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【連載:DX超入門】その1 DXとは何か


そもそも、デジタルトランスフォーメーション(DX)の原点は何であろうか?

「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」ということを最初に提唱したのは、スウェーデンのウメオ大学のエリック・ストルターマン教授であった。2004年のことである。

背景にITの発展普及がある。歴史を振り返ると、IT化の進展は数十年かけて少しずつ世の中に浸透してきた。直近の10年間のITの進展には、目覚ましいものがある。コンピュータの高速化、大容量化に加えてネットワーク化の普及が目覚ましく、世界中でITが社会に大きなインパクトを与え影響を及ぼした。世界中でいつでもどこでも情報を検索し、商品を選び購入することが可能になり、また、フィンテックの普及により、お金のやり取りや決済が、紙幣を介さず可能となった。また、SNSなどのソーシャルメディアの発展により個人やグループ、組織の生きた情報を対面での会話、電話に替わる手段としてメッセージや動画などのやり取りを、時間、場所を超えて世界中で可能にした。2020年からは、5Gに代表されるネットワークのさらなる高速化大容量化が計画され、ネット空間上に存在する従来の取引データなどに加えて動画や音声、テキストデータなど膨大なデータを共有資源として扱うことが可能になってくる。もちろんセキュリティの強化や法整備なども適切に進めなければならない。今後、知恵とアイデアさえあれば、IT化により、素晴らしく恵まれた世界を実現することが可能になる。一方、サイバー空間上の犯罪や紛争も、今まで経験したことのない形態で出現するだろう。

技術の発展と膨大なデータを活用する機会が、ルールや条件を満足すればアイデア次第で今までにはなかった素晴らしい未来を創る。DXをポジティブな形で捉えようとすることを、DXの第一の提唱者のストルターマン教授は語っている。

DXには、様々な視点がある。

社会の中の個人の視点、組織の視点(企業などの視点)、社会全体の視点で捉える。どの視点が、正しいということではない。DXに取り組む場合、DXをどの視点を前提に考えるか前提条件を明らかにしておくことが重要である。一般に新聞や雑誌などは、組織の視点でDXを扱っていることが多い。私は、まずは社会全体を見渡して、DXが社会にどのようなインパクトを与えるだろうかを考察したのちに、特定の視点(企業での視点など)にフォーカスして検討すべきであると思っている。

ここ10年間のAIやビッグデータ分析、ブロックチェーンなど先端技術が、実用に向けて大きく前進している。そして、膨大なデータも法的なルールを守る前提で利用が可能になってきている。私は、様々なアイデアや発明が、短期間に実現する条件が整ってきたといえる。

DXの中核にあるITの発展とネットワークの高速化、世界レベルでの進展は、グローバル視点でいえば、数十年前までは移動を伴って長い時間をかけて行ってきたグローバル活動を、時間と空間(地理的な隔たり)を超えて広がり、正確さ高速化を伴ってビジネスや文化的な活動を行うことができる。この10年間の間に時間軸と空間軸が、変化してしまった。これは、信じられない変化である。世界の誰かが考えたアイデアが、ネットワーク上に実装され伝播するのに時間を要しない。良いことも悪いことも共に同じスピードで伝わるようになった。つまり、ITとネットワークは、国や時空を超えた世界を構成する社会の基盤になった。

また、2013年に策定されたSDGsの活動を成功に導くことは、DXを加速させることにつながると考えられる。

SDGsの進展とDXは、矛盾はない。どちらが先でどちらが正しいかは、議論する必要はない。両社は、協調関係になる。持続発展する社会を創るためには、環境問題、医療などの社会的課題を解決しながら発展する必要がある。どの問題もDXと結びついている。

社会的な枠組みをSDGsが担い、先端技術を駆使したDX的な解決方法も導入し、世の中を継続的に進展させていく方法を確立しなければならない。

SDGsがある種の社会を発展させるビジネスの枠組みだとすると、DXはIT化戦略の位置付けになる。両社が呼応して初めて有効な戦術を産み出せるのだ。

今、世界中で皆が、必死で取り組んでいる新形コロナウィルスの問題も環境、医療、教育などの方法と深く結びついている。様にSDGs的にいえば、医療・環境・働き方、IT化に関連したSDGs課題に取り組んでいると言える。今後、コロナへの取り組みが成功すれば、新たな環境(衛生的に進化した)と、新たなITを駆使した働き方が実現できるかもしれない。

いずれにせよ、いかなる社会問題もIT化(DX的な解決策)抜きには、語れないことは、事実である。

次回は、DXを構成する内部構造と広がりについて語ってみよう。お楽しみに。


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林衛
IT戦略とプロジェクトマネジメントを中核にITビジネスのコンサルティングを行うアイ・ティ・イノベーションのファウンダーであり社長を務める。◆コンサルの実践を積みながら英米のIT企業とかかわる中で先端的な方法論と技術を学び、コンサルティング力に磨きをかけてきた。技術にも人間にも精通するPM界のグランドマスター的存在。◆Modusアカデミー講師。ドラッカー学会会員、名古屋工業大学・東京工業大学などの大学の講師を勤める。

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