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【連載:エッセイ「すべては、チームのために」】~エンゲージメント その1~


『良いチーム実現の前提はエンゲージメントを高めること』

近頃、エンゲージメントという言葉をよく耳にするようになった。

エンゲージメントとは、「深いつながりを持った関係性」を示す。一般にEngagementは、「婚約」「誓約」「約束」などと訳されるのであるが、私たちが耳にするのは、主に「従業員エンゲージメント」「ワークエンゲージメント」の意味で使われている仕事や従業員と会社の関係をより良くすることである。ここに世の中の関心が集まっているのである。

この2-3年で、コロナが思うように収束せず、出社ができないためテレワークが定着したが、一方で、コミュニケーションの不足による様々な問題が浮き彫りになってきていることも、“エンゲージメント”という言葉に関心が向く要因になっているようである。
私の経験からすると、愛社精神が高く、会社と従業員の関係が良好な企業は、間違いなく業績が良いし、頼んだ仕事を熱意を持ってやり遂げてくれた。仕事以前に、会社のベースができていると感じた。そのような会社は、数多く存在すると私は考えているが、一方、そんな良い会社が簡単にできるものではない。

ここで、基本的なことを考えてみよう。企業と従業員との関係は、どのような形であれば、良好と見做せるのだろうか?企業が持続的に成長するためには、企業と従業員が、相互にポジティブに影響しあい、共に必要な存在として絆を深めながら行動できるような関係を築くことこそが重要になる。

もし、エンゲージメントが無いか弱かったら、事業を進めていくうえで次々と遭遇する問題を乗り越えることができず、企業は座礁してしまうだろう。放置すれば、従業員の心は暗くなり、雇用を維持できなるだろう。

ましてやコロナの影響で、今までのように出社し、共に仕事をしたり、雑談をしたり、食事やお茶をする機会が少なくなると、どのような影響が出るだろうか想像してほしい。仕事をスムーズに運ぶには、仕事の仕方に着目するのではなく、働く人の心の環境やコミュニケーションの基盤が、より重要な要素になる。企業は、人と人との関係で成り立っているので、安心安全な従業員の心の状態が確保できて初めて正常に運営できる。

エンゲージメントが、弱まった企業では、生産性や品質が低下するだけではなく、優秀な人材をつなぎとめることが難しくなる。従業員と会社の関係は、報酬を含めた待遇と制度だけになり、会社に対する前向きな気持ちは維持できなくなり、人材流出が起こりやすい状況になる。

私は、このようになった企業を数多く見てきたが、共通して言えるのは、従業員の多くは、要求は強いが、チームワークやコミュニケーションが充分取れていないために、しばしば、ちぐはぐなマネジメントになる。また、このような企業は、顧客の要求以上のことを果たすことはごくまれであり、互いの主張や要求中心の関係になり、創造的な活動が、困難になった。数年後には、メンバーのほとんどは、抜けてしまい、そのまま残った企業は、存在できなくなるという結果になった。
根本的な間違いは、ビジネスを推進するビジョン・動機が曖昧で、経営者のキャラが、そのまま従業員まで反映した組織になってしまったことである。もともとの原因は、経営者の問題、経営理念・ビジョンの欠如ということになるが、従業員と経営者との間で納得のいく形で作る努力をしなければ、エンゲージメントは生まれないし、機能もしない。

エンゲージメントとは、会社との強いきずなや愛着心と関係した“働き続けるための最も基本となるマインドセット”であり、これなしでは、いくら高い報酬や機能的な環境が用意されたとしても、仕事上で起こりうる様々な課題を持続的に乗り越えることは、不可能である。目には見えない要素であるが、各人のマインドの土台となる重要な条件なのである。ましてや、チームのため会社のために貢献したいであるとか、メンバーの役に立とうなどのマインドが生まれるには、メンバーの心の健全さが保たれている必要がる。

以下の8項目を満たされているかどうかをチェックしてみよう(YES:1点、NO:0点)。
エンゲージメントが良好かどうかを判断できる。

・自分が、会社から何を期待されているかを知っている
・熱心に仕事を行う環境が整っている
・自分の得意な仕事をする機会が与えられている
・良い仕事をしたら、褒められたり、称賛されたりする
・仲間が、自分のことを気にかけてくれている
・仲間や上司が、成長を促してくれる
・自分の意見が言える
・会社の使命やビジョンが明確である

もし得点が、8分の5以下であれば、あなたの会社のエンゲージメントは、問題であり、組織は、衰退に向かっている。

以上のようなことが前提となって、初めてチームでの仕事がうまくいくことになる。
つまり、我々は、チームワークやマネジメントをうまくやるための前提条件としてエンゲージメントが存在していることを理解しなければならない。

それでは、どのように、テレワーク中心の環境下でエンゲージメントを醸成すればよいのだろうか?

(次号に続く)


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林衛
IT戦略とプロジェクトマネジメントを中核にITビジネスのコンサルティングを行うアイ・ティ・イノベーションのファウンダーであり社長を務める。◆コンサルの実践を積みながら英米のIT企業とかかわる中で先端的な方法論と技術を学び、コンサルティング力に磨きをかけてきた。技術にも人間にも精通するPM界のグランドマスター的存在。◆Modusアカデミー講師。ドラッカー学会会員、名古屋工業大学・東京工業大学などの大学の講師を勤める。

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