジェクトチームに委ねられている・プロジェクトチームには明確な役割およびタスクが、存在する・権限を委譲されたプロジェクトマネジャが、指揮を行うこれらの共通認識の上に有効な活動が、実施されます。
(4)経営者の認識
経営者のお任せ、よきにはからえ文化は、まともなプロジェクト活動を崩壊に導くことになります。経営者は、いままで以上にプロジェクト活動に主体的に関り、経営上のポジショニングを明確にするべきであると考えています。また、戦略について、プロジェクトについて勉強することが、肝心です。経営者がプロジェクトに関する正しい知識が無いために、様々な問題が発生しています。例えば、責任管理体制と運営がうまく機能しません。経営組織そのものが複数のプロジェクト化へ変貌して行っています。経営の良し悪しは、プロジェクト運営の良し悪しです。
(5)もの作りの文化
日本人は、もの作りが、好きです。日本は、もの作りを中心としていろいろな面で発展してきました。ITプロジェクトについていえば、なかなか見える形になりにくいものです。日本人は、ものを作ることは得意だけれども、組織を整えたり、マネジメントすることは、苦手でしょう。目に見えないものに対する価値観の相違が、プロジェクトで必要な活動を妨げています。見えないものを誰にでも分かる形で”見える化”することが、成功させる方法のひとつです。ビジョン、構想、企画、計画を目に見える形にすることからから始めましょう。
(6)マネジメントプロセスが、無い。
ITプロジェクトで言うマネジメントプロセスの代表格は、プロジェクトマネジメント・プロセスです。多くの企業で、ここ数年間にプロジェクトマネジメントに対する取り組みが始まっていますが、有効な標準プロセスとして適用している例は極めて少ないのです。これでは、プロジェクトマネジメントは、改革できる筈がありません。たたき台になるシンプルなプロセスの定義と適用から始めましょう。これが、IT組織改善のきっかけとなります。
(7)リスクマネジメント
リスクに関する認識が希薄で、問題を先送りすることが横行しています。プロジェクトの開始時点で潜在するリスクを洗い出し、主要なプロジェクトメンバーの間で認識を合わせることが、プロジェクト計画の第一条件です。多くのプロジェクトでは、これを怠り、工夫の無い希望的なプロジェクト計画を、リスクに対する対応策をとらないまま実施することになり、やがて、潜在するリスクは、顕在化します。この段階になって初めて対策を開始します。
成功するプロジェクトは、2つの点が、違います。
<高いチーム力>
一つは、チームの意識が統一され強力なリーダーシップでまとまりがあります。つまり、リーダー、各メンバー間に意識的な齟齬が無く、目標に向かっています。
<正しい方法論>
もう一つは、当初からリスク対策が講じられた工夫されたプロセスで、計画と体制が、明示されています。
<第4回につづく>