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「人間を考える」を読んで ~松下幸之助が到達した哲学に学ぶ その3 人間観から人間道へ~


これまで松下哲学の入り口となっている「人間観」について考えてきた。

今回のテーマは、人間観から人間道へである。人間観とは、人間の本質の理解である。
何事を考えるにも人間の本質に関する理解が出発点になるので「人間観」とは、言い換えれば、「人間というものは、このようなものであると定義し、それを理解すること」であり、この理解があって様々なことを実践していく。「人間道」つまり「人は、どう生きるべきか。どう実践するか」という本質的な課題に立ち向かえる。

松下幸之助が至った人間観の結論は、人間は万物いっさいの支配者であるということだ。人間は他の生物とは異なり、万物の支配者であり万物をコントロールできる。

人間観とは、端的に言えば、万物の王者としての偉大な使命を自覚することである。万物の王者としての偉大な使命を自覚したうえで、万物いっさいをあるがままに生かし、支配活用し、より良き生活の実践を生み出す道が、人間道であるとした。

人間道の理解で最も重要なことは、人間は共同生活しているということである。人間道の重要な視点は、共同生活にあると松下幸之助は語っている。家族、会社、学校、国家は、人間の生み出した集団であるが、過去数百年に渡り、様々な知識が増え、技術は著しく発展したが、社会の中の争いごとは、一向に無くならないどころか、むしろ増えているといえるだろう。

これは、いかなる理由からくるのだろうか?松下は、「正しい人間観が整っていない。また、正しい人間観に基づいた人間道が確立されていないからだ」と考えた。

人間道とは、社会的な集団でどのように生きるべきかの指針である。人間道の確立こそが、技術を中心に社会が発展するにつれて、ますます重要度が高まると考えた。

人間道の入り口は、人間万物いっさいをあるがままに認め、容認するところから始まる。すなわち、人も物も森羅万象すべては、自然の摂理によって存在するものであり、一人一物たりとも否認、排除してはならない。これが人間道の前提条件となる。言い換えれば、すべてのものは、自然に存在するのであり、人間(支配者)のエゴで、勝手なことをしてはならないということである。また、すべてのものをあるがままに容認したうえで、すべてのものの天命や特質を見極めて適切な処置、処遇を過たず行い、すべてを生かしていくことこそが、人間道の本義があるとしている。

このような考えに立ち、物事を進めていくことこそが人間共通の尊い責務である。この責務を背負い、共同生活を進めていく道が、人間道である。そして、人間道は豊かな礼の精神と衆知に基づくことによってはじめて、円滑に正しく実践することができると言っている。

皆さんは、すでにお分りでしょうが、松下哲学には、人のあるべき姿や、態度、政治や事業を行う者に対する強いメッセージが含まれている。また、様々な争いごと、環境問題、自然保護などの近年話題になっているすべての事柄をどのようにすべきか。どのようになるのが理想であるかについての指針も含まれている。

私たちが、どのような態度で生活、仕事、事業などに取り組むべきかについての方向を示している。次号では、もう少し、人間道の重要ポイントを掘り下げることにする。

処遇:あらゆる物事に対する処置、対処という広い意味
礼 :日常の礼儀作法ではなく、慈悲、愛の精神、感謝、謙虚、寛容などといった
   豊かな心を示す


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林衛
IT戦略とプロジェクトマネジメントを中核にITビジネスのコンサルティングを行うアイ・ティ・イノベーションのファウンダーであり社長を務める。◆コンサルの実践を積みながら英米のIT企業とかかわる中で先端的な方法論と技術を学び、コンサルティング力に磨きをかけてきた。技術にも人間にも精通するPM界のグランドマスター的存在。◆Modusアカデミー講師。ドラッカー学会会員、名古屋工業大学・東京工業大学などの大学の講師を勤める。

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