株式会社エムアイカード様
導入の背景
株式会社エムアイカードは、三越伊勢丹グループの金融を担う事業会社です。発行するエムアイカードは、独自のポイントプログラムなど豊富な特典が人気のクレジットカードで、その契約者は約210万人(2024年3月末現在)に上ります。エムアイカード様では、データセンターの移転に伴いシステムの更改を決定。2023年12月の移管完了を目指し、「基幹・周辺システム更改プロジェクト」を2021年よりスタートさせました。
本プロジェクトは、親会社をはじめとするグループ各社や50社以上に及ぶ外部システム連携先など、ステークホルダーが多岐にわたる大規模プロジェクトです。金融庁の監督指針で示される、システムリスク管理態勢に準拠したプロジェクト運営を実現するため、経営層はもちろんのことユーザ部門の主体的な関与を促しました。また、プロジェクト監査として第三者評価を外部企業に委託し、運営や成果物のレビューを受けつつ推進しました。
計画では数千人月(工数)超のプロジェクト規模を、約2年半の短工期で完了しなければなりません。多岐にわたるマネジメント作業に対応し、推進過程で生じる課題への調整力や実行力があるPMOは不可欠でした。そこで、プロジェクト発足時から複数のビジネスパートナーにPMO支援を依頼。アイ・ティ・イノベーション(ITI)は、2014年からプロジェクトPMO支援でエムアイカード様とのお付き合いがあり、「エムアイカードの文化や本プロジェクトの成り立ちが分かっている(村下様)」ことから、2021年7月よりプロジェクトに参画しました。プロジェクトでは、先に周辺システムの移行を2022年内に、基幹システムの移行を2023年12月までに完了する二段構えのスケジュールで進められ、ITIからは最も多い時期には9名が支援に入りました。
株式会社エムアイカード
システム部
部付マネージャー
村下 栄太 様
基幹・周辺システム更改プロジェクトの専任プロジェクトマネージャー(PM)。担当システムごとに組成した各チームなどをマネジメントするPMの役割を担う。
株式会社アイ・ティ・イノベーション
執行役員
東日本コンサルティング1G プロデューサー
シニアコンサルタント
林 慎一郎
2014年よりエムアイカードのPMO支援に関与。2021年より本プロジェクトに参画。現在は同社の組織PMO支援に従事する。
(※2024年7月 現在)
※2024年6月取材時
性質が異なる大規模プロジェクトに挑む
「基幹・周辺システム更改プロジェクト」は、これまで経験してきたプロジェクトとは以下の点で性質が異なりました。
- 監督官庁、ホールディングス、第三者評価機関との間で、多くの事務手続きや報告作業があった
- ステークホルダーが多岐にわたった
- ユーザ部門の主体的な関与(巻き込み)が必要だった
- エムアイカードの社員は少数で、ビジネスパートナー中心の体制だったため、所属や立場、経験によって、エムアイカードや業務への理解度、進め方に対する「常識」に大きな隔たりがあった
PMを務めた村下様は、「経験したことのない大規模なプロジェクトで、それぞれの立場や意見を尊重しながら、全体の方針をぶらさずプロジェクトを推進してくれる裏方は必須だった。SEよりもPMOの比率が高かったほどだ」と語ります。そして、ITIには「プロジェクトの意図を全ステークホルダーに浸透させること、生じる課題に対応し解決策を現場で実行すること。この難プロジェクトを任せられる人は少ないが、過去の実績からITIならできると期待(村下様)」してのご依頼でした。
コミュニケーション課題勃発で、四面楚歌に
周辺システムの移行作業を始めた当初は、村下様自身もPMの立場で忙殺され、各チームとのコミュニケーションの齟齬から計画の見直しを迫られるなど、深刻な事態に直面しました。村下様は、「エムアイカードと初めて仕事をするビジネスパートナーが多い中で、当社とのプロジェクトに慣れているITIには、通訳的な立場で調整してもらうシーンが多かった」と振り返ります。村下様から、「ユーザ部門やビジネスパートナーとの情報共有、意識合わせに課題感がある」との意向を受けたITIコンサルタントの林は、それぞれに必要なドキュメントを用意し、各所と密なコミュニケーションを図りました。「我々に根付いているITIの方法論を活用して課題を整理し、滞っていた情報がスムーズに流れるようにした」と話す林に、「大規模プロジェクトほど、報告書などで経過を『見える化』することが重要。ドキュメントなしに動いて議論が空中戦化しがちになる会議もあったが、根拠となるドキュメントを作成して課題に向き合うITIの姿勢には信頼がおけた」と村下様は語ります。
基幹システムの移行フェーズでは、村下様が周辺システムの状況分析をした上で、納期を見据えて先手を打つよう方針転換しましたが、腹落ちしないメンバーたちからは、「自分たちの仕事ではない」「仕事を増やすな」などと反発を受けてしまいます。「賛同する人がいない四面楚歌の状況に気づいて、軌道修正を図った。ITIのPMOにはチームを横断して体制の変更や調整に動いてもらった。林さんたちが面倒な部分を引き受けて、ステークホルダーと丁寧なコミュニケーションを重ねてくれたおかげで徐々に理解者が増え、その後は基幹システム移行プロセスもスムーズに流れ始めた。各PLやPMOの困りごとにも主体的に取り組む姿は、頼もしかった」と村下様。林も、「先手の重要性に気づいて早くから動き出したのは村下さんだけ。サポートできることは何でもやろうと、結果を出すことに集中した」と当時を振り返ります。
ユーザへの影響障害ゼロ。予算も納期もパーフェクトでプロジェクトは大成功!
次々と打った先手が奏功し、プロジェクトは大成功。納期、予算を含む諸条件を達成し、ユーザへの影響も出すことなくシステム移行を完了しました。村下様は、「一人では成し得なかった。客観的な事実を踏まえつつ、本音で前向きな解決策を語りあえる林さんたちに、何度も助けられた。的確な提案や実行までの伴走に信頼感がある。我々と同じ目線で、ワンチームとなって課題に向き合ってくれる大切な存在だ」と、ITIのPMO支援を評価してくださいます。
林も、「本プロジェクトの成功は、社内外で高く評価されている。協力した我々も、大きな学びを得ることができた。取り組み内容も含めて、今回得た知見をITIとして広く世の中に伝えていく必要があると考えている」と、意欲を語ります。
エムアイカードの次世代を見据えて、ITIの知見を活用
「営業利益を2031年3月期までに100億円程度に高める」を目標に掲げているエムアイカード様。金融の事業において、クレジット事業以外の分野にも挑戦する必要があり、そのためにもITIのPMO支援は欠かせないとのこと。「まずシステム部の業務改革を急ぐ。具体的には業務の見える化を進め、属人化を廃する。現在、どんな仕事に誰がどのくらい時間を使っているかを可視化しており、ここ数カ月で改善すべき点がすでに明らかになっている。そのデータをもとに、業務の取捨選択を進め、目標に向かって我々が本来やるべきこと、割くべき時間を明確にする。ここでもITIの知見は大いに活用されている」と、一層の期待をITIに寄せられました。「これからもエムアイカード様の未来にプラスになるよう、全力で取り組みたい」と林が語るように、より強固な信頼の絆を紡ぎながら、エムアイカード様へのご支援を今後も継続してまいります。
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