日本オラクル株式会社様のご依頼により、SOA(Service Oriented Architecture)方法論の開発支援をいたしました。
この案件のご依頼の背景や、実際の取り組みを振り返りながら、日本オラクル株式会社様のご担当者お二人に、今回の成果や今後の課題について率直なご意見をいただきました。(一問一答はお二人のコメントをもとに編集したものです)
この事例紹介は2006年に取材したものです。
社名、人物の肩書などは取材当時のものです
お客様の課題 | SOA市場をつくるためベンダーに依存せずに、実現性のある方法論を開発する必要性が生じてきた。 |
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当社支援内容 | 当社が今まで培ってきたDOAのノウハウをベースにSOA開発方法論のお手伝いをしました。 |
解決策 | 1)DOAベースの、SOA方法論を開発 2)現場の技術者にも理科されやすく、実現性のあることが特徴 |
日本オラクル株式会社には、テクノロジーコンサルティングと、アプリケーションコンサルティング(旧EBS)の2つの部門がある。今回の案件をご依頼されたテクノロジーコンサルティング本部は、DataBase Core、Fusion Middleware、Tech27 Account、Solution、BI、Strategic Projectのチームで構成される。内、DataBase Core、Fusion Middlewareは、いわゆるプロダクト・コンサルと呼ばれるチームである。
DataBase Coreは、主に設計、開発、運用においてのデータベースを取り巻く環境であり、データベースと開発、データベースと運用の間を取り持つコンサルティングサービスを提供している。Fusion Middlewareは、アプリケーションサーバの製品を取り巻く環境、設計、開発、運用などの製品コンサル全般を担当している。
実はオラクルは去年から、改めてアプリケーションサーバの市場展開をすることになりました。オラクルのデータベース・ベンダーとしての活動は、認識されていると思うのですが、アプリケーションサーバについてはそうとはいえません。それに対して、ちょうどSOAという追い風が吹いていて、その追い風をきちんと捉えようというのが、当社がSOAに取り組んできた背景にあります。一言で言えば、そこに「SOAという市場を作る使命」をオラクルが感じたからといえましょう。
当社が現在市場に展開しているのは、単純にアプリケーションサーバというよりも、いろいろな製品の集合であり、 Fusion Middlewareという名前が示すように、そのひとつ上のレイヤーつまり、ミドルウェアです。それは、Fusion Middleware、EBS等の基盤にもなりますし、これまでオラクルのデータベースがそうであったように、企業の非常にミッションクリティカルなところに使っていただくための基盤として本腰を入れていきます、というメッセージでもあります。
また、オラクルは製品ベンダーですから、製品的部分には強い一方で、情報に対するアプローチがSIerやコンサル任せだったところがありました。今後その部分をきちんと確立し、製品だけではなくトータルなコンサルティングをしていくひとつのツールとしたいとも思っています。
当社だけで開発しなかったのは、そもそもSOAはベンダーが提唱するものではなく、また、SOAのアプローチはベンダーにとらわれないものとなるべきだからです。
ご存知のように、SOAは大きく分けてビジネスプロセスから落としていくもの、DOAをベースとするもの、アプリケーションとして分割スタイルをどう考えていくかという3つの流派があります。日本オラクルが提唱するのは、2番目のDOAベースのもので、今までのデータモデルを活かしつつ、よりSOA的に持っていこうという考え方に基づいています。基本的には、私たち日本オラクルの考えるSOAを作っていくわけですが、オラクルだけで進めると、やはりベンダーとしての欲が出たり偏りが生まれてしまうかもしれない。それを避けたいと考えたのです。
