連載:その2 では、コロナショックを機会と捉え、仕事上の習慣の棚卸を行なってみることについて語った。シンプルに、自分が棚卸したことを根本から考え直し、見直そう!この貴重な時期に、自ら結論を出すことで、前に踏み出せるのだ。
さて、今回は、コロナ前にブームになったデジタルトランスフォーメーション(DX)についての影響について語ろうと思う。まず、DXとは、シンプルにいえば、ITの活用が、世の中を豊かにするということである。ITは、世の中のあらゆるものを発展させ、豊かにする可能性を持っている。DXは、もともと、ITが社会を豊かにするという意味から始まっているが、昨今の報道では、企業にフォーカスして、企業のIT化による変革について語られることが多くなっている。ここでは、企業に絞ってDXについて解説することにする。
昨今のDXブームでの課題は何であろうか、また何が、DX成功を妨げているのだろうか?考えてみることにする。
DXの課題の主なものは、4点に絞られる。
①新たなビジネス価値創出(AI、IoT、ビッグデータなど)
②既存システムのスラム化・ブラックボックス化(2025年の崖)
③スキル(人)とケーパビリティ(組織)の獲得
④マインドチェンジと改革する風土の醸成(人の認識)
これら4つの課題の内、コロナと強く関係するものは、③の人のスキル、組織のケーパビリティ、④のマインドチェンジと組織の風土改革に関わるものである。DXの課題には、勿論、技術的な課題は、重要であるが、より重要なものは、人にかかわる課題である。過去に、我々は、様々な技術革新を経験してきたが、DX成功に最も重要な前提条件は、技術要件よりも人や組織に関わる要素が、より大切な要件であると私は考えている。人のマインドやスキルの向上が伴わない限り、DXのような変革は成功しない。
ITのネットワーク活用やテレワーク実施、営業のオンライン化、新たなITサービスの創造などについては、コロナに関わらず、導入が徐々に進むものと、私は考えてきた。経済活動が今までのままであったなら、対面のミーティングや出張を伴う人の移動は、何の意識することもなく、当たり前に行っている。ところが、コロナショックがやってきて、それが突然止まったのだ。経済活動が、一時的に強制的に停止状態になったのだ。
短期、中期に以下のような変化が強制的に起こってしまった。有無を言わさず、やらないと事業の維持が突然困難になってしまったのだ。そして、人のマインドとスキル要素が短期間に変化した。
短期的に起こったことは、以下のことである。
・DXのための精神的基盤確立が急加速(緊急対応が結果として)
・テレワーク化、デジタル化に対応できる企業と出来ない企業の格差拡大
・テレワーカー(主にテレワークを用いて働く人)市場拡大へ
・DX加速のきっかけへ
中長期的には、さらなる以下の変化が進行しつつある。しかも、元の状態には戻ることはなく、新しい世界への移行が進行しているといえる。
・ネット、デジタルリテラシー向上と安全安心な社会へ変化
・企業の役割変化で“ゆらぐ”企業と“対応できる”企業に分化
・IT化されたサービス業が、社会の中心へ
・DX精神基盤(DXマインド)の確立
ただし、AIなどの先端ITの経験・習熟度向上の課題・既存ITのブラックボックス化・スラム化の課題は、
コロナに関係なく、別の軸で解決しなければならない 。
この変化を裏付けるための興味深い調査結果がある。
コロナ対策が、DX推進(IT戦略遂行)の加速要因になったか?という質問に対して
大いに加速 27%
やや加速 44%
合計 71% の企業が、加速要因となったと回答している
テレワーク化 74%(対応済み、緊急対応した、3か月以内)
営業のオンライン化 49%
採用のオンライン化 46%
オンラインサービス開始 43%
多くの企業が、生き残りをかけてコロナ対策に取り組んだ結果、人と組織が変化したのである。
(出典:ITR 「コロナ禍の企業IT動向に関する影響調査(2020年4月)より」
コロナショックをポジティブに捉えると以下のようになる。
私たちは、多大な犠牲を払ったが、強制的に以下の機会を得た。
再考の機会
学習の機会
組織変革の機会
風土変革の機会
企業のDX推進の機会
コロナが、人類にもたらしたプラスの財産は、短期間に、人や組織が、ポジティブに変化したということではないか!