前回のブログの掲載以降に、何か書き足りないと感じていて、「仕事の意味」についてさらに考えてみた。
仕事の意味を軸に日本の就業者がどのようになっているのかをネット上で調べていくと、参考になる情報に行きついた。令和4年の内閣府が行っている国民生活に関する世論調査に「生き方、考え方」という項目があり、4つの質問で仕事や家庭についての考えを聞いている。
(1) 家庭の役割
(2) 働く目的は何か
(3) どのような仕事が理想的だと思うか
(4) 収入と自由時間についての考え方
それぞれの統計結果が、日本人の国民性と時代の変化を反映しており非常に興味深い。
今回は「(2) 働く目的は何か」と「(3) どのような仕事が理想的だと思うか」について考察してみた。
・金を得るために働く 63.3%
・社会の一員として、務めを果たすために働く 11.0%
・自分の才能や能力を発揮するために働く 6.7%
・生きがいをみつけるために働く 14.1%
50歳以上の年齢が上がるにつれて、「社会の一員として働く」、「生きがいを見つけるため」の比率が高くなっていく。多くの場合、歳を取るにしたがって収入が上がり、能力と経験が増していくので当然と言えば当然であるが、全体として「金のために働く」という人の割合が高いのは問題ではないかと考えてしまった。もしお金だけが目的だとしたら、それはとても寂しいことである。仕事とはそんなもんじゃないと私は言いたい。
また、「(3) どのような仕事が理想的だと思うか」という質問に対する回答では、「収入が安定している仕事」が62.8%で最も割合が多い。
一方、「世の中のためになる仕事(21.6%)」や「高い収入が得られる仕事(19.0%)」の割合は低い。また「自分の専門知識や能力がいかせる仕事(35.9%)」の割合も低くなっている。
前回のブログでも説明したが、マクレランドの要求理論では、人の行動には動機があり「達成動機」「権力動機」「親和動機」「回避動機」の4つに分けられる。
調査結果をこの分類と照らし合わせると日本の就業者の多くは、「親和動機」「回避動機」が極めて強いという傾向がみられる。これは、創造性や変化を求められる時代では問題である。これらの明らかな日本人就業者の特徴を理解して、元気な日本にする策を考えてみたい。
第二次世界大戦前(約80年前)までは、農民・漁民は、正に家庭と仕事を一緒にして生きていた。このモデルを一部真似るのだ。また現代は、産業のサービス化が進み、IT産業などを代表とする知的労働が増加したことも考慮する必要があるだろう。
自分に合った「家庭と仕事を同時に充実させる生き方」を見つけよう。そのためには、生き方(どのような家庭が理想で、どのような仕事の仕方が理想になるのか)のビジョン・価値観を明確にすることが大切だ。このことを哲学的に考える必要はない。自分が心地よく、熱心に取り組める方法・在り方を明確にすることである。人それぞれ価値観も関心事も異なっているので、自分に合った生き方を決めてから、その生き方に合った家庭・仕事・人間関係などを再編成するのだ。一気にできなくても段階的に近づいてゆけばよい。
私自身どうかと言えば、入社して数年経ち、仕事を覚えた1980年代中盤から、仕事を生きがいと考えるようになった。1998年にアイ・ティ・イノベーションを起業した頃には、仕事は生き方そのものであり、自分の中では生き方と仕事は統合していた。ただし、家庭のことは顧みなかったため、家族を犠牲にしてしまった。仕事も家庭も生き方の中にあったが、位置付け方が間違っていたためにバランスの悪い人生になってしまった。
これまで私は、家庭か仕事かという選択をしたことはない。生き方の重点を仕事においてしまったのだ。妻や子供には申し訳ないと思っている。家庭は必要な時期に貢献しなければ意味がない。今頃、頭で理解できても、戻ってやり直すことができないのが人生である。
ここで、仕事が私にとって、どのように魅力的だったのかを考えてみることにする。私はなぜ、仕事は魅力的で飽きないと感じたのだろうか。私は何故、一生懸命仕事をしたのだろうか。私にとっての主な理由を、以下に列挙してみた。
・同じ仕事は無く、すべて異なる
・やる気さえあればいつでも、どこでも、いくらでもできる
・何をやっても自由であり、一生できるのが仕事
・成果が明確であり、技量や経験の異なる人同士でできること
・仕事の成果を計るルールがあり、結果が数字でわかり、他と比べることができる
・年齢、性別に関係なくどの国でもほぼ同じルールでプレーすることができる
・友達が増える(失う人も中にはいる)
・仕事だけの付き合いでは終わらない飲み会などで盛り上がる
「仕事の本質と魅力」について、若手社員を中心に働く人の声を聴くと、何をしたら良いかが分からないという人が多く、そのような人はさらに増えつつあると思う。仕事を極めれば、家庭も仕事も境界は感じられない。それらを繋いでいるのは生き方である。家庭と仕事を両立させる生き方を見つけてほしい。仕事は人生の中で多くの時間を費やすので、楽しく充実した仕事が出来るかどうかは、人生にとって大事な部分である。
その中で私は、人生の楽しさと仕事の楽しさを若い人に伝えていかなくてはならないと思っている。
【参考文献】
国民生活に関する世論調査(令和4年10月調査) > 調査結果の概要
https://survey.gov-online.go.jp/r04/r04-life/2.html