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【連載:エッセイ「すべては、チームのために」】~北京オリンピック~


「すべては、チームのために」

2022年の北京オリンピックが、無事開幕された。私が特に注目しているのは、日本選手の団体競技での活躍ぶりである。

フィギュアスケート団体戦は、予想を超える結果が出た。
どうしてこのような成果が得られたのかについて考えてみたい。

フィギュアスケートは、もともと個人の種目であるが、団体戦もある。2014年ソチ五輪から始まった新しい競技だ。
現在開催されている北京オリンピックで、2月7日、日本は、見事なチーム力で初の銅メダルを獲得した。

団体戦は、男子シングル、アイスダンス、ペア、女子シングルのショート(アイスダンスはリズムダンス)とフリーの8つの演技の得点順位をもとにした合計点を競う。ショートとフリーは、最大2枠までは違う選手であってもよいし、同一の選手が出場してもかまわない。チームをどのように構成するかは、戦略にかかってくる。日本は、シングルの男女は、ショートとフリートで、異なる選手を起用した。男子ショート:宇野昌磨、男子フリー:鍵山優真、女子ショート:樋口新葉、女子フリー:坂本花織、アイスダンス:小松原美里、小松原尊、ペア:三浦璃来、木原龍一の各選手である。8名の共演である。

2月4日の前半での第一演技者の宇野昌磨が、パーソナルベストを出す演技で終え、2位を確定させると、続くアイスダンスも踏ん張り、7位で上位への希望をつなぎ、ペアも自己最高で4位となり、女子のショートを前にして、上位が見えてきた。そこで、樋口新葉がノーミスで、自己最高記録に迫る74.73で、2位とした。ショートが終了した時点では全体の4位で、後半のでき次第で、メダルの狙えるところまで持ってきた。

さて、2月7日の後半の演技は、どうであろうか。各選手は、チームの一員として、相当な重圧がかかっていたことは確かであるが、チームの各自の表情、雰囲気は、極めてよく、次々と自己最高、あるいは、それに近い得点をたたき出し、最終滑走の坂本の演技を待つことなく銅メダルを確定させる状況になった。最後の坂本の滑走もほぼノーミスで演技を終了した。

日本チームの勝因を分析してみよう。私は、3つの重要なポイントがあると考えている。

1.明るいチーム・全員一丸の環境
チーム全員で応援し、結果をリアルで共有できる場が整っていたこと。また、チーム全員の応援の表情を見るとわかるが、どの国のチームよりも明るく、躍動感が感じられた。

2.初動で良いリズムに乗る
一番滑走の選手が、良い結果を出すこと。これにより、チームの雰囲気と力が、最大限に働き、次々と良いリズムに乗ることができた。

3.すべては、チームのために
「すべての成果は、チームのために」 この考えが、徹底していた。

チームで成果を出すことにおいては、この原理は、スポーツだけにとどまらない。会社での仕事についても、全く同様の原理が適用できると私は考えている。

私が、経験してきた様々なプロジェクトを振り返ると、上手くいったプロジェクトは、すべて、ここでの3原則が、ぴったりとあてはまる。私たちの置かれている社会の状況も困難な面が多々存在することは、事実であるが、オリンピック選手たちは、はるかに困難な条件をクリアーし、毎日、過酷な練習を積み重ねて、一瞬の“その場”に賭けているのだ。

やはりオリンピックの場は、特別であり、オリンピックで共有できる“その場”は、かけがえのない世界なので大きな感動を呼ぶのだろう。

我々からは想像できない努力ののちに試合に臨んでいる若者たちには頭が下がる。日本中の人たちにもそれぞれの場が、平等に与えられていると私は考える。自分の周りのチームを振り返ってみよう。3原則の観点で欠けていることがあれば見直そう。

たとえまずい状況にあったとしても、今日から改善すればよい。どこから始めても遅くはない。


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林衛
IT戦略とプロジェクトマネジメントを中核にITビジネスのコンサルティングを行うアイ・ティ・イノベーションのファウンダーであり社長を務める。◆コンサルの実践を積みながら英米のIT企業とかかわる中で先端的な方法論と技術を学び、コンサルティング力に磨きをかけてきた。技術にも人間にも精通するPM界のグランドマスター的存在。◆Modusアカデミー講師。ドラッカー学会会員、名古屋工業大学・東京工業大学などの大学の講師を勤める。

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