日本ヒューレット・パッカード株式会社様のご依頼により、当社の「PM研修」を営業職のリーダーとマネジャ層向けにカスタマイズしたプロジェクトマネジメント教育を3回にわたって実施いたしました。
この案件のご依頼のきっかけや実際の取り組みを振り返りながら、同社のご担当者お二人に研修の成果や今後の課題について率直なご意見をいただきました。(一問一答はお二人のコメントを元に編集したものです)
社名、人物の肩書などは取材当時のものです
お客様の課題 | インテグレーションをより強化し、SIプロジェクトを積極的に獲得し、遂行していく必要性に迫られていた。そのためには、営業にもプロジェクトをどう支えていったらよいのかという視点が不可欠であった。 |
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当社支援内容 | 当社のIT教育であるModusアカデミーをベースに営業職向けのPM。教育を開発し、お客様への教育を実施しました。 |
解決策 | 営業職といった特性を踏まえ… 日ごろ時間に追われている営業のために従来の3日間コースを1日間コースに圧縮。 飽きさせない研修、かつ「プロジェクトマネジメントとは何か?」といったことをしっかり理解させるカリキュラムを開発。 |
日本ヒューレット・パッカード社はエンタープライズ、公共機関、中堅・中小企業、一般ユーザーの4つの市場セグメントのそれぞれに最適のソリューションを提案し、PDAからハイエンドサーバーまでを幅広く提供する総合IT企業である。外資系コンピューター会社は、合併によってビジネス領域を拡大しつつ、高い専門性を持つ社員を獲得し進化を続けていくケースが多いが、同社もコンパックコンピュータと合併し、SIの領域でもさらなる「強みのある領域」を獲得してきた経緯がある。
それに伴い、育ってきた企業文化やキャリアパスの相違から、シニア営業でもソリューション開発やSIプロジェクトで経験の少ない分野も見受けられた。SIビジネスを担当する営業にもまた独特のセオリーや勘所がある。お客様と開発者の間を調整し、より良い結果を生むためには、プロジェクト経験の少ない分野で、それをカバーする何らかの仕組みが求められたのである。
一方で、10年前と比べ技術の進化に伴い、ハードウエア製品の価格性能比は大幅に向上している。同社もハードウェア製品の販売事業のみならず、顧客にとって、より価値のあるインテグレーションの力を強化し、SIプロジェクトを積極的に獲得し、顧客の期待に応えようとしている。そのためには、営業職にも「営業は、プロジェクトをどう支えていったらよいのか」という視点が不可欠である。しかし、これまで体系的にプロジェクトマネジメントを学ぶ機会が中々なかった人に理解してもらうのは、困難なことだった。
そこで通信・メディア営業統括本部長の佐藤様は、その仕掛けをインダストリマーケティング本部 通信・メディア プログラムマネージャの市川様に託した。インダストリマーケティング本部の業務は、イベントやプロモーション等、営業を円滑に進めるためのバックエンド支援であるが、市川様は、通信系の営業経験が長く、異動後もマーケティングの立場から営業に対する教育プログラムを実施していたのである。
同社では、通信・メディアの他にも製造、流通、金融等、インダストリーカットの組織構成がなされていて、それぞれの営業をそれと対になったインダストリマーケティング担当部署が支援しているが、中でも佐藤様と市川様が所属する通信・メディアは、ビジネス規模が大きく、SI技術職と営業職のコミュニケーションが比較的よいということも、今回のプロジェクトマネジメント教育導入の背景にあったといえよう。
基本的には営業ですからプロジェクトマネジャ(プロマネ)とは、役割が違いますが、少なくとも担当の営業として、プロマネが何を考えてプロジェクトを進めているのかを理解できる必要があります。
ところが、あまりプロジェクト、いわゆるSI技術の経験がない営業は、プロジェクトを受注するまでは精力的にこなしますが、プロジェクトが実際にスタートしてしまうと「あとはプロマネの仕事で自分は関係ない」というモードに入りやすい。それでは、プロジェクトは上手くいきません。特に、プロジェクトに何らかの齟齬が生まれて「よれた」状態になった時が問題で、営業がリードしていかなければいけないケースもあるでしょうし、プロマネを上手にサポートしていくべきケースもありますが、中堅どころの営業でもそれをやったことがないという人がいたのです。
そうすると今度は、プロマネのほうから「このプロジェクトに関して営業が何もしてくれない」というクレームが来ます。営業担当者に悪気はないのですが、なにしろ立場上、開発現場への理解が十分ではありませんし、プロジェクトマネジメントというものが十分には分かっていないですから、話を聞いてもプロマネ側の話と全然噛み合わないということがよくありました。
