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『プロマネが惑わされるプロジェクトの落とし穴 第1回』プロジェクト計画書は作ったのになぜ計画通りいかないの?


「プロジェクトマネジメントって難しいよね」

IT部門の部門長や現場のプロジェクトマネージャとお話している中でよく出るフレーズです。
PMBOK(Project Management Body of Knowledge)や企業内でもマネジメントに関する標準定義がされる中で、なぜ難しいと感じるのでしょうか。そこには、プロジェクトマネジメントというものが、独自性、有期性の中で行われているからです。本番稼働に向けた各フェーズ、タスクで納期に追われる。そしてプロジェクトの背景や進行途中の外的/内的要因でこれだけやれば上手く進むという保証がない。

さらに、私が経験してきたシステム開発の世界では特に、
①人手で作る割合が多く、人のスキル・経験やモチベーションが大きく影響する。
②作り上げるモノが目に見えない機能であり、要求の変化により変動する。
③中間成果物も実体が掴みにくく、品質の測定が難しい。
といった特性を含んでおり、プロジェクトマネージャの皆さんも日ごろから苦労されているのだと思います。

ご挨拶が遅くなりました、アイ・ティ・イノベーションのコンサルタントの奥田智洋です。
このシリーズでは、このような難しいプロジェクトマネジメントで、その中で起こる様々な事例を見ながら、「惑わされないマネジメント」をするにはどうしたら良いのかを皆さんと一緒に考えていきたいと思います。

それでは今回のお題です。

Qプロジェクト計画書は作ったのになぜ計画通りいかないの?

PMBOKの中ではプロジェクトマネジメントのプロセス定義として、10の知識エリアと5つのプロセス群の相関関係で整理されています。この相関関係の表を見ると、圧倒的に計画プロセス群にプロセスが集中していることがわかります。それだけ、「計画」は大切なものであり、その計画の集大成であるプロジェクト計画書は、その後にプロジェクトをマネジメントしていく中で欠かせないものです。

では、そのプロジェクト計画書は書いたものの、上手く進められないのはなぜでしょうか。

当然ながらいくつかの要因はありますが、私がこれまでシステム開発のプロジェクトマネージャやプロジェクト支援のコンサルタントとして現場に入ってきた事例を振り返ってみると、最もできていないこと、そして最もリスクが高いと思われる要因は、
「目的が本来の目的として記述されていない」
という点です。

当社弘中のブログでもシステム企画での目的(ゴール)の重要性をお伝えしたかと思います。
弘中伸典のブログ:3分でわかる!システム企画一問一答 

プロジェクトマネジメントでも同じです。

一例として、毎年の法改正への対応で運用コストが低減できず、業界のデファクトスタンダードのパッケージを使って再構築をすることとしたプロジェクトがありました。その低減した分のコストを有効活用し、よりビジネス価値の高い戦略につなげていくというものです。

しかしながら、このプロジェクトのプロジェクト計画書で記載された目的は
「〇〇パッケージを導入しシステムを再構築する」
というものでした。

確かに間違いではありませんし、パッケージを使って構築するための計画としてはしっかりと記述されていました。
では、何が良くないのでしょう。

このプロジェクトは、結果としてパッケージを入れることが目的となり、既存の運用のままでは使えない機能はカスタマイズしたり、利便性を求めて標準では複数画面に分かれていたものを新しい画面として配置を見直したりと、機能設計を進めていきました。そして、最終的には毎年の法改正のたびに、多くのカスタマイズした機能についての改修コストがかかり、本来の目的であった「運用コストの削減」の目標値には至らなかった。

ここで、今回のお題の問いに対する答えをお伝えしようと思います。

Aプロジェクトの目的が曖昧であったり、共有できていなかったりすることで、プロジェクト全体が本来の目的とずれても気づかずに進んでいってしまうからです。

プロジェクト計画書の「目的」が重要というのは、例であげたプロジェクトのようにプロジェクトの推進途中で発生する変化に対して、立ち止まり、評価し、判断するため道標になるからです。逆にその道標がなかったり、曖昧であったりすることで道に迷い、あらぬ方向に進んでいってしまうということです。
プロジェクトの中では様々な優先順位付けが発生します。プロジェクトマネージャが、その優先度の判断をするためにも、本来の目的を自分たちのプロジェクトとしてしっかりと描き、プロジェクト全体で共有しておくことが大切ということです。

最後に今回のメッセージです。
「プロジェクトマネージャはプロジェクト成功の夢を描け!その夢が本来の目的と合っているならばおのずと正しい判断ができるようになる」

次回は「品質管理の落とし穴」についてお話したいと思います!!
お楽しみに!

 
■執筆者:ITI 奥田 智洋(シニアコンサルタント)■
大手SIerのシステムエンジニアとして、自動車業界のプロジェクトマネジメントを徹底的に学ぶ。そこで蓄えてきたノウハウを広く発信する立場となり、プロジェクト支援の専門集団であるアイ・ティ・イノベーションにて、お客様と共にプロジェクトの成功に奔走している。


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