アイ・ティ・イノベーションを選んだ理由は2つあります。ひとつは中立的でベンダーに依存しないコンサルティング会社であったこと。もうひとつがDOAをベースとしたコンサルティングサービスを実施しているということでした。社長の林さんは、DOAに関しての第一人者でもあります。当社は、元々データベースを生業としており、そこからSOAの方法論、アプローチを提唱していくにあたって、アプローチの仕方にわれわれと非常に近い部分があるアイ・ティ・イノベーションにご意見を聞かせていただきながら一緒にやっていきたいと考えました。
オラクルからは、上流工程から下流工程まで一貫して開発経験がある者という条件で、SOA側のプロセスモデルに特化したコンサル、DOAのデータモデルに特化したコンサルの双方合わせて5、6名が参加しました。これは、「絵に描いた餅ではないSOAを作りたい」という考えからです。
方針としては先に述べましたように、第三者的な立場からレビューをいただくという大目的がまずありました。更にアイ・ティ・イノベーションは単なるデータ論理設計にとどまらずもっと広いシステム構築方法論としてのDOAをお持ちだったので、それとマッチングさせていくことで、単に設計の一部分だけ切り出してのSOA方法論ではなく、アプローチから実現までのすべてをカバーできる方法論を作り上げることが方針でした。
具体的には、オラクルの考えるSOAは、今までのDOAのアプローチとどこが違ってどういうメリットがあるかをディスカッションし、アイ・ティ・イノベーション側からいろいろな知見をいただき、われわれの意見も述べつつまとめ上げていきました。最初の目標設定は、ホワイトペーパーレベルのものを作ろうというものでしたが、かなり実のあるものになったと思います。
当社が投入したのは、現場で問題に直面しているコンサルタントでしたし、アイ・ティ・イノベーションから来て頂いた方も現場にコンサルで入られている方々だったので、スケジュール調整が一番大変でした。正直なところ、私たちの側は、宿題を持ち帰っても現場の仕事に追われて何一つできないままに次の会議に向かうとかいうこともありました。その分は、会議の場でああでもない、こうでもないと大いに議論しました。
内容については、両者ともそれぞれ確立された考え方があったので苦労はしませんでした。むしろ大変だったのは、頭の中にあるものをきちんと紙に落とす時に、第三者に伝えられる形にするためには、わかりやすい例は何なのか、どういう表記をすればいいのかというところでした。また、メンバがみな多忙なため、このプロジェクト内で生まれた成果をアウトプットにするための人や時間のやりくりに苦労したといえるかもしれません。
最初のレビューは林社長自ら出ていただいて、当社の考えるSOAのプロセスにも意見をいただきましたし、林さんを含めてさまざまなバックグラウンドで、かつシニアなコンサルの方々に出ていただいて、ご意見をいただいたということは、当社にとっても有意義でした。オラクルの中だけでやると偏ったほうに行きがちな部分を是正してもらえたと思います。
今回当社がDOAをベースに開発したSOAは、一番実現性があり、どこにも負けないものであると自負しています。
最近は、特に広い範囲でデータ分析やDOAの重要性の認識が進み、実施もされています。私たちはその延長線上にSOAを加えるため、現場の技術者にも理解されやすいのが最大の強みでしょう。ややもすればベンダーは一から新しい方法論を投入するという誘惑になりがちですが、現在のDOAの延長線上にSOAという考え方を適用するのが一番理にかなっているのではないかと思います。
今回開発したものは「考え方」であり、オラクルの製品色は一切出していませんからあくまでも今回作成したドキュメントは、最終的にオラクルがプロダクトでそれを実現するためのきっかけです。また、「ゴールは、オラクルがSOAの市場をクリエイトし、その流れをリードしていくことである。」ということについては、社内でも一致しています。SOAの市場は業種に依存せず、汎用的に作ってきたいと思っています。
オラクルは、サービスの開発からアプリケーションサーバ、運用、セキュリティまで一貫して全部のプロダクトを持っており、その一段上のSOAの設計が可能になります。その結果、当社がSOAに注力するプロダクトはそのすべてになります。オラクルのSOAは、DOAをベースとしているがゆえに、ワンファクト・ワンプレースを目指し、そしてネットワーク伝送は、なるだけ減らしていくことが前提ですから、今後市場を展開していく際に「脱スパゲティ状態の実現」がわれわれの訴求ポイントの一つになると考えています。