そこで営業リーダーやマネジャ層にプロジェクトマネジメントについての意識を持ってもらうために、無理を言って研修プログラムを作っていただいたというのが経緯です。
まず社内および外部でPM研修を探しましたが、予想していた通り100%がエンジニア向けでした。それでは営業職に理解できない部分がかなりあるだろうし、実現は難しいかもしれないと思いながら探し
ていたら、たまたま一緒に仕事をしたこともあり10年くらい付き合いがあるコンサルタントがアイ・ティ・イノベーションに転職していたということを知ったのです。基本的には、アイ・ティ・イノベーションの教育内容はプロマネ向けということでしたから、その時点では果たして営業向けにどこまで応えていただけるか何とも言えなかったのですが、彼は、非常に実直な人間ですし、そういう知人がいる会社ならばこちらの細かいニーズにも柔軟に対応して頂けるかもしれないと思ったのがきっかけとなりました。
お願いした条件は、かなり厳しいものだったと思います。通常のプロマネ研修でも3日かかるところを、無理を言って圧縮していただき、長めでもいいからということで1日にしてもらいました。日頃時間に追われている営業が、プロジェクトマネジメントの話を3日間も黙って聞くわけがないというのがその理由です。
しかもただ聞いているだけでは長時間もたないので、単なる座学ではないスタイルでやってほしい。そしてなおかつ「プロジェクトマネジメントとは何か」ということをちゃんと理解させてほしい。その3つが私たちの希望でした。
たぶんこんな条件では受けてもらえないのではないかと思いながらお願いしたのですか、根気よくそれに応えていただきました。内容を削りに削って1日にしていただいたこともあり、正直なところ研修が始まるまで上手くいくかどうか不安でした。研修に出た人から「講師が現場で苦労された体験談が入っていて非常に良かった。ためになるトレーニングをやってくれたね」というフィードバックをもらい、ほっとしました。営業は、なかなかそのような評価を口にしてくれないものなので、うれしかったです。
今までに計3回の研修を行い、トータルで約60人が受講しています。基本的には全員に受けてもらいたいのですが、プロジェクトの経験が少ない若手では、分からないケースがあるので、少し現場で苦労させてから受けさせたほうがよいと考えて受講者を人選しました。
特に最初の回の受講者は、1回でもプロジェクトの営業をやった経験がありながらプロジェクトマネジメントについて、今までトレーニングを受講する機会が無かった人、あるいは今現場で課題に直面している人を中心に人選していますから、相当の問題意識を持って受講しているはずです。
やはり研修の内容が、その時点で自分が抱える問題・課題に関連していると、非常に吸収力がよいと思います。研修を終えた後に、営業のスタイルが全然違う人を7、8人選んで感想を聞いたのですが、その全員が、少なくともここ数年で受けたトレーニングの中では一番良かったという評価をしています。また、この研修を受けたことで、プロマネがどういうことに気をつけていたのか、あるいはプロマネは何をしなければいけない立場で、具体的にどういうことをやっているのかを初めて理解できたというコメントが結構ありました。
一番顕著だったのは、デリバリ側から営業へのクレームの多かったあるプロジェクトのプロジェクトマネジャや上司から「最近、営業側のサポートがいいね」という声が聞かれるようになったことです。また、最初の研修の評判を聞いたらしく、2回目以降の企画に関しては、1回目の参加者の層よりもかなり上のマネジャ、部長や本部長クラスの人が積極的に出たいと希望してきました。
プロジェクト開始後に営業として何をフォローすべきかという観点を身に付けているかどうかが、プロジェクトマネジャがやりやすい環境になるかどうかを左右します。また顧客とのリレーションシップをどう構築するかということに関しても、営業が入って一緒にやる場合とプロマネだけを頼りにやっていくのではかなり違います。
その点において、今回のプロジェクトマネジメント研修のメリットは大きいと思います。
プロジェクトということではないのですが、最近の若手営業職は、「これをやってくれ」と言ったことに関しては、100%きちんと応えてくれるけれど、何もないところからものをつくる能力に課題があるのが気になります。この時代、新規の開拓は難しいですが、お客様と話をしていく中で、お客様が困っていることに真剣に耳を傾け、それをきっかけにビジネスが生まれることがよくあります。でも日々意識をしていないと、しっかりと拾うことができない。そのあたりが今後の営業の課題になってくるのかもしれません。