かなり昔、私がある企業の物流系システムの企画に参加していた時の話。
業務プロセスを変更する案について検討している時、あるメンバーから発言がありました。
「そんなことしたらB社からの仕事を失ってしまいますよ・・・」
B社は取引量こそ大きくないものの古くからの得意先であり、業務形態を変えることで他社とのビジネスを拡大できる可能性がある反面、長年の関係で特別な取引パターンに対応しているB社の商売が継続できなくなってしまうというのです。
解決策の糸口すらなかなか見い出せない状況のまましばらく議論が続いた後、企画の責任者であったS氏が放った一言に全員困惑することとなりました。なかにはS氏に対し明らかに不満げな顔を向けているメンバーもいます・・・
S氏の発言は後程ご紹介するとして、今回はシステム企画を進める際にどのようなスキル・特性を持った要員に任せるのが最適なのか、お伝えしたいと思っています。
システム企画にあたっては多くのスキルが求められることになります。
代表的なのは、業界や業務の知識、ITの専門知識、論理的思考力や問題解決力、リーダーシップ、コミュニケーション力、資料作成力、マネジメント力などで、どれも欠かせないものと言えますよね。
当然すべての力を完全に備えたスーパーマンはいませんから、複数メンバーの組み合わせによりチームとしてスキルを充足させることになります。
ただ、最も重要なのはリーダーシップを発揮できるメンバーを企画の中心に置く、ということだと私は思っております。
成果に繋がる企画とは、企業価値を向上させることができる企画であると言えます。それは、新たなビジネスを創出したり、既存の仕事をより効率的で付加価値の高い「競争力あるビジネス」にシフトしたりすることであり、多かれ少なかれ組織・プロセス・人・仕組みなど「変革」を伴う取り組みになるはずです。
そして、変革を起こすために必要なのがリーダーシップであり、これが欠けてしまうと最大公約数的な「縮こまった企画」になってしまいがちです。
そのような要員は外部から調達することは難しく、社内にも多くはいないかも知れません。このため、最も時間を掛けて慎重に要員を検討し、以下のような条件に合致する適任者を見つけることが求められます。
「そんなカリスマみたいな人材いないよ!」と感じるかも知れませんが・・・例えば、「自社への想い入れがあって会社を良くしたいと思っている」とか、「相手の立場に関わらず物怖じせず話せる」とか、不足している観点を伝えながらしっかりフォローすれば、リーダーシップを発揮できそうなメンバーはいませんか?
そのようなメンバーを見つけ出して中心に据えることさえできれば、もう一つ重要なことはそこに優秀な「参謀役」を付けておくことです。
組織においては、「リーダー」と「マネジャー」の役割が両方重要だと良く言われますよね。いわゆる「牽引役=夢を描く役割」と「実現役=それを形にする役割」であり、システムの企画においても同じことが言えます。
この参謀役にはマネジメント力の高い要員、つまりリーダーシップを発揮し企画を引っ張っていくメンバーの考えを理論武装し、コンフリクト・マネジメントによって周囲との軋轢を解消し、リスクの影響を最小化する手立てを考えられるようなメンバーが必要になります。この参謀役も当然重要ですが、こちらは比較的社内で見つけやすい、または外部からの調達が可能な役割と言えます。
今回のアンサーの前に、冒頭のS氏の発言は・・・
「申し訳ないことだが、B社との商売はもう止めてしまおう」
というものでした。メンバーには長年B社との取引を担当してきたメンバーもおり、「そんなのあり得ない!」と猛反発しましたが、ビジネス全体から見て合理的に考えればS氏の考えは確かに妥当性の高い意見であり、皆が納得できるような有効な反論はでないまま方向性が固まったのです。
もちろん、自社の経営層への説得や、その後のB社との調整もいろいろ難航したのですが、S氏のリーダーシップのもとチームの頑張りにより、最終的には落ち着くべきところにうまく着地したのでした。
Aリーダーシップを発揮できる人に任せ、参謀を付けるべし
先程の話、私は参謀役の端っこ位のポジションでしたが、強いリーダーシップによって生まれた企画がその後ビジネスに大きな成果をもたらした結果を目の当たりにし、今でもS氏が好きだった焼酎を飲む度に当時の事を思い出したりするのです。
なんだか私自身が感傷に浸っちゃいましたが(焼酎飲みながら書いている訳ではありませんぞ、念のため)・・・また次回!