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『3分でわかる!システム企画一問一答』現行(As-Is)調査は不要?やっぱり必要?


現行(As-Is)調査は不要?やっぱり必要?

いろいろなお客様とシステム企画の進め方についてお話しをする機会が多いのですが、「現行調査を行わず、いきなり新業務・システムの検討を始めても良いのでは(あるいは、いきなり始めるべきでは)?」というご質問をいただくことが結構あります。

システム企画では、まず現行(いわゆるAs-Is像)調査を行った上で、現行からの変更点を検討して、あるべき業務やシステムの姿(いわゆるTo-Be像)を検討する、という流れがオーソドックスなのですが、As-Isをすっ飛ばしていきなりTo-Be像を検討するという進め方は果たして成り立つのでしょうか?

なぜそのような質問が挙がるのかという背景も踏まえ、小職がお答えしている内容をご紹介したいと思います。

Q現行業務・システム調査を実施しない進め方はアリ?

同じご質問でも、意図するところは2パターンあります。

1つめは「As-Isの調査にかなりの時間や手間が掛かるため、なんとか端折れないものか?」というパターン。現行の業務プロセスを把握できる業務フローが存在しない(または、存在していても実態と異なってる、粒度が粗すぎる場合も)とか、システムの仕様書も同様という場合、知っている人達から情報を集めてドキュメント化するのは大変ですよね。システムについては、最悪の場合、仕様を知っている人もおらず、ソースコードを分析して確認しなければならない場合すらあり、これには多大な労力が必要となります。
ただでさえ変化の速い時代、企画をできるだけスピーディに進めたいのは理解できます。

そして2つめ。これは「As-Isを見ちゃうと自由な発想ができなくなり、最適なTo-Be像を描き難くなるから」というパターンです。
これも一理ありますね。
人間、いったん出来てしまった固定観念に捉われやすい面は確かにあり、これまでの業務のやり方に縛られずにゼロベースで考えなければ抜本的な改革にならない、ということ。

どちらのパターンも、気持ちは良く分かります。

ですが、基本的には「As-Is調査をスキップすべきではない」といつもお答えしています。

理由は「ほぼ間違いなくビジネスケースの考慮モレが発生する」からです。

現行の業務・システムには、レアなパターンも含めて過去の様々なビジネスケースに対応してきた実績があります。これを参照せずにTo-Be像を作る場合、どれだけ注意を払いながら検討を行っても必ずモレが出て、業務やシステム切替前後(またはもっと前)に大きなトラブルに見舞われることになります。
実際にそのような進め方をされ失敗したプロジェクトのお話は多くお聞きしますが、逆にうまくいったという事例は残念ながらお聞きしたことがありません。

例えば販売管理における取引パターン。一部の商品で特別な価格体系や納入方法を取っているパターンがあるかも知れません。新規受注はしていなくても、一部の顧客には商品を継続して販売しているパターンがあるかも知れません。
などなど・・・大きな考慮モレがあった場合は、業務に混乱をきたし取引先からのクレームや、最悪の場合取引自体ができなくなる可能性もあります。

また、「As-Isに捉われず新たな発想で」といっても、多くの場合は現行の業務に携わっている人がTo-Beを検討することになるため、どちらにしろAs-Is(しかも頭の中にある網羅性に欠けるAs-Is)が起点になることにあまり変わりがありません。

確かに、As-Isに拘ると部分最適になったり、セキュリティやコンプライアンスといったコントロール面が不十分になったりしがちではありますが、この原因は「As-Isを把握しているから」ではなく、「現状の困りごとを改善する観点でしかTo-Beを考えていないから」だと言えます。
ボトムアップ観点だけではなく、これから戦略としてどのようなビジネスを目指すのか、その目標のために新たな業務・システムで満たさなければならない要求(トップダウン観点)からTo-Beを考えることにより、As-Isに捉われない検討ができるのではないかと考えています。

まぁ、あとは「頭を柔らかくして最適な実現手段を考えられる」という思考プロセスや発想力の勝負、ということなのではないでしょうか。

それでは今回のアンサー。

A現行業務・システム調査は実施すべき!

逆に言えば上記の問題点をクリアできる場合、例えば、
 ・考慮モレが出たとしても社内外への影響がごく少ない業務である
 ・自社の独自性・特殊性がほぼない業務である
 ・業務やシステムが非常にシンプルで頭の中の情報だけで完全に網羅できる
といったケースではAs-Is調査はスキップできる可能性はあります。
ただ、一定規模以上の企業でシステム企画を進める際にはそのようなことは少ないハズで、やはり「As-Is調査を行う」ことを基本に考えるべきだと言えるでしょう。

それでは次回もお楽しみに!


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弘中 伸典
1994年、徳山工業高等専門学校情報電子工学科を卒業。 SIベンダーに入社後、数々のシステム開発の現場で活躍。そこで得た多くの経験に感謝しつつも、IT業界における構造的問題に一石を投じるべく株式会社アイ・ティ・イノベーションに参画。問題の原因は、プロジェクトマネジメントの欠如にあると考え、日々のコンサルティング業務を通じてその必要性を訴え続ける。 専門領域は、プロジェクトマネジメントおよびシステム開発プロセスの標準化、PMOの設置と運営、IT投資マネジメントなど。 責任と誠意を持って問題解決に取り組む姿勢を大切にしている。 PMP(Project Management Professional)資格 保有